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樫田秀樹

Author:樫田秀樹
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5月12日、国会前で入管法改正法案への抗議集会が開催された。約4000人が参加。私は開催1時間前には現場に着き、撮影場所を確保。この日も10人以上が登壇したが、ここでは特に印象に残った2人の訴えを動画で紹介する。ツイッターにも投稿できるように2分20秒に編集した。

①NPO法人北関東医療相談会の長澤正隆事務局長。このNPOは1997年に「外国人の為の医療相談会」として発足し、以来、困窮状態にある外国人、そして日本人の支援にあたっている。1997年ということはもう26年も活動を続けていることになる。私の入管取材開始の2018年は本当に遅すぎた(それでもジャーナリズムの世界では早いほうだった…)。相談会では過去数千人もの困窮した外国人の相談に乗り、実際に支援をしているが、そこにはもちろん仮放免者もいるわけで、入管で過去に死亡した18人のうち6人もが相談会での相談者だった。そこに話が及ぶと、長澤さんは「どれだけ悔しかったか!」と声を震わせた。


②思い出野郎Aチームというバンドのメンバーの高橋一(まこと)さんの訴えは、本質に迫っていた。
 入管だけを批判するのではなく、「入管で亡くなった方たちの命は、救えた命だった。彼らを見殺しにしたのは私たちです」と訴えた。そして「この問題を、いい加減にもう、止める責任が俺たちにある」と。そしてこれは私もいつも思うことだが「この国でただ生活しているだけでは、国家ぐるみのレイシズムと暴力の片棒を担がされる」の訴えには同意する。いわばサイレントマジョリティーの問題だ。
 日本人、特に成人男性の多くは、嫌と思ってもそれを口にせず、それどころか、自分の生活が苦しくなるかもと思っても、粛々の制度に従っている。高橋さんは、黙って過ごしていれば穏やかな人生を歩めるかもしれない。だが「それに何の価値があるのか!」と叫んだ。おそらく高橋さんは一回きりではなく今後も叫ぶ続ける人だ。その行動を今後も見ていきたい。


 前述のとおり、動画は2分20秒に編集されているので、高橋さんの訴えの全文は以下に公開する。

 こんばんは初めまして。多くの方がご存じないかと思うんですが、思い出野郎Aチームというバンドをやっています。売れないミュージシャンの高橋一です。よろしくお願いします。
 このお話をいただいて、最初僕のような人間よりももっと難民の当事者の方に多く語っていただいた方がいいんじゃないかと思って悩んだんですけど、でももう一度思い直して、今起こっている入管だったり、この国が抱えている差別や暴力の問題の当事者って誰なんでしょうか、当事者じゃない人っているんでしょうか。
 この問題を起こしているのは、何も宇宙からやってきた謎の組織じゃないんです。我々が参加した選挙で選ばれた俺たちの代表である人間たちが進めている問題です。だから俺たちが止めなければいけない。そういう責任があると思って、こういう今、僕は37歳で両親も日本人で、結婚して子供もいる。要するに、超一般的な特権性を持つマジョリティ男性なんですけど、こういう僕みたいな人間に責任があると思っています。俺たちはこの問題を一刻も早く止める責任がある。
 入管で命を奪われてしまった人たちのニュースを見たときに、強い後悔に襲われました。なぜなら、どの方も我々が救えた命だからです。あの時、もっと仕事とか休んでこのデモに参加していたら、今日来ていただいた皆さんのようにもっと声を上げていたら、SNSでもっと発言していたら、一番動員があったライブのステージでもっとこのことを訴えていたら、ここに今、ウイシュマさんさんや亡くなってしまった方々が立って、僕なんかよりももっと我々が聞かなければいけないことを届けてくれていたんじゃないでしょうか。
我々の救えた命を僕は見捨ててしまったと思っています。そして、この後悔はもう一生消えることはないでしょう。だけど、だからこそもういい加減、こういった問題を我々で止める必要があると思います。
 残念ながら、この国では、ただ生活しているだけでは、国家ぐるみのレイシズムと暴力の片棒かつがされる。
皆さんのように、こうやって実際行動についてこの問題と戦うのか、差別と暴力の奴隷になるのか、その二択しかないんじゃないでしょうか?! 
 そして、後者を選べば、我々はかりそめの平和な穏やかな人生を歩めるかもしれないだけど、そんなものに何の価値があるんでしょうか! 何の罪もない人間の苦しみを差し置いて幸福になれる道などあるのでしょうか! 
必ずこの問題は我々が止められるものだと思っています。僕の娘は今7ヶ月なんですけど、僕には娘がもっと育った時に、人種や国境に関係なく様々な人たちともっと自由で平等な社会で豊かな人生を送っている、そういう娘の姿をありありと思い浮かべることができます。必ずこの問題を終わらせることができる。そしてこの問題を終わらせるのは他でもなく我々です。
 僕も全然売れないミュージシャンではありますが、まだステージやCDなどの機会を与えていただいているので、自分のやれるところで闘いたいと思います。皆さんもそれぞれ自分の場所で諦めずに戦いましょう、ありがとうございました。
(ちなみにこれは、ソースネクスト社の「automemo s」というICレコーダーで、「録音+自動文字起こし+ネットでパソコンやスマホに転送」をしたものです。文字おこしの正確率は99%。ほんの数か所を訂正しただけです。ご購入に関心ある方は https://amzn.to/3O7PdDM をご覧ください)。

