リニア、着工への難関

●リニア、着工への道筋は難関だらけ？！

　国土交通省が認可したリニア着工。
　これで、一気にドーンと工事が進むかといえば、立ち退き問題や静岡県の粘りなどで、そうはいかないと書きました。
　だが今、それ以外にも、根幹的な部分で、本当に着工（いわゆる鍬入れ）が難しいことが指摘されています。

●誰が投資するのか？

　これは私が取材したことではありません。鉄道問題に詳しい方から教えていただいたことです。そのコメントをブログなどに公開することは特に許可をいただいていないので、概要のみ紹介します。仮にＡさんとします。

　リニアを建設するにしても当然、建設費が必要です。品川・名古屋間で約５兆円。ただし、東海道新幹線からの収益をリニア中央新幹線につぎこむとすれば、実際に必要とされる建設費は、建設期間の１４年間（２０１４～２０２７）で約３兆円とみられています。

　では、この３兆円をどこから借りるのか？　Ａさんは、こう述べています。

　★JR東海は、リニア計画について「収益性は度外視」「ペイしない」などと言い過ぎた結果、資金が調達できないで困窮している。
　★実際、外資系のＭ証券は、JR東海が果たして投資先としてふさわしいかどうかを疑っている。Ｍ証券も、ゼネコンも海外投資家も、リニア中央新幹線の9兆円という建設費はさらに膨れ上がると見ており、一部では15兆円という声も聞かれる。実際、上越新幹線の建設費は、建設前の想定建設費の１．７倍もかかった。９兆円も１．７倍すれば１５兆円。
　★銀行からの融資は、同社の担保となる資産で、1兆円程度であれば何とかなる。
　★だが、まだ建設資金が足りないので、リニア建設のために社債を発行しなければならない。だが、この状況では、相当な利回りにしないと引受先は現れない。
　★Ｍ証券は「リニア中央新幹線の完成までに同社の調達金利が1.5%以内に収まれば大丈夫」と言っているが、逆に言えば1.5%を上回れば難しくなる。
　★海外の投資家たちの関心はすでに、同社が自力での資金調達ではなく、いつ政府の財政支援を受けるかにある。

　国の支援…。以前、このブログでも書いたように、国の支援があるかないかの質問に対して、国土交通省は「あり得るともあり得ないとも言えない」「現時点では分からない」、と国費投入の可能性を匂わせています。

　もし支援するとなったら…。そのときは、国民は怒らねばなりません。


●「ウチでは無理！」ーーある建設会社の本音ーー
　
　先日、鉄道建設では日本のトップクラスの会社に勤務するベテラン社員に会いました。仮にＢさん。
　リニア建設に期待しているかと問えば、さにあらず。

「わが社では躊躇しています。というか、リニア計画への参入には後ろ向きです」

　なぜ？

「弊社の採算が取れるかが怪しいから。おそらく受注したら、１Ｋｍあたり数十億円や数百音円での枠での受注となるでしょう。つまり、弊社がその額面以内で工事を終えられるかです。これまでの整備新幹線は、国と自治体のお金で建設されたから、工費がオーバーになっても、それをカバーしてもらえた。だが、今回は違う。全額、３兆円の赤字を抱えるＪＲ東海の自己事業です。
　また、南アルプスは難工事になるのは間違いない。そうなると工費はかさむ。さらに、何が難工事かというと、異常出水が必ずあること。異常出水ってすごいですよ。だって、トンネルのなかで人が流されるんだから。それで、もし社員が一人でも二人でも死んだなんてなったら、シャレになりません。ＪＲ東海は当然弊社の参入を見込んでいるけど、今、どうやってそれを断ろうかと…」

　また、その異常出水や水枯れは必ず起こるわけですが、評価書のなかで、ＪＲ東海は「事後調査をする」と言っています。Ｂさんは、「いったん受注すれば、事後にも関わることになる」と怖れます。

「もし異常出水した場合は、その水を元の水源に戻すなどの工事が必要になります。そして、いったん地上に出てきた地下水はｐｈ（ペーハー）も変わるし、変質もする。それを元々の水質に戻すには、莫大な資金がいる処理施設が必要。その建設や維持も、ＪＲ東海と契約を交わす１キロあたりいくらの受注額のなかでやりくりしなければならない。腰が引けますよ」

　自分の会社だけではなく、ゼネコンにしても、進んで参入する会社はそれほどないはずだとＢさんは予測します。もちろん、個人的予測ですが。

　おそらく、それでも受注した場合でも、公的事業では当たり前ですが、下請け、孫請け、ひ孫受けと次々と丸投げするのでしょう。
　そうなると、従業員の労働環境や待遇はどうなるのか。
　たとえば、大きな建設現場では、孫請けが労災事故を起こしたら、それはその親会社の責任になるので、労災隠しも必死かつ必至になる。
　でも今の時代、どんな仕事でもほしいという下請けの建設業者はたくさんいるから、労災隠しにも甘んじる…。リニアではどうなるのだろう。心配はつきません。

　いずれにせよ、自治体や住民から厳しい声が高まる中でも、なお、ＪＲ東海が公開討論などの話し合いを実現しないままで、リニア事業を検証しないままで、着工に突き進むと、相当に無理やりな工事になるような予感がします…。

悪夢の超特急 リニア中央新幹線 (2014/09/17) 樫田 秀樹 商品詳細を見る １９９９年からリニアに関する住民の動きを広く浅く追ったルポ。実験線周辺では、ＪＲ東海が「枯れない工法を施工する」と表明しても枯れ続ける川や沢。一つの谷間を埋めても用途の決まらない残土置き場。今後も、電磁波、国税投入、原発再稼働、処理できない膨大な残土、水枯れ、朝から晩まで数百台も1,000台以上も走り続ける工事用大型車両、立ち退き問題等々が予測されているが、一番の問題は、賛成派や反対派、慎重派、有識者、自治体、ＪＲ東海などが一堂に会する徹底検証が一度も行われず、「環境への影響は小さい」だけが繰り返され、ほとんどのマスコミは報道を避けているという、原発推進とまったく同じ構図で推進されていることだ。いかに、ＪＲ東海が住民を軽視しているのかも描いている。リニア問題を知る入門書。

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