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樫田秀樹

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●定住プロジェクト中止

「定住プロジェクトを中止しようと思う」

 JVCミーティングで、私とOさんはそう切り出した。
 行き過ぎた援助は、人を援助に縛り付け、人の独立心を失わせる。ルーク地区難民は、UNHCRの10
年近い食糧援助で、その多くが援助慣れを起こしてしまい、他者からもらえることが当たり前になってしまった。

 そこで、できるだけ多くの人に自立の場を提供しようと、高橋さんらが取り組んできたのが農業プロジェクトだった。自分の力で土を起こし、自分の力で種を蒔き、自分の力で鍬を入れ、その汗の代償として惠を得る。他者に依存していた自分に人としての尊厳を取り戻すのだ。

 だが、今回の定住プロジェクトは、農民の一部に依存の道を開いてしまった。農民にすれば、定住ではなく、家一軒をもらえただけの「引越し」としての役割しか果たせず、その依存心を必要以上に煽った。

「だから中止をしようと思う。第4農場の、約束を守ろうとせず、ただ、物資の要求を繰り返す姿からは定住への意思が感じられない。どうだろう、モハメッド、ラシッド、アオキ、ハジ」

「現状でいえば、それがベストな選択肢だと思う」「俺もそう思う」「俺もだ」

 計画開始前には鼻息の荒かったソマリア人スタッフも、現場を見てきてこりごりしていた。誰からの異論もなく中止が決まった。
 自らの意思で立ち上がらない限り定住はありえない。このことをようやくソマリア人スタッフは理解したのだ。即ち、私が思い描いた「目標」は実現したのである。もっとも、ルークに常駐していない一部スタッフからは「樫田がプロジェクトを失敗させた」とのやりきれない非難も飛んだが、それには甘んじなければならなかった。

 私が理解したのは、このルーク地区では、難民は欲しいものを何でも要求できる「特権階級」であり、私たちNGOは、彼らから見れば、どこかの国からやってきた大企業の人間であるということだ。まだ20代の若造が4WDの車を運転し、月に何百万円と動かしている。特権階級の人間からすれば、この金持ちの私に欲しいものを主張するのは当然の権利であり、ずうずうしいまでにその権利を振りかざしてモノを手に入れるのは、当たり前の生活術なのだ。

 だが、彼ら――この場合、第4農場の難民――は、難民となる前からああだったのだろうか? 取れるところからは毟り取っていたのだろうか?


●美しい思い出

 遊牧民系の氏族であれば、ぶったくり精神は持ち合わせていただろう。だが、ここまで強烈ではなかったはずと私は思う。というのは、私にはマグドールという難民キャンプと一年半に及び付き合ってきた経験があるからだ。マガネイに関わってから、つくづく、マグドールは貧しくとも何と美しい場所だったのかと心から認識できるようになった。

 モスクを作って欲しいと要請しながらも、結局は自分たちでブッシュから木を切り出し、粗末なモスクを作っていたときのみんなの嬉々とした表情。砂糖と紅茶だけの提供で、自主的にトイレつくりに励んだ人々。ほんのポケットマネー程度の謝礼で、給食センターや診療所で私たちを助けてくれた8人のセクションリーダー。給食センターでの受付をボランティアで手伝う若者もいた。

 食糧倉庫でのコソ泥はいた。だが、その程度である。マグドールでは、マガネイの農民のように、自分たち自身が最低限しなければならないことまで私たちに要求してくることはなかった。

 マグドール1よりもさらに劣悪な環境化におかれていたマグドール2には、忘れ得ぬ思い出がある。

 マグドール2には、予算と人材不足から診療所を建てることができなかったので、難民の人々にはマグドール1の診療所にまで行ってもらっていた。だが、急病人が出たら、休日でも往信は行うことは伝えてあった。
 85年9月頃だった。マグドール2の病人に定期的に飲んでもらう薬を渡すため、休日の金曜日、私は一人、車で出かけた。その病人に確かに薬を手渡し、帰ろうと車をバックさせていたときのことだ。何かがゴンと当たった。下りてみると、臼だった。割れている。穀物をついて粉にするのに使う生活必需品だ。
 臼の背が低かったので目視でもバックミラーでも確認できなかったのだ。
 私は思わず言った。