●5月21日には練馬区で1万人行動
 さて最後に登壇した、貧困状態に陥っている日本人と外国人の支援を行っている「反貧困ネットワーク」代表の瀬戸大作さんは、この集会が始まってから思いついたアイデアとして「5月21日に渋谷の国連大学前から1万人行動をやると決めました。今回の問題を全く報道しないNHK(言われてみれば…)まで歩きましょう」と訴えた。有言実行の人だから、おそらくやる。 詳細はまた後日。
230512 入管法改正法案 国会前反対集会 瀬戸さん 
230512 入管法改正法案 国会前反対集会5

230512 入管法改正法案 国会前反対集会4

230512 入管法改正法案 国会前反対集会3 230512 入管法改正法案 国会前反対集会2 230512 入管法改正法案 国会前反対集会 周さん 230512 入管法改正法案 国会前反対集会 議員 230512 入管法改正法案 国会前反対集会

となりの難民
←入管問題に長年関わっている織田朝日さんの著書。足元の難民問題を平易な形で著した日本初の本。

月刊「世界」2020年12月号
← 月刊「世界」12月号。ここに私の書いた入管問題のルポ。そして、仮放免者3組による座談会をまとめた記録を掲載しました。他の著者の原稿も熱いです。保存版の一冊だと断言しておきます。


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入管法改正法案が衆議院法務委員会で可決。最初の入り口が突破されたことで、日本の国会ではずるずるとこのまま一気に法案成立+施行になる流れだ。本当に、迫害が待つ出身国に在留資格のない人を送還するのだろうか? 日本で生まれた、もしくは幼少時に来日したので、親の出身国のことなど何も知らず、日本語で思考ができて、日本を土台として生きる若者たちも送還するのだろうか? 2018年に入管取材を始めて心が重くなるのは、在留資格がないというだけの理由で、人を殺し、傷つけ、生活を破壊することを、反社会勢力ではなく、国家機関が堂々とやっていることだ。
 人間は人間として、相手が誰であろうと、絶対に超えてはならない一線がある。だが今の入管制度は、その人の道を外れていることを国家機関がやっている。
 4月24日。在留資格のない仮放免の若者たちが集会を催し、思いのたけを語った。私がグッと来たのは、仮放免者には健康保険証が付与されず医療費は10割負担になるので「病気にならないように頑張っているけど、病気になっちゃって…」と親へのすまなさを吐露した少年の言葉だった。
 当日の証言の一部をアップします。






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●入管暴力事件に暴行当事者と被害者の妻が証言台に立つ
 トルコ国籍のクルド人のデニズさんは、入管施設(東日本出入国管理センター。以下、牛久入管)に収容されていたとき、複数の職員たちから理不尽な暴力を受けた。


 その国家賠償を求める裁判で、11月11日、その暴力行為を働いた警備官A氏、その責任者の二人が証人尋問を受ける。
 加えて、デニズさんの妻、B子さんもまた証人尋問に立つ。

