頑張れ、星のり店、そして、ミネロファーム

●星のり店、テレビに登場

　昨年の津波で甚大な被害を受け、その後、復興ファンドで立ち直った星のり店。

　ここのことは、本ブログでも何回か書かせていただいていますが、明日、テレビに出るようです。

　明日11月29日（木）の午後4：40分～45分に、お店の星陽子さんと博さんのご夫妻が出演されます。
（近畿地区　30日（金）4：35分～40分）


　番組名は、NH総合テレビの「あの日わたしは」

　是非ともご覧ください。


●ミネロファーム

　これも、本ブログで何度が登場した、飯舘村の酪農家の田中一正さんのことです。

　もう、当分の間、多くの人が戻って来れそうもない福島県飯舘村。

　その飯舘村のなかでも、もっとも放射能汚染が激しかったのが「長泥地区」ですが、その長泥のなかでもさらに高い放射線を出し続けているのが「曲田」（まがた）地区です。

　田中さんは、ここで酪農を営んでいました。

　元々、村の人ではありません。

　自身が理想とする酪農を求め、日本のあちこちを歩いて決めた場所が飯舘村でした。
　ところが、理想に燃えていた青年に村役場は「あんたみたいなヨソモンがここでやったって…」と役場の態度はつれないものでした。
　しかし、田中さんは、毎日新鮮なオガクズを敷き詰めることで、牛舎をどこよりもきれいに保ち、さらに、絶対に牛を縛らないことでストレスをなくし、村の牛乳の品評会では毎年優勝するほどに頑張ったのです。

　そして10年が経ったころに、原発事故。

　飯舘村に１１軒あった酪農家は、すべて牛を手放すことにしました。

　しかし、自分は酪農でしか生きれないと、田中さんは、日本のどこででも酪農をやるつもりでした。

　まずは山形県のある牧場から声がかかり働いていたのですが、このころから田中さんは、村内の２軒の酪農家とともに、共同経営の牧場を見据えていました。

　そして、その転機は意外と早くやってきたのです。

　「ダノン社」という、スイスに拠点を置く世界的食品メーカーがありますが、ここは毎年、自然保護活動や学術研究に助成金を拠出しています。

　同社は、再起を図ろうとする田中さんたちのために、田中さんによれば「ん千万円」の資金を助成したのです。

　そして、今年の10月5日、5人の被災農家からなるミネロファームは牛乳の初出荷を迎えることができました。


●賠償金をもらい続けていたら…

　私は7月に、たまたま神奈川県内の大学に講演に来ていた田中さんにお会いしたのですが、このときの会話で、一番感心したのが、田中さんが個人的には、東京電力からの賠償金を敢て申請していないことでした。

　故郷を追われ、避難生活をする人たちに対しては、精神的損害への賠償金として、毎月、東電から一人10万円が支払われます。赤ちゃんにもです。

　つまり、4人家族なら月に40万円が働かずとも入ってくるのです。

　もちろん、生活の基盤を失った人たちに、このお金は必要です。

　しかし、いったいいつまでもらい続けるのか？

　田中さんはこう言い切ったのです。

「僕は賠償金を申請していない。だって、あれをもらい続けていたら、人間ダメになる」

　放射線の値が下がり、避難解除された自治体もぽつぽつ現れていますが、人々はなかなか帰りません。

　そこにはいろいろな理由があります。

　★小さな子どもがいては、事故前の放射線のレベルになるまでは帰りたくない。
　★避難先には、近くに大きな総合病院があり、通院に便利。
　★新しい仕事を見つけてしまった。
　★村に帰れば、賠償金は打ち切られる。

　私は、案外、この最後の理由が大きいのではとも考えています。

　もちろん、必要なお金です。
　しかし、人間は働かずしてお金をもらうために生きているのではなく、自分の足で立って歩くために生きているわけです。

　今の状況が長期間にわたることで、人間の尊厳が貶められないか・・。

　田中さんが会ったおじいさんは、避難直後は、散々「村に帰りたい」と言っていたのに、今では、「町のネオンはいいなあ」ともう変える気をなくしているとか。

　私も、ソマリアで2年間を難民と向き合う仕事をしていましたが、そのときの経験からでも、援助は必要、でも最小限にすべきと確信しています。

　なぜなら、人間は自分の足で立って歩けるからです。

　だから、一時は自分の牛をすべて失っても、再び、立ち上がった田中さんを応援したいです。

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