「すみません。弁償します」

 と同時に思った。どれくらい、ふんだくられるのだろう・・。
 すると、一人の老人が言った。

「弁償だと? 何を言う。あんたは、わざわざ私たちの家族を救うために来てくれたんだ。そのあんたにどうして金を払えと言えようか。俺はあんたがここでしていることを見ていた。俺だけじゃない。そうだな、みんな!」

「そうだ。俺たちはちゃんと見ていたよ!」

 そこにいた6、7人の男たちがいっせいに声をあげた。
 老人は言葉を続けた。

「心配しないでくれ。確かに臼は壊れた。だが、ちゃんと近所の誰かが俺を助けてくれるのだから。さあ、気にしないでもう行きなさい」

 車で去っていく私を、皆が手をあげて見送ってくれた。彼らは、「でも」という私から決して金を受け取ろうとしなかった。この日ばかりは、いつも見ているはずの、地平線に沈んでいく夕陽がことのほか美しく見えた。なんと誇り高き人たちだろう。

 マグドール2。当時、ソマリアでもっとも貧しく、もっとも支援の手が入っていなかった難民キャンプの一つである。少なくとも、もう何年も難民として暮らしている他キャンプの人々とは明らかに違っていたのは、そのぶったくりの度合いが断然低かったことである。


●ぶったくりと援助

 私はこの事件を思い出しては考えた。ぶったくりは文化や習慣として元々あるのかもしれない。だが、それは、当事者同士の信頼関係の未成熟、はたまた、一概に言ってはいけないが、外国からの「援助活動」を通じて増幅されるのでないか・・。
 
 とはいえ、私は、援助を否定しない。例えば、UNHCRという国連組織が食糧援助活動をしなかったら、測り知れない人命が失われていただろう。
 JVCの農業プロジェクトも人間の尊厳を取り戻すための素晴らしい活動だった。

 ただ、ルーク地区の難民キャンプの悲運は、ほとんどの人に対し、緊急状態を脱したあともなお食糧援助が続いたことだ。いや、食糧援助だけが続いたと表現するのが正確だ。難民からすれば、仕事をせずともメシが手に入るのだ(これをうらやむ人たちが便乗難民や偽装難民になる)。

 どんな人間にも、その日その日を生き抜いていく力がある。緊急状況を脱したあとは、その力を生かすことのできる場があるのが望ましい。人間としての尊厳をもって、その社会のなかで生産的な役割を担うことが望ましい。
 もちろん、そういうビジョンはあっても、一つの地域だけで10万人を越す難民を、UNHCRといくつかのNGOだけではカバーできないのも現実だった。
 例えば、マガネイでも2000家族のうち、JVCが関われたのは100家族だけ。残りの多くの人は、ほとんどが食糧援助だけで生きていた。

 先行き不透明ななかで、何年にも及ぶ食料や毛布を配給されるだけの生活・・。その、決して健康的とはいえぬ決して変わることのない受け身の毎日は、いつしか、人の心に澱みを生み、外国人から何かをもらうことを当然視するようになったのだ。そして、人によっては、自分の「難民」という「特権階級」をフルに活用してぶったくりに奔走した。

 さて、では、ジャボレ難民キャンプに移送されたマグドール1や2の人たちはどうなったのか?
 定住プロジェクト中止のあと、私はジャボレに行った。そこで見たのは、まことに驚愕の事実だった。あのソマリアで最も貧しかった難民キャンプが最も豊かな難民キャンプへと変貌していたのだ。「援助」のために。それは次号。


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