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樫田秀樹

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 日本の水道事業に関する記事を再来週あたりに某週刊誌に発表するので、その宣伝を兼ねてのブログです。

●水道法「外資民営化」報道に物申す
 昨年末、改正水道法が国会で可決。
 この前後から、メディアは「外資が日本の水道を民営化する。水道料金が高騰する」と報道し、多くの市民団体なども「民営化反対」を表明してきた。
 私も外資による民営化には反対。改正水道法では、「民営化」(正確には、「官民連携」《施設は官が保有し、運営を民に任せる》だが、民営化されると、社員への給与支払いは当然としても、株主への配当、加えて役員報酬(CEOならン億円?)も発生する以上、水道料金の値上げは必至だからだ。
 だが、これだけに特化して水道法を語ることは本質を見失う。

★その1 敵は国内にいる
 外資が来ると水道料金が値上がる。だが来なくても、値上がる。なぜなら

 ①老朽化施設の更新
 日本の多くの地域では、老朽化した水道管などの施設を更新しなければならない。私たちは、それによる値上げなら受け入れなければならない。 もっとも、これについては既に報道されている。また外資の民営化と比べたら、値上げはまだマシかと予想する。

 ②敵は国内にいる
  国内で水道料金が高騰した事例はないのだろか。ある。
  それまでおいしい水源(地下水など)があったのに、なぜか、そこに建設費何千億円ものダムや河口堰などを作ることで、ダム湖が水源となり、施設の建設費や維持費が反映されるため水道料金が高騰する。たとえば、山形県鶴岡市では、それまでの地下水から月山ダムに水源を切り替えたら、水がまずくなり、かつ料金がたびたび値上げされ、市民はかつての2倍を払っている。
 日本には建設を控えているダムがまだ200以上もある。民営化反対の目は、ダム建設には向けられない。

★その2 外資は「全国の」水道を支配などしない
 外資は会社である以上、ペイする事業だけを行う。給水人口30万人以上の水道事業を狙うと見られている。
 だが、「給水人口30万人以上」が日本の給水人口に占めるのはわずか1割。大都市や中規模都市に限られる。
 その1割にしても、外資に「民営化をお願いします」と要請しない限りは、民営化はされない。逆に今、民営化をしないと宣言している首長もいるくらいだから、民営化はごく一部の地区ではと推測される(それはそれで大問題になるが)。

★その3  しかし、このままでは日本の水道事業は潰れる
 一つは、老朽水道管などの放置(予算がない)もそうだが、かつての高度成長期に作った水道施設(浄水場など)が人口減少に入った今、各施設が全国平均で50~60%しか稼動していない。つまり半分が遊んでいる。だが自治体は自分の持ち物が「かわいい」のでそれを廃止する、壊すなどの決断ができず、その維持費と人件費にダラダラと税金を流し続けている。
 お役所は3,4年で人事異動するので、自分たちで積極的にその問題にあたる公務員は少ない。責任を常に先送りしている。その意味においては、「民間のノウハウを入れる」という方向性自体は間違ってはいない。

★その4 「改正水道法」もまっとうなことも謳っている。
 改正水道法の骨子を読めばわかるが、そこでは、水道事業をめぐる上記背景があるからこそ、「広域連携」を謳っている。つまり、小さな自治体(小さな水道事業)がもはや単独で事業を行うのではなく、周囲の自治体と広域化することで、水道施設の稼働率を上げることを目指す内容になっている。
 たとえば、ここに隣り合うA村、B町、C市があって、それぞれが、一つずつ浄水場をもっているとする。だがそれぞれの稼働率は50%前後。そこで3市町村が広域化して、3つのうちの1つを潰して2つの浄水場で3市町村をカバーすれば稼働率は上がり、施設の維持費も安くなる。
 改正水道法は、外資民営化を除けば、その方向性は間違ってはいない。

★その5  広域化を実現し、水道料金の安定化を実現した組織はある!
 これが肝。
 もし、国内ですでに広域化やダウンサイジング(施設縮小・廃止)を実施して、適正な水道料金の維持が実現できるのなら、外資の民営化は不要となる、
 逆に言うなら、たとえ外資の民営化があったとしても、彼らが、広域化やダウンサイジングを手掛けて適正な水道料金を実現できるのであれば、それはそれで歓迎すべきだ(まあ、考えにくいが)。

 ●岩手中部水道企業団。
  こここそ、日本の水道事業のパイオニアだ。

岩手中部水道企業団の看板


  この事例については、近く、週刊誌に載せるので詳細はここでは書かない。概要だけ書けば、
  2014年に設立。企業団は、岩手県の花巻市、北上市、紫波町の3市町の水道事業を広域化し、一括で管理・運営する。
  面白いのは正職員が72人いるが、そのほとんどが、在籍していた3市町を退職して、水道のプロとして働くためにここの正職員として着任したことだ。
  組織形態は「一部事務組合」といって、ゴミの広域処理組合(一つの町だけでごみ収集しては効率が悪いので、近隣市町村がゴミ収集・処理を広域化するために作る組合。地方公共団体に位置づけられる)を思い出してもらえばわかりやすい。
 通常、一部事務組合は、管轄地のお役所から職員が出向されるが、ここでは「2、3年で人事異動されてしまえば、専門家がいなくなる。2,3年でいいやと思う根性のない奴はいらない」と主張し、3市町の首長も理解し、出向ゼロのプロ職員だけが在籍することとなった。
 果たして、同企業団は今、3市町合わせて34あった浄水場を今では29に減らした。これだけで約25億円を浮かした。そして、2025年までにはさらに21に減らす予定だ。
 そして、2014年から、水道管の漏水のデータベースを作成し、どの地域の水道管を更新すべきかをピンポイントで予測できるようになった。
 水道料金も、もし3市町が単独で水道事業をやっていたらとんでもなく高騰していたのが、企業団になってからは、シミュレーション通りの安定した料金を維持している。

岩手中部水道企業団 供給単価の見通し←企業団結成前に、担当者が書いたシミュレーション。横軸が平成、縦軸が円。「このまま自治体単独で事業やったら水道料金は上がるばかりですよ」と、この具体的数字をもって納得させた。今、予想通りに、「統合」(広域化)がもっとも廉価の水道を供給している。

 この企業団の特徴は、
 ◆水道問題だけをやるプロが運営しているので、普通の役所の5倍も早く物事が決まる。無駄な残業もなくなった。
 ◆収入源は純粋にほぼ水道料金だけ。
 ◆一部事務組合なので地方公共団体。だから、給与水準は役所時代とほぼ同じ。言ってみれば、彼らも「官」である。
 ◆だが、やっていることは「民」。
 ◆つまり、やり方次第で、官でも水道改革ができるということだ。

 ●第2、第3の企業団も現れている。
  当然ながら、この企業団には今、自治体や議員の視察がひっきりなしで、なかには、自前の企業団を設立して広域化を実現したり、企業団を設立しないまでも、自治体として広域化を実現する水道事業が現れている。
 ただ、それを書いては、さすがに読み飽きられるので、本日はこの辺で。

 水道事業において肝心なのは、「民営化反対」を訴えるよりも、地域ごとで「水道事業のビジョンを描く」ことだ。それを訴えるメディアと市民運動は少ない。

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2019/01/25 18:54 改正水道法 TB(0) コメント(0)
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