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樫田秀樹

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●土地は渡さん!

 6月17日、山梨県の富士川町に行ってきました。
 富士川町ではリニア本線が地上走行をするため、相当数の家屋と田畑が収用される予定です。
 ところが、富士川町の小林地区で、「JR東海とは戸別交渉はしない」と決めた町会があります。その中心人物に会ってきました。

 地元で生まれ育った有泉實(ありいずみみのる)さん(83)がリニア計画のことを知ったのは、2013年9月の、JR東海が縦覧した「環境影響評価準備書」が新聞報道されてからです。
 その2年前に縦覧された「環境影響評価方法書」では、リニアの走行ルートは幅3キロで描かれていて具体的ルートはわかりませんでしたが、準備書で示されたルートでは、自分の家屋の敷地を貫く、ということが判りました。

有泉さん宅とリニアルート地図←緑色が有泉さん宅。リニアのルートは、母屋はかすめる程度だが(それでも立退き対象になる)、車庫や農作業小屋はすべて潰される。

「寝耳に水でした」

 有泉さんは早速行動に出る。まずは地元で開催されたJR東海による住民説明会に出席。だが、これはどこも同じですが、質問は一人3問まで、かつ同時に質問しなければならず、再質問は許されない、閉会時間が来たらピタリと閉会。この一方通行的な運営に不信感を抱きます。

 また、リニアが通ることで「地域分断(立ち退く人と立ち退かない人に分かれる)が起こること」、「宅地も農地も不動産の評価がDランクになること」、「日照時間の問題が起こること」を問題視し、13年11月4日、JR東海の甲府営業所にその旨を書いた手紙を送ります。そこには、いざとなれば「住民投票も考えている」との言葉も書かれていました。

 有泉さんが住む小林地区には8組の町会がありますが、東小林(6,7,8組)の約100軒のうち、7組のおよそ14~15軒がリニアのために立退き対象になると予測されています。有泉さん宅もその一軒。

小林地区のルート
小林地区を縦断するリニアルート。

「ワシはここで生まれ育ちました。今83歳です。歳も歳だから、この家が終の棲家です。今さらどこで暮らせというんでしょう。何十年も一緒に生きてきた地区の人たちとも離ればなれになるのは耐え難いものです」

 また立ち退き対象にならない家屋や畑にしても、半日は日陰となり、名産のスモモや桃に影響が出るのは間違いのないところです。

 JR東海はこの地区での事業説明会を去年のうちに2回開催し、終わらせていました。もちろん、何を質問しても納得のいく答えがもらえないのはいつもの通りですが、有泉さんが驚いたのが、

「ワシが一番気に入らんのは、児童館での説明会にJR東海は地権者や小林地区の住民に参加を呼び掛けたのに、取材に来ていたマスコミを入り口でシャットアウトしたことです。また、関心のある町外の人も入れなかった。情報を隠そうとするJR東海が信じられなくなりました」

 そして驚いたのが、今年2月。

 R東海が、突如、中心線測量のための杭打ちをするとの回覧版が回ってたのです。

「びっくりしました。地区には、事前にJR東海からは何の連絡もありません。ワシは、このままでは間違いなく着工されてしまうと、地区のみなさんに声をかけました。急な声掛けにもかかわらず、集会所には50人ほどが集まりました。いろいろ話し合いましたが、結論は、『有泉さん、あなたが、JR東海のリニア工事の連絡窓口になってくれ』というものでした。なぜなら、もしJR東海や役所の戸別訪問を受けてしまったら、『今のうちに、土地と家屋を売ればいい値になる。お宅にだけ特別に上積みします』といった金の話になり、折れる人が出てくるのは間違いないからです。ワシは『私が窓口になります』と引き受けました」

 有泉さんはすぐさま地区を回って、測量に反対をする署名集めに奔走。80筆ほど集まると、2月末、それをJR東海の甲府営業所に住民とともに手渡しに行くのです。
 おそらく、住民から直接渡された署名というものにJR東海は動揺していた・・とそのときに同行していたメンバーは振り返ります。

小林地区の署名←小林地区で集めた署名。有泉さん以外はボカシ処理をしました。

 そして、果たして、中心線測量は今日に至るまでに行われておりません

 また、有泉さんも、小林地区でのJR東海との交渉は「私だけが窓口だ」とJR東海に伝えたことで、JR東海の職員が地域を回っていることは今ありません。
 ただし、JR東海は、有泉さん宅には一度電話を入れ、一度は有泉さんが畑にいる時に声をかけてきた。だが、有泉さんは「私と話がしたいのであれば、富士川町の町長を伴ってこい」と伝えただけで、あとはいっさいの交渉に応じていません。

「なかには、後継ぎがいないから、やっと畑が売れると喜ぶ人もいる。なかには、利用者が減ると嘆く福祉施設の職員もいる。でも地域住民として大切なのは、個人の金のために喜ぶのではなく、会社の運営を心配するだけではなく、『ここにリニアを通さない』ということを決めて行動することです。リニアが通らなければ、誰もがここで最期まで暮らせて、農業もできる。福祉施設も安泰です。条件闘争じゃなく、通さない。それをみんなで考えたい

