リニア、南アルプスのトンネル工事は可能か？との指摘

　拙著「悪夢の超特急　リニア中央新幹線」はネット通販のＡＭＡＺＯＮでも売られていますが、最近寄せられたレビュー（感想文）に、トンネル工事に知識のある土木設計者からのものがありました。
　南アルプスを貫くトンネル工事は「不可能」と断じたものです。

　以下、転用します。

ーーここからーー

　私は土木設計に携わっており、トンネルについての知識も少しながらあるので、南アルプスを貫くトンネルなどは現実的に不可能だと思っている。
　根拠は下記のような土木史に残る難工事よりも、今回の方が地質、土被りの条件が格段に悪いからである。
　・上越新幹線中山トンネル　長さ14.83km　工期10年（1972.02～1982.03）
　・北越急行ほくほく線鍋立山トンネル　長さ9.12km　工期22年（1973.12～1995.11）
　・東海北陸自動車道飛騨トンネル　長さ10.71km　工期10年（1996.10～2007.01）

　とくに中山トンネルは何度も水没し、土被り350mの地上からの薬液注入がなければ完成はなかった。

　南アルプストンネルの最大土被り1400mで地上からの薬液注入はあり得ない。
　よって、わずかに完成の可能性があるとすれば、それは多数の水抜き坑により南アルプスの地下水を空にすること以外考えられない。（それでも膨圧などの問題は残る）
　工事の成否にかかわらず、南アルプスの生態系と人々のくらしが破壊されることは必至だが、その責任をとれる人間がいるのか？　期待薄だが入札に参加するゼネコンはその辺りを冷静に判断してほしい。

ーーここまでーー

　さて、今年３月、私はそのトンネル工事を請け負うことに前向きな某ゼネコンにある質問をしていました。
（「前向き」と書いたのは、昨年、電話したときに会社の担当者が「リニア工事は是非請け負いたい」と発言していたから）

　その質問は、ＪＲ東海は品川・名古屋の２８６キロ全線を自費で建設すると表明しているが、もし、南アルプスのトンネル工事が予想以上の難工事になり、工期が延び、すなわち、工費が増大する場合は、ＪＲ東海はその増加分を支払ってくれるのか、それとも、当初の契約通りの受注額ですべてを御社がやり切ることになるのか、どういう契約書を締結するのか…ということです。

　従来の整備新幹線であれば、その建設費の３分の２は国が、３分の１は自治体が負担をしてきました。つまり、工費がオーバーとなっても、それは税金で補えるわけです。
　では、国の世話にはならないと言っているＪＲ東海は工費オーバーが想定されるこの工事で、各ゼネコンとどういった契約書を交わすことになるのか。

　しかし、その某ゼネコンははっきりとした回答を避けました。

「JR東海様サイドのお話であり、当社としては現段階では何もわかりません」

　このあたりは、何の信頼関係もないジャーナリストには、情報を易々とは渡せないということなのでしょう。

　とはいえ、品川・大阪間にかかるのは９兆円ではなく、少なくとも１５兆円はかかるとみる投資家もいるわけで、だからこそ、特に、海外の投資家は今、国費が投入されない以上、ＪＲ東海への投資に慎重になっているのです。

　ゼネコンがどういう契約をＪＲ東海と結ぶのか。
　また、本当に南アルプスにトンネルを掘った場合にどういう影響が環境や生態系に及ぶのか、推進派にも反対派の両者にも「それで間違いない」と言わせるだけの具体的な予測も必要です。

　ただ、話がそれますが、現時点で、両者に「それで間違いない」と言わしめるのは、ＪＲ東海が作成した「環境影響評価書」を徹底的に読みくだいて、環境影響評価法と照らし合わせて、その不備を挙げることです。

　「１＋１＝２」を「違う」という人は誰もいません。

　なんやかんやと注目したいと思います。

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