リニア、ウラン鉱床への不安

●やはり共有されていたウラン鉱床への不安

　以前、本ブログで、日本最大のウラン鉱床が眠る岐阜県東濃地区にリニアが通ることを書きました。

　ひとたび、地下のウラン鉱床にトンネル工事がぶつかり、そのウラン残土が地表に出てくると、ウラン残土からは、発がん性の気体の放射性物質「ラドン」ガスが絶えず放出されることになります。
　かつて、岡山県と鳥取県にまたがる人形峠周辺では、日本で最初にウラン採掘をしたがために、そのラドンガスで多くの労働者と住民とが犠牲になっています。ですから、ウラン鉱床だけは絶対に掘り出してはいけません。

　では、もしリニアのトンネル工事でウラン残土が出てきたらどうなるのか。私はこれをＪＲ東海の環境保全事務所（岐阜県）に問い合わせると「東日本大震災での放射能汚染がれきの処分方法を参考にしたい」との回答が。
　つまり、県外への搬出を示唆したのです。

　そして、ＪＲ東海の「環境影響評価準備書」でさらに驚いたのが、リニアが通るルートは公表されたものの、そのルート上で、ただの一本もウラン鉱床があるかどうかのボーリング調査をただの一本も行っていないことでした。
　
　どうしてかというと、ＪＲ東海は、２５年も前に出された文献である『日本のウラン資源』（動力炉・核燃料開発事業団【現在の日本原子力研究開発機構】）に最新の知見が示されているから・・というものです。
　つまり、２５年前の調査でウラン鉱床の所在がわかったからボーリング調査をしないということです。

　だが、私は、少なくとも、リニアが通るルートくらいは責任をもってボーリング調査をすべきと考えます。

　しかし以外にも、この私の考えを代弁するような報道はありませんでした。

　誰もおかしいと思わないのか？

　と思っていたところで、今年１０月２９日、その岐阜県でリニア準備所に関する環境影響評価審査会が開催されると、同じような疑問が委員から発せられていたのです。


●審査会の概要

　その審査議事録の概要を以下に記します。


【会長】
それでは質疑応答に入りたいと思います。先ほど事務局からも説明がありましたが、本日、時間の関係もありますので、只今の事業者からのご説明の内容についての確認等、説明いただいた内容の範囲内で留めていただきたいと思います。質問、ご意見等ございましたら発言をお願いしたいと思います。

【委員】
２点質問させていただきたいのですが、一つは大気質の予測に関するもので、残土の運搬が発生すると思うが、残土の運搬によって生じる大気質の変化、ＣＯ２の排出をどのように考慮されたのか、というのが第１点目の質問です。それから２点目は、ウラン鉱床の問題ですが、ＪＡＥＡ（日本原子力研究開発機構）の1,400 本のボーリングの結果を参考にしてウラン鉱床のない部分を通すというご説明だったと思いますが、基本的にＪＡＥＡ、旧動燃が過去に行っている調査はウラン鉱床がありそうな場所を探してボーリングしていたという認識を私は持っているのですが、今回の場合は、ウラン鉱床がない場所を特定するために、そういった情報が必要だと思います。ですからＪＡＥＡの情報だけで、ウラン鉱床がないという言い方ができるのかどうか、その点の考え方を教えていただきたいと思います。とりあえず２点お願いします。

【事業者＝ＪＲ東海】
ウラン鉱床についてです。スライドはウラン鉱床の位置図を示していますが、旧動燃が一生懸命探して見つかった鉱床が赤色の部分です。昭和30 年代から40 年代にかけて国策としてウランをエネルギーとして国内で産出しようということで大々的にボーリングが行われました。これで見つかったのが赤色の部分です。私ども事業者が1,400 本以上のボーリングをするのかというと、それもなかなかできない話です。この地域の３ｋｍ幅の中での最も信頼できるデータがこちらであると、資料収集やヒアリングの結果から考え、今回ウラン鉱床を避けるルートとして示しています。

【委員】
現在ある情報として、ウラン鉱床ができるだけない所を通すということは理解できるのですが、線路を通しているところに無いという保証といいますか、旧動燃が行った1,400 本のボーリングは大体どのあたりで行われていて、だから今通しているその線路のところは無さそうですよ、とわかるような形になるのでしょうか。

【事業者】
説明を省いてしまいましたが、旧動燃は1,400 本のボーリングをする前に航空機による広域的な調査と徒歩による地表踏査による調査を行っています。それらの調査によりウランが出てきそうなところを絞り込んだうえでボーリングを行っているということです。よって、この1,400 本のボーリングを行っていない箇所ではウランが出てくる可能性は非常に低いということだと認識しています。

【委員】
あった所と比べて低いというのは確かだろうと思いますが、もし掘って出てきたらどうするのでしょうか。
　結構大変なことになるのかなと思います。
　工事のやり方として、掘ってみて出たからコースを変えるといったことは可能ではないのだとすると、出てきた際にどういう対応をとるのかということについて、十分検討されている必要があると思います。その点、方法書の段階で適切な処理をしますと記載されていて、その内容について方法書の審査の段階で具体的にお答えくださいというのが議論されていたはずだと思います。
　その結果として、方法については準備書段階で具体的に記載します、というご回答があったと議事録が残されているはずです。私は非常に興味を持っていて、今回見させていただいてその部分が記載されているのかなと思っていたんですけども、方法書とほぼ同じレベルの記述であり、具体的に対策について検討されていない、適切に処理しますとしか書いていないので、その部分でもし検討されているところがあるのであれば、こちらの準備書あるいは評価書の中に盛り込んでいただいきたいと思っています。その点いかがでしょう。

【事業者】
現段階では準備書で示しているものが全てですので、ご理解いただきたいと思います



　これを読んだだけでも、いかにＪＲ東海が本気でウラン対策に臨んでいないかがわかるというものです。

　本当に、ただ単に「適切に処理します」だけの回答で、知事が本計画にゴーサインを出すとすればたいへんなことです。
　岐阜県の審査会、注視したいです。

必要か、リニア新幹線 (2011/02/04) 橋山 禮治郎 商品詳細を見る 数々の大型公共事業の審査を行ってきた著者（橋山禮治郎氏）は、リニアに賛成でも反対でもない。だからこそ、極めて客観的に評価した結果、リニア計画は必ず失敗すると判断している。その理論には一部のすきもなければ、個人的感情も介入せず、推進派の誰もが看破できない内容だ。リニア問題の入門書でもあり必読書。

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