←3年半もの長い長期収用からやっと仮放免されたデニズさんと迎えに来たB子さん。

 私は2018年から牛久入管での面会取材を重ね、そのなかでデニズさんには何回も面会した。
 デニズさんはおそらく、牛久入管でもっとも多く懲罰房に送られた一人だ。大きな声を出す、警備官の服に軽く触れる。それだけで「反抗的態度をとった」と責められ、懲罰房に送られた。そして2019年1月のある夜、睡眠を得るための精神安定剤を職員に要請した。たが、職員は「大声を出した」として数人がかりでデニズさんを制圧した。床に組み伏せ、腕を後ろ手にしてねじ上げる。喉の痛点を親指で押す。「痛い! 痛い!」と叫んでも手加減をしてくれない。デニズさんは何も暴力的な行為は働いていない。ただ、薬を求め、職員の行為に声を上げただけだ。
 そのときの撮影映像が、今回の国家賠償裁判で、原告側の求めに応じて提出された。
 関係者がそれを目にしたのは19年12月19日だが、その衝撃的な内容には震えた。私はてっきり、職員からの威圧行為程度かと思っていたら、本当に暴力だ。翌20日、妻のB子さんから私のスマホに電話が入った。
 B子さんもその映像を見ると、あまりもの暴力に体ががくがく震え、翌日も震えが止まらずに精神科に行き、薬を処方してもらったほどだ。それでも震えは止まらない。初めは私にSMSなどで連絡しようとしたが、指が震えて文字が打てない。そこで、かろうじて電話で連絡してきたのだ。誰かに話せば、少しは気が楽になるだろうと。
「いつもの言葉の暴力かと思っていたら、人を人として扱っていない暴力に今も震えが止まりません」
 そしてB子さんは、結局処方してもらった薬が体に合わず服用をやめたが、すると、朝まで頭が覚醒しほとんど寝ることができない。それでも日常生活は否が応でも待っている。B子さんにも辛い日々が始まった。
 そのB子さんは原告側弁護団の求めに応じて証人台に立つ。
 私は昨日、デニズ夫妻に会い、B子さんに「証言台に立つことに迷いはなかったのですか?」と尋ねた。B子さんは「ありません!」と即答した。
 ただ当日は、デニズさんに直接暴力を働いた警備官も出廷する。
 その顔を見ただけで、デニズさんがフラッシュバックを起こさないかが心配だ。衝立版を立てて対処するのか?
 さらに、暴行映像も、ご夫婦にフラッシュバックを起こすので、当日、法廷内で上映するのかしないのか? とても気になる。

221103デニズさんと妻が手を握る
 
●人権団体への批判
 2018年から入管問題の取材を初めて気づいたことがある。
 それは、マスコミが一切の関心を持たないことだ。記事の企画を出しても「でも、彼らは不法滞在なんだろう。自業自得だよ」で終わり、話が進まない。
 そして、いつもは、いわゆる「人権」を標榜する組織ほど、この問題に関わらないことだ。
 両者には共通点がある。それは、何か事件が起きてから、世間が騒いでから、初めて動くことだ。
 入管には数十人、数百人が長期収用(おおむね半年以上。長い人で7年)をされていたが、仮放免のめどがまったくたたず、仮放免されない理由すら明示されず、多くの人が精神状態を著しく乱していた。
 あるスリランカ人の収容者が、有名な人権団体に救済を求める手紙を出した。ところが、返信は「個別的案件には取り上げない」というものだった。
 デニズさんも昨日、その人権団体との打ち合わせをしていた。
 デニズさんはこう訴えたそうだ。
「あなたたちは、私たちが長期収用されているときに、一度も面会に来たことがない。情報を発信したこともない。今までいったい何をしていたんですか!」
 団体はこう回答したそうだ。
「入管法の改悪を止めるため、レポートをまとめているところだ。そこに至るまでの準備が遅れたことは申し訳ない。今後は皆さんの声を聴きます」
 入管問題が盛り上がったのは昨年春。まさしくウィシュマさんの不審死、そして、入管法の改悪問題が続けざまにクローズアップされてからだ。そこで初めて、メディアは検証報道を行い(それにしても一時的ブームに近いが)、デニズさんが、国賠訴訟に加え、国際法違反で入管を訴えたことで注目を浴びていることで、その人権団体も動いた。
 文句は言いたい。だが、少なくとも彼らは今からでも動こうとしている。その動向については、信じて見守りたい。
 メディアや市民運動の基本は「事故待ち」運動ではなく、そういった事故や事件を未然に防ぐため、これ以上の被害拡大を止めるために、警鐘を鳴らすことが役割であるはずだ。
 
