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樫田秀樹

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●刺激的な学習会だった…

 ここ10年を振り返っても、じつに刺激的な学習会でした。残土です。
 リニア工事で排出される残土は約5700万立米。それは関係者なら誰もが知っています。
 長野県大鹿村では一日最大1736台の、残土運搬も含めた、工事用車両が走ります。それも知られています。だから生活破壊が起こるのだと。だから、残土問題に関しては、関係者の間では問題が共有されているのだとどこかで思っていました。
 とんでもない。浅かった。

 10月30日、その大鹿村で開催された「ああ、大鹿ダンプ街道」と題した学習会(主催:大鹿リニアを止める実行委員会)は、残土問題はとてつもなく深刻な問題であることを突き付けてくれました。
 講師は佐久間充・女子栄養大学名誉教授と、残土王国の千葉県の市民団体「小櫃(おびつ)川の水を守る会」の佐々木悠二事務局長。
 佐久間さんには「ああダンプ街道」や「山が消えたーー残土・産廃論争」(ともに岩波新書)といった著書があります

その報告内容をここにつぶさに書く時間がありませんが、概要だけを書けばーー

佐久間さんは、佐々木さんと同じく千葉県生まれ。学者として、公共工事で山が崩されることで発生するダンプ街道の問題をつぶさに実地研究してきた人です。持ち時間30分のなかで100数十枚もの写真を投影したのですが、その一枚一枚に私たちは度肝を抜かれました。以下、佐久間さんの説明です。
 佐久間さんは、都市圏での公共事業のために千葉県の山が崩され、その山砂を運ぶことで発生した問題を説明しました。

「ああダンプ街道」佐久間さん

★羽田空港の第3滑走路の建設工事に伴い、木更津では3車線+3車線の道路がすべてダンプで埋まりました。
★私は国定公園の鹿野山が見えるところで生まれ育った。その隣の山は公共工事のために消えた。
ダンプ街道では死人がいっぱい出た。子どももはねられた。

千葉ダンプ街道←神業ですれ違うダンプ。粉塵被害や交通事故は必ず起こる。学習会の写真から。

★未舗装道路においては、ホコリなんてものじゃない粉塵が出た。あたりが真っ白になった。その粉塵の粒の大きさを調べたら「じん肺になる」危険性を有していた。
★粉塵が街道に落ちると、それを後続のダンプが踏んで細かくなり、始末に負えなくなる。
アルミサッシをしていても無駄。粉塵は家の中の押し入れも砂だらけにする。
そこに住む人も臭くなる。ある人は、知人に会うと「お前来るとくせえ!」と言われた。

  以下は、佐々木さんの説明です。
 千葉県は、環境問題をかじったことのある人なら「残土王国」であることはよく知られるところです。県内からだけではなく、他県からの残土を受け入れ、あちこちの山や平地に残土の山ができています。特に深刻なのが、山砂を取って平になった場所に残土を積むケースです。

小櫃川を守る会佐々木さん

★1990年頃、残土が里山(私有地)に積まれると、近くの集落の簡易水道の水が黒くなった。だが、残土との因果関係を証明できず、自治体(君津市)は6000万円をかけて水道を引いた。
★2000年頃、残土が里山(私有地)に積まれると、集落の井戸が枯れた
★小糸の町(のちに合併して君津市)では、住民運動で、山砂・残土業者と協定書を結んだが、残土の検査をするのは残土業者が指名した業者。まったく信用できない。
★大量の残土を運ぶのに利用されるのは25トントラック、自重と合わせると35トンにもなり、道路はすぐに傷む。
★ダンプが走る側の歩道は粉塵や残土が積もって路面が見えなくなる

千葉残土←千葉県で山砂採取の跡地に積まれた残土。(学習会の写真より)

 そして、参加者に勉強しなければと思い知らされたのは以下の事実です。

★そのままの状態で掘り出される土は「残土」だが、シールド工法などで、水や石灰、薬品などでドロドロになって出てくるものは残土ではなく「産廃」であるということ。

 佐々木さんは質問コーナーのときも、「薬品でドロドロになったらもう産廃です。みなさん、どうぞ勉強してください。専門家を呼んで勉強会をしてください」と強調していました。

リニア残土発生量←JR東海の環境影響評価書で示されている残土と汚泥の発生量。この残土が本当に残土だけなのかを調査する必要もある。

確かに、「産廃」であるならば、廃掃法(廃棄物清掃法)に則って処理をしなければなりません。しかし、残土はそれを縛る法律が存在せず、縛れるのは自治体の条例だけです。だから、条例のないところは目をつけられやすくなる。

●住民がまとまれば勝てる!