有泉さん宅とリニアルート。北から。←真北から撮影した有泉さんの敷地。赤線がリニアが通る予定の両端。立つのは有泉さん。
有泉さんの敷地とリニア2←真南から撮影した有泉さんの敷地。写真奥の神社の手前ぎりぎりから母屋の角までがリニアルートの幅。


●リニア中央新幹線沿線住民懇話会

 今回の有泉さんへの取材の席には、市民団体「リニア中央新幹線沿線住民懇話会」の発起人でもあるWさんも同席していました。
 Wさんは、リニア問題の深さを知るうちに、県内のリニア沿線の住民同士で連絡を取り合える基盤が必要だと、「とにかく、事業説明会の地区説明会に入る前に作りたかった」というように、あちこちのキーパーソンに連絡をして、懇話会を立ち上げた経緯があります。
 有泉さんはその懇話会の代表世話人でもあります。

 実際、私が有泉さんを取材したことは、その日のうちに、Wさんから、中央市でリニア反対の運動を展開する内田学さん(5月22日のブログを参照)にも連絡が入り、早速、その夜に内田さんから私の元に連絡が入りました。その内容を簡単に言えば

「83歳の有泉さんがあれだけ頑張っている。自分も徹底的にやりますから!」

 というものです。

 実際、5月22日のブログにも書きましたが、内田さんの地区にも5月、突然の「中心線測量のお知らせ」の回覧版が回ってきたが、内田さんら住民はJR東海に直接抗議。その結果、測量はまだ行われておりません

中央市。成島交差点←中央市の成島交差点近く。この高架「新山梨環状道路」に平行に走るように、(写真に向かって)左側をリニアが通る。立退き対象家屋は少なくない。

 もちろん、いざとなれば「強制測量」もあり得る以上、油断はできませんが、少なくとも、抵抗がないところから粛々と測量や工事が始まるのは間違いのない一方、逆に言えば、抵抗があるところにはなかなか手を出してこない。

 それにしても、有泉さんの「ワシは絶対にここを離れません。リニアは通しません」との言葉は力強いものでした。

 ただ、83歳という年齢を考えた時、万一の土地収用を担当する山梨県がどうぞ残酷な手続きだけは踏まないでくれと祈るばかりです。
 
★戸別訪問を受けない。担当窓口の個人を決める。

 改めて、これが有効な闘い方だと思った今回の取材でした。


●要は自身の生活の質をいかに守るかだ

 リニアを取材していて歯がゆく思うことはいくつもありますが、その一つが、住民の対応です。

 ほとんどのリニア計画沿線では、補償金を喜ぶであろう住民以外は、「リニアには来てほしくない」と思っています。だが、いわゆる市民団体は「NO!」の声を上げるのに対し、自治会や町会、はたまた一般住民など地域住民から明確な「NO」の声が少ないことです。
 
 もちろんリニア推進の考えであれば、NOの声を上げる必要はありません。
 だが、嫌だと思いながら、なぜJR東海と対峙しないのか。
 いろいろな理由があります。

 一つには、「国策」、「国家(的)プロジェクト」には逆らえない、もしくは逆らっちゃいけないと考えていること。
 一つには、田舎に行くほどに、反対を表明することでの近所付き合いの悪化を怖れていること。
 一つには、自分たちだけ反対しても、他の都県の地区が推進する以上は、反対しきれないのではないのかといった、情報不足からくる判断。

 以前も書きましたが、例えば、リニア車両基地ができる神奈川県相模原市鳥屋地区と岐阜県中津川市坂本地区では、共通する問題が発生するはずです。だが、両者間で情報のやりとりはないし、鳥屋では「リニアは嫌だけど、国家プロジェクトには逆らえないのでは」といった妙な諦めを抱く人も少なくないようです。

 だが、有泉さんは、「他地区が推進しているから」とか「国策に逆らうのは無理なのでは」といった考えではなく、とにかく、自分と地域の人たちは「このままで生きていく権利がある」ことを主張しているのです。逆に言えば、「誰かが不幸になる開発は受け入れられない」ということです。

絶対反対の看板←富士川町のあちこちに掲示されている「リニア反対の看板」

 品川から名古屋までは約5000人が立退き対象になると予想されていますが、おそらくその9割以上は立ち退きに応じることでしょう。しかし、徹底してそれに抗う人たちも少数ながら出てきます。
 それは大阪府摂津市が「JR東海のような大企業の大事業を優先させるのではなく、住民の生活を守りたい」とJR東海を訴えたのと同じように、「私たちのささやかな生活を守れ」と訴える闘いになるはずです。
 
 まずは、JR東海には、「本当に」丁寧な説明を求めたい。
 具体的には、第三者が司会者となり、推進派、反対派、一般住民、自治体、JR東海、有識者が一堂に介して徹底的に話し合う公開討論を何度でも行うことから始めるしかないと思っています。




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