 今、デニズさんとB子さんは、気持ちを強く持って当日に臨もうとしている。仮放免されてからすでに2年半が過ぎたが、デニズさんは今も精神科に通うほどに心に深い傷を負っている。

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月刊「世界」2020年12月号
← 月刊「世界」12月号。ここに私の書いた入管問題のルポ。そして、仮放免者3組による座談会をまとめた記録を掲載しました。他の著者の原稿も熱いです。2年前の記録だが、保存版の一冊だと断言しておきます。

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●盛り上がった日本人妻たちのオフミーティング。
 5月8日。「夫(仮放免者)の在留資格を求める日本人配偶者の会」の4人の日本人妻たちが会合を開いた。といっても、私の取材が許可されたのはその2次会。でも2次会でも女性たちの本音や悩みが、ときに皆で頷き、笑い、「それ私も!」と共感したりで充分に盛り上がった。

220508 配偶者の会 オフ会


 そのうち、日本人配偶者のことを記事にするが、これを取材しようと思ったのは、在留資格のない外国人の場合、妻が日本人で、さらに子どもがいれば「積極要素」として、在留資格を得る可能性が高まるはずなのに、実際には在留資格を与えられない人たちが多い。結局は、入管は、それら『積極要素』があったにしても、在留資格を与える気がない…ことをあぶりだしたいのと、こんな私の記事でも世間が少しでも関心を向けることで、入管に「この問題は無視できない」との意識づけをしたいから。

●非正規社員にならざるを得ない
 妻たちにはいくつかの共通点がある。
 昨日の4人以外にも数人に合っているが、ほとんどすべてが非正規社員であることだ。

220404 配偶者の会 手を重ねる


 特に、夫がある日突然に収容されてしまうと、そうならざるを得ない。なぜなら、収容されると、面会日は平日の日中に限られるからだ。仮に週に一度の面会でも、1年間なら50回を超える。そんなに多くの有給休暇は取れるものではない。妻たちは仕方なく、時間のやりとりに融通の利く、だが収入が半減する非正規職員に身を置くことになる。
 もう一つの共通点は、会社の社員や友人の誰に話しても、在留資格のない夫がいる現実を理解してもらえないことだ。その多くは「国際結婚したら自動的にビザがもらえるんじゃないの」「ダンナは何か悪いことをしたのか」というものだ。誰にも理解されない。
 これが同じ在留資格のない、例えば、クルド人なら川口市や蕨市などにコミュニティがあり、互いを理解し支え合うことができるが、日本人妻は日本にいるのに無理解の壁に囲まれ、孤独の日々を過ごしていた。なかには親から勘当される人もいる(もちろん、その逆に、夫の優しさに感激して、応援するお母さんもいる)。
 生活は厳しい。借金が膨れる人、ダブルワークをする人、仮放免は就労禁止=「夫婦共働きではない」ので子どもが保育園に入れない人…。
 なかにはそろそろ年齢的に大台に乗る人もいて、在留資格を訴えながら、生活維持のためにギリギリまで働きながら、夫をいつまで支えらえるかの不安を抱く人もいる。
 問題は思った以上に深刻だ。
 だが、会ができたことで、思う存分に話し合える仲間ができたことは一歩前進だ。これをあと二歩も三歩も前に行くのか。長い目でつきあいたい。

←ジャーナリスト志葉玲さんが今年2月に出版した、在留資格なき人々を巡るルポ。

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●ウイシュマさん死亡の調査報告書が出た
 8月10日。今年3月6日に名古屋入管で亡くなったスリランカ人女性のウイシュマさんの死因を巡っての調査報告書が公開された。
 「令和3年3月6日の名古屋出入国在留管理局 被収容者死亡事案に関する調査報告書」は96ページ。
 乱読した印象としては

★名古屋入管の対応を批判する内容も盛り込まれていたが、結局は「名古屋局の対応には相応の根拠や理由があり、不当なものであったとまでは評価できない」など、入管を擁護する結論に留まっている。

 11日には、ウイシュマさんの死亡直前の2週間を記録した映像のうち、編集した2時間が遺族に公開された。2時間だけでも相当に衝撃的な内容だったようだが、遺族は、「切り貼りした映像では全貌が判らない。2週間分の映像の公開を求める」と闘う姿勢を崩さない。そして13日には、「ウィシュマさん死亡事件の真相を求める学生・市民の会」が主催する「名古屋入管死亡事件の真相究明のためのビデオ開示、再発防止徹底を求めるオンライン署名を提出に関する記者会見」が開催された。