さて、この学習会が刺激的だったのは、「残土の被害の深刻さ」に加え、「住民がまとまれば対処できる!」ということでした。
たとえば、「小櫃(おびつ)川の水を守る会」は以下の行動をとっています。

★残土の検査が、残土業者寄りの業者である以上、まったく信頼できない。だから、住民自ら残土検体を採取し、研究所にもちこんだ。30万円かかるが、やった。
★残土から染み出る(汚染)水も自主検査した。
★住民は、首都圏から木更津港に運ばれてきた残土を積むダンプの「台数」「積荷」「過積載」「シート掛けの有無」「社名表示」をすべて監視し、記録に残した。
★上記、2000年頃の井戸水枯渇事件のあと、自治会などが堂本暁子県自知事に「県で残土条例を」と要求したが、知事は逆に「市条例を制定しては」と逆提案。これを受け、住民は、君津市に残土条例制定の嘆願書名5000筆を集め、市議会は全会一致で採択。そして条例は、10年かかったが、制定される。
★2010年には木更津市でも残土条例制定される。そして、君津市も木更津市もそれ以降、残土埋め立てがない!

●大鹿村民の感想
 この学習会は外部の私ですら「すげえ」と思ったほどですから、学習会に参加した大鹿村民はなおさらです。私は、以下の発言を少なくとも4人から聞きました。

「正直、学習会にはあまり期待していなかったんだけど、すごかった。やる気が出た」

 学習会のなかで、佐々木さんはこんなことを強調しました。

「私が住民なら、地区ごとに連絡を取り、共通の協定書を作り、これを守らないと着工させないと事業者に約束させます。みなさんでまとまれば、できます! 長野県には残土条例がありません。ということは、この大鹿村で村の残土条例を作ればいいのです」

 もっとも、大鹿村の自治会のなかでは、非常口が4か所も掘られる釜沢地区ではそれなりの問題意識は共有されていますが、自治会間での連携ができているかといえば、できていません。今後の課題です。
 とはいえ、この学習会で参加者が元気になったのは事実です。
 その釜沢の谷口昇自治会長も学習会に参加していましたが、「薬品を使って掘り出したものが産廃であるのなら、残土でない以上は、JR東海が計画している残土置き場には置けないことになる(釜沢では仮残土置き場が設置される予定)。そして、僕たちがやろうと思えば、残土が汚染されているかどうかも自主検査することができるし、住民がやれることはまだまだあることがわかり、取り組みへの気力がわいてきた」と語ってくれました。

 ある女性参加者も「やる気が出た。なんとか条例つくりにもっていきたい」

 私にしても、残土の問題は深刻であると頭では理解していても、これまで、実際に残土の被害に遭った方々への取材をどこかで忘れていたのか、タッチしていませんでした。
 遅ればせながらも、そういう取材を始めると同時に、リニア計画沿線で共通の問題となる残土問題に対しては、各地で佐久間さんや佐々木さんを講師に呼んで勉強会を始めるとか、実際に千葉県の残土問題に悩む方々を訪問するなどの取り組みを市民団体に呼び掛けてみたいです。
 特に、神奈川県では、川崎市の都市部で掘られる非常口建設工事で排出される残土はJR貨物で川崎港まで運ばれるところまではわかっていますが、そこから船でどこに運ばれるのかは「秘密事項」になっていて、JR東海も川崎市も明らかにしていません。

 このことを佐々木さんに話すと「そんなの、千葉に来るに決まっていますよ!」。

 佐々木さんの「勉強を」というのは本当のことで、残土に対してはただ「搬出反対」を叫ぶのではなく、「河川法26条・27条の工作物規制、盛り土規制、森林法10条土砂流出規制、環境保全規制」なども駆使すれば、残土埋め立てのハードルは相当に高くなるとのこと。

 また残土に関わらず、水枯れの被害者を講師に招いたりすることも考えていきたいところです。

 ←「ああダンプ街道」と「山が消えたーー残土・産廃戦争」。いずれも佐久間充さんの著書。

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