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樫田秀樹

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●チョラク・メメットさん、突然の仮放免
 6月17日。
 東京出入国在留管理局(東京入管)に1年半も収容されていたトルコ出身のクルド人のチョラク・メメットさん(39)に「仮放免」が認められ解放された。
 入管は被収容者には「重病者を除き収容を継続せよ」(2018年2月の通知)との施策を敷いているが、それにより、たとえば、茨城県牛久市の「東日本入国管理センター」では被収容者の9割以上もが半年以上の長期収容に置かれている。
 チョラクさんの名前が周知されたのは3月12日。その前日から立てないほどに体調を崩し、家族や支援者が救急車を2回手配したが、3月12日、東京入管は2度とも救急車を無人のままで返した。支援者たちは徹夜で東京入管前で過ごし事の成り行きを見守り、さすがにマスコミも報道し、国会でも取り上げられた。
 「世間の目が集まった」ことで、突然の仮放免となった・・と関係者は推測する。

●ギリギリだった精神状態
 私はこの救急搬送拒否事件のあとでチョラクさんに面会取材した。
 アクリル板の向こうに現れたチョラクさんは明らかに憔悴しきっていた。心が悲鳴を上げることすらできないほどに弱っていた。会話の中で
「もう狂っていますよ、私…」
 とチョラクさんはつぶやいた。
 チョラクさんに限らないが、収容が長期に及ぶと、多くの被収容者が精神のバランスを崩す。
 これが刑務所ならば、その罪に応じて、「何年で出れる」が判る。
 だが、チョラクさんはトルコでの迫害を逃れ、2003年に来日して難民申請をしただけの人だ。その難民申請も不認定となり、「仮放免」で生きてきたが、その更新も不許可となって2018年1月から収容されていた。
 この面会取材の内容についての詳細は割愛するが、私は「この人は一日も早く仮放免しなければ、体も心も危ない」と感じた。
 だからこそ、今回の「仮放免」をとりあえずは良かったと思う。


●記者会見

チョラクさん記者会見←チョラク・メメットさん

 6月24日。
 チョラクさんの記者会見が開催された。
 記者会見のための資料が20部用意されたが、追加のコピーが必要なほどに多くの記者が集まった。
 チョラクさんは一度しか会っていない私を覚えてくれていた。顔には笑顔が戻っていて、握手も力強かった。
 この日の記者会見には、チョラクさんの妻、そして、同じように夫フセインさんが収容されているクルド人女性が2歳の娘さんを抱っこして参加した。
 妻たちの声は悲惨な現実をあぶりだす。

 ★チョラクさんの妻
「3人の息子がいます。長男は赤ちゃんのときに来日し、他の2人は日本で生まれ、全員が日本の学校に通っています。私は夫ほど日本語ができないので、この1年半、子どもたちの勉強を見てあげられなかった。つらいのは、悪いことをしていないのに収容されている父親のことを子どもが周りに話すことができないことでした。子どもは私に「ママ、恥ずかしいよ!」と訴えました。
 私は毎日面会しましたが、子どもたちには『パパは元気だよ』とウソをいうのがつらかった。入管のこと、学校のこと、家のことをすべて一人でやるのは本当に大変でした。
 子どもを連れての面会は普通の部屋で許されることもあります。ただし、それは職員立ち合いの下で、面会では子どもは夫にハグできますが、妻は夫の体に触れることが許されません。面会の間は椅子に座っているだけです

チョラクさん記者会見 チョラクさんの妻

 ★フセインさんの妻は泣きながらこう訴えた。
「夫は、この子が生まれて半年で収容されました。それから1年半以上が経ちました。面会に行っても、2歳の娘は、夫を知らない人だと思っています。夫は2カ月前から一人部屋に移され、もう何十日もほとんど食事をしていないので痩せこけています」
 フセインさんは、トルコで反政府運動の疑いをかけられ、警察に拷問を受け、刑務所に12年も収監されていたことがある。そういう背景があるから日本に逃避したが、難民として認定されなかった。拷問と12年間の服役で精神疾患を抱えるに至ったが、そういう人に対して、さらに長期収容が繰り返されている。

チョラクさん記者会見 フセインさんの妻2 チョラクさん記者会見 フセインさんの妻1←フセインさんの妻。子連れで会見に臨んだ。


●マスコミが試されている
 フセインさんがいつ仮放免されるのかは誰にもわからない。
 ただ一つ言えるのは、チョラクさんの場合は、救急搬送拒否という「事件」があり、支援者が徹夜での抗議に臨み、その結果マスコミが騒ぎ、国会でも取り上げられたことで解放に向かったが、フセインさんやその他大勢の被収容者には「事件」や「事故」は起こらない。そうである限り、「事件」が起きてから初めて動くマスコミはフセインさんらその他大勢の被収容者を記事化することはない…。
 そして、やっと解放されたチョラクさんの今後を報道することもやがてはなくなる。
 だが、この問題は、『事件』や『事故』の有無に関わらずに報道すべきことなのではないのか。いまのマスコミにそれが期待できるのか? このままではフセインさんは自我が崩壊するかもしれない。

●「人間として扱われなかった」
 記者会見では多くの質問の手が上がった。私が尋ねた一つは、「解放されてから1週間が経つが、現時点での精神状態や体調はどうですか?」というものだった。
 被収容者のほとんどがその閉ざされた環境から睡眠障害を発症し睡眠剤や精神安定剤に頼っている。チョラクさんは「今でも眠れません。毎日4錠の精神安定剤を飲んでいます」と答えた。そして、自分を、そして自分たちをそういう状態に陥れた入管の扱いに対して「人間としての扱いじゃないです。本当につらい」と訴えた。
 救急車事件のあったとき、チョラクさんは頭と心臓の痛みで立ち上がることができず、寒さに震え、一人部屋で横になっていた。あまりにも苦しいので「担当さん!」と職員を呼んだが誰も来てくれなかった
 理由は部屋には監視カメラが設置されているので、それで被収容者が「生きているか死んでいるかを確認できる」と入管職員は説明したそうだ。
 これは本当の話なのか?
 と書いたが、私はほかの被収容者数人から同じような話は聞いている。そして、仮に担当職員を呼ぶために大声であげたりドアを叩くなどの行為をした場合は、逆に職員が10人くらいでやってきて「規律違反だ」として制圧(動けないように全身を抑えられる)されて、懲罰房に送られる話も聞いている。

 今回、記者会見に臨んだクルド人の方々は我々メディアに報道の継続を訴えた。肝に銘じなければならない。

チョラクさん記者会見 ご夫婦←チョラクさんご夫妻

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