210813 ウイシュマさん集会5 ポールニマさん←ウイシュマさんの遺影の横に座る妹のポールニマさん  210813 ウイシュマさん集会3←記者会見には、せやろがいおじさんや作家の吉田京子さんも参加した。

●報告書にかかれたウイシュマさんの経緯
 2017年6月29日に、留学ビザで来日。千葉県内の日本語学校に通った。初めはほぼ無欠席だったが、2018年2月から4月にかけては1/3~1/2を欠席。
 4月からは静岡県内で、同じスリランカ人男性のB氏と同居し、自動車部品工場で働いた。
 5月から授業に出なくなり、日本語学校は6月25日にウイシュマさんを除籍する。
 9月21日(留学ビザが切れる8日前)、難民認定申請をする。
 10月15日。入管は「特定活動」という2カ月間の在留資格を付与する(就労不可)。
 だが就労を継続し、2カ月経った12月13日に「特定活動」の更新に臨むが、翌2019年1月22日に不許可とされ、在留資格を失う。
 それから1年半以上、入管はウイシュマさんと連絡が取れなくなったが、2020年8月19日、ウイシュマさんは静岡県内の警察署に出頭する。 同居のB氏に追い出され、居場所も仕事もないため、スリランカに帰国しようと思っての行動だった。だが警察は、当然ではあるが、「不法残留」の現行犯でウイシュマさんを逮捕。
 以後、入管に収容される。

 報告書には、あれ?と思う報告がいくつもある
 報告書には、相反する二つの証言や、根拠のない証言が散見されるため、それはあくまでも「参考」ということで読んだが、もっとも注目しなければならないのは、その個人にどんな背景があろうとも、だからといって「命を奪うことが許されるのか」との検証だ。
 名古屋入管でウイシュマさんは「死んだ」のではなく「殺された」と私は捉えている。これは、牛久入管も東京入管もそうだが、 杜撰な管理体制は人を傷つけ、弱らせ、そして時に死に陥れる。だが、入管で被収容者が亡くなっても、入管はとにかく責任逃れの理論を組み立てる。

 例えば、
 
 ウイシュマさんが亡くなる前日の3月5日、名古屋入管が「体調をある程度回復させた上で仮放免を行うとの方針が決定された」(88ページ)とある。
 つまり、亡くなる前に「ちゃんと仮放免を考慮した」との事実を訴えている。これは信用できるのか?
 報告書では、「体調をある程度回復させた上で」と条件をつけたのは、以下の理由によるとしているーー「仮放免後の介助等を確保できる見通しが立っていなかったから」
 私は、これには、2つの理由で納得できない。


1.そもそも、ウイシュマさんは長期収容されていたから、体重を20Kg以上も落とすほどの体調不良に陥った。ウイシュマさんを診察した名古屋市内のT病院精神科医師は「仮放免してあげれば、よくなることが期待できる」との診療情報提供書を作成していたのに、それが名古屋入管では共有されていなかったのだ。このまま収容を続けて、ウイシュマさんの体調が回復すると入管は本当に考えていたのだろうか。

2.ウイシュマさんの保証人になるという人はいた
 報告書では、支援者「S1氏」とその妻である「S3氏」とされているが、入管はそういう保証人がいても、仮放免を許可しなかった。86ページには、こう記載されている。
S1氏やS3氏が保証人となった被仮放免者が逃亡する事案が少なからず生じており、A氏(ウイシュマさんのこと)の逃亡を防止して出頭を確保できるかについて疑義を有している
 
 これについて、集会で「違う」と発言したのが、市民団体「START ~外国人労働者・難民と共に歩む会」の学生メンバーである千種(ちくさ)朋恵さんだ。千種さんは名古屋入管でウイシュマさんにも2回面接していて、面会中にウイシュマさんが嘔吐するのを目の前で見ている。S1氏とも直接の知り合いだ。

210813 ウイシュマさん集会7 千種朋恵さん


 千種さんはこう発言した。
S1氏やS3氏は保証人として、何人もの仮放免者を担当しています。なぜウイシュマさんだけが仮放免が許可されないのかの理由にはなりません

●ストーリーを作ろうとする入管
 閉会後、私は千種さんにさらに尋ねた。
 S1氏がウイシュマさんに初めて面会したのは2020年12月9日だが、このS1氏について報告書の25ページ脚注にはこう書かれている。
令和3年6月22日、S1氏から、以降の調査チームの調査への協力や提出済みの資料の報告書への添付・引用はすべて断るとの申出がされた
 ところが、それが「なぜ」なのかの記載が一切ない。それを千種さんに尋ねると、千種さんは明快に回答してくれた。

