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樫田秀樹

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●ソマリア一番の立派な難民キャンプ


 定住プロジェクトの中止を決定付けたマガネイ農民との最後の話し合いの数日前のことだ。

 私は、かつて担当していたマグドール難民キャンプの人々が移住したジャボレ難民キャンプを訪れていた。JVCのジャボレ担当者が、給食センターの運営の仕方を教えて欲しいと要請してきたからだ。マガネイでの話し合いに疲れきっていた頃だ。久々にマグドールの人たちに会えることは、楽しみであった。
 
 ジャボレは遠い。ルークから出かけと、首都モガディシュのJVC宿舎で一泊しなければならない。
 ジャボレに来るのは、第1回難民移送に同行して以来だ。
 誰もが、必要最低限のものしかもたずにここにやってきた。今も、モノ不足のなかで暮らしているのだろうな…。

 ところが、ジャボレに着いて驚いた。

「何だ、ここは!」

 目の前には、立派な土壁の家が林立している。ルークにあるどの難民キャンプの家よりも立派な造りだ。ボロを張り合わせた簡易テントのような小屋で埋まっていた、あの、ソマリア一貧しかったマグドールは、今やソマリア一豊かな難民キャンプへと大変貌を遂げていた。

 一体、どうして…。

 難民キャンプを歩いてほんの1、2分も経てば、あちこちから「カシダ!」と声が飛ぶ。間違いなくここは、元マグドールの人々が住むジャボレである。

●食糧配給で儲ける

 謎はすぐに解けた。食糧配給である。

 私が着いた翌日に難民への食糧配給があったのだが、ジャボレでは、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)ではなく、サウジ赤新月社(Saudi Red Crescent)というサウジアラビアの団体が食糧配給を担当していた。その配給現場を観察した私はぶったまげた。その配給量が中途半端ではないのだ。

 UNHCRが行なっているのと比べると、軽く倍はあるではないか。当然、各家庭は、消費しきれない量をもらうことになるのだが、配給所の真ん前には首都モガディシュからやってきた商人たちの大型トラックがずらりと待機していた。難民はここで食料を売り、金を手にして、欲しいものを手に入れていた。

 こんな収入源で生活が潤っていく現実をマグドール難民の誰が予測しえたであろうか。難民移送前に、食糧配給カードを交換してマグドール難民になりすましてこの地にやってきた人たちはまさに大当たり、この世の春だ。

 マグドールの給食センターで働いていた女性コックの一人、19歳のアルドにも出会った。人を恨むことのない性格で、ややおっちょこちょいの楽天家。誰からも好かれていた。
 
 アルドは、重そうに、だが嬉しそうに配給食糧の入った袋を運んでいた。

「アルド! 元気だった? 重そうだね」

「カシダ、家に寄って。ね」

 アルドの家では家族が私を歓迎してくれた。家の中には、新しいソマリア式のベッド、椅子、食器の数々が揃えられていた。分厚い土壁は外の暑さをみごとに遮断し、乾燥に耐えてきた肌をほっとさせた。

 マグドールでJVCのCHW(地域保健員)をしていたアボーカルも家に招待してくれ歓待してくれた。
 きれいなグラスに甘い紅茶が振舞われた。アボーカルも家族も全員が心から私をもてなしてくれた。
 
 紅茶はおいしかった。新しい家と家具、食器。これはこれでいい。いつまでも貧しいままでいいはずがないのだから。だが・・。

●これでいいはずがない

 難民キャンプで再会する知人たちは「こんなに食糧もらってんだぜえ」とみな嬉しそうだった。私はその笑顔に素直に「よかったな」とは言えない。そんな生活が何年も続いたあとの将来像はルークの難民キャンプで具現化しているからだ。

 人間に必要なのは、働いて食うことだ。

 だが、今、ジャボレでは、働かずに食うことが日常化している。

 マグドールよ、お前もか・・。今まで大切にしていた何かがガラガラと崩される思いに、私はただ寂しいような陰鬱な気分に浸った。

 おそらく、マガネイの難民にしても、最初はこうだったのかもしれない。外からの援助に、純粋に喜び、人として最低限の住居や備品を揃えていったのだろう。だが、換金性のある食糧配給という援助は、徐々に労働意欲を失わせ、難民という特権を振りかざすことで外国人からさらに何かを引き出そうとした。少なからぬ人が、嘘と演技を総動員し、自らの難民という立場を物資獲得のための駆け引きに使っていた。そして、その駆け引きになかなか乗ってこない「ケチ」な外国人――例えばマガネイでの私――には非難の言葉が投げつけられた。

 ジャボレでも、JVCが自立支援のための活動を続けていたのだが、そのためにも、必要十分以上の食糧援助は不要なものでなければならなかった。

 食糧欲しさに大量に紛れ込んでいるであろう非マグドール難民と便乗難民。この人たちの人生はなんのためにあるのだろう? 私にはその価値観を測り知ることができない。

●「NGOがいなくなれば解決する」

 こんな私の愚痴に、ジャボレ在住のソマリア人スタッフはさらりと言ってのけた。

「これがこの国の難民の実態の一面さ。でも、俺は、この状況を解決できる術を知っている」

「何でしょう?」

「国連とかNGOとかがいなくなればいい。遊牧系の人たちは、親戚を頼って何百キロだって移動しちゃうんだから、そこで安住する。援助があるから難民は増えるんだよ」

 以下のような説明だった。

 ここにある難民の家族Aがいるとしよう。家族構成は、父と母、そして5人の子どもの7人。エチオピアから命からがらソマリア国境に辿り着いた。A一家は近くの難民登録所へと出頭し、食糧配給カードを手に入れる。だがここで不思議なことが起こる。難民登録書に出頭した家族は10人に増えているのだ。ともあれ、A一家はそれ以降、毎月10人分の食糧配給を受けることになる。

 種明かしは簡単だ。血縁のネットワークをフルに利用して、親戚から子どもを何人か一日だけ貸してもらうのだ。そして、登録所で訴える――「見てください。私には8人も子どもがいるんです」

 さらに、その数ヵ月後、新しい難民がそこから数十キロ離れた場所に現れた。国と国連が新たな難民登録をするらしい・・。この情報を聞いたA一家は即座に移動を開始する。かくして家族は二枚の食糧配給カードを手にすることになる。
 これは彼の作り話でも何でもなく事実である。遊牧系の難民の多くがこれをやっている。ずうずうしいまでの逞しき生活術である。
 もちろん、農民系の難民や、遊牧系の難民でもすべての家畜を失ったなど、さまざまな理由で本当に困っている人々がいる以上、国際協力は必要である。それはさておいても、「援助が難民を呼ぶ」というこの言葉に、私は、自分たちがここにいることの意味を考え、何とも寂しい気持ちでジャボレをあとにした。

「何だろう、援助って・・」

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