6月17日に入管庁ヒアリングがありました。このとき、入管職員が、『支援者がウイシュマさんに≪仮病になれば仮放免される≫と言ったことは本当か?」と質問したんです。でもS1氏は『そんなことは一切言っていない』と断言しました。それなのに、入管はその後も、同じ質問を2回も3回も繰り返すんです。S1氏にしては、それ以上は何を言っても不毛になるだけなので『このヒアリングは中止します!』と帰ろうとしたんです。ところが、それでも、入管はまた同じ質問を繰り返しました。つまり、何が何でも、『支援者がウイシュマさんに仮病を促した』とのストーリーを作りたかったんだと思います

●8月10日の公開ビデオは2時間だけ
 さて、入管が公開した映像は、2週間分の録画を編集した2時間のみ。それを見たウイシュマさんの妹のワヨミさんとポールニマさんは、その映像に衝撃を受け、1時間10分見ただけで、中断した(そして、映像を見て体調を崩したワヨミさんは13日の集会を欠席)。
 その映像内容は、他のSNSでも伝えられているので、ここでは割愛する。
 姉妹は、後日、残りの部分を見るというが、それでも2週間分の全面公開を求めてさらに入管への働きかけをしていくという。

●STARTの証言
 さて、名古屋入管は、ウイシュマさんが亡くなる前日に「仮放免を考えた」そうだが、彼らはこのままではウイシュマさんが「死ぬ」とは考えなかったのだろうか?
 亡くなる3日前の3月3日にウイシュマさんに面会したSTARTの面会記録を以下に転載する。名古屋入管との捉え方があまりにも違う、というか、普通の人間の感覚なら誰もが「このままでは死ぬ」と思うはずだ。 

ーーここからーー
★2021年3月3日(水)(面会)
・頭がいっぱい痺れる、手足がちゃんと動かない。転んで(顔の右側のおでこを指して)床にぶつけて痛い。
・耳の中で電車が走るような感じ。首が痛い。めまいがする。 脈拍が64。夜、熱が37℃。
・夜は職員が来ない。別の仕事があるから行けないと言われた。
・水も飲めない、食べられない、トイレに行けない。
・朝おかゆを食べた。OS-1も飲んだ。今は戻さなくなった。これから頑張って食べる。
・洗濯用の洗剤と柔らかい歯ブラシがほしい。
・外の病院にいつ行くかはわからない。
・面会室を出る間際に、「今日、連れて帰って」と言っていた。
・面会した時の状態として、今回はマスクをしていなかった(マスクをしていると、呼吸が苦しいからではないかと推測。)。目がくぼんでいて皮膚に張りがない。唇が半分黒くなっていて、荒れている。口元に唾液がたまっていて、話すと泡になる。泡を吹いているように見える。車いすに寄りかかっていて、上体を動かせない。腕を伸ばすことができず、指も伸ばせない状態。頭から上着を被っていて、異様な雰囲気だった。

 面会後、処遇部門に申し入れ
・このままでは死んでしまう。すぐに入院させて点滴を打ってもらいたい。
 これに対して、職員は「予定は決まっている」と答えるのみ。


ーーここまでーー
 
●何を目指すのか
 今回の集会ではSTARTや「BOND~外国人労働者難民と共に歩む会~」などのメンバーが中心となり、集会の受付やパネラーの多くが若者だった。この事実には一種の安堵を覚える。
 日本各地の環境問題や社会問題の現場に行くと、活動者の平均年齢は高い。60代以上がほとんどか。もちろん、やる気がある60代以上は経験豊富なだけに頼もしい。だが、地域の問題なのに、なぜ若い人がいないのかの疑問はいつも覚えていた。
 ところが、この入管問題では、高校生や大学生など関わる若者の数が半端ではなく多い。
 誰かに指図されるのではなく、自分たちの目で見て、耳で聞いて、そして自分の頭で考えて自分なりの考えを出し、そして若者が得意なデジタル機器を駆使してのネットワークの拡充と周知活動を行い、そして実際の現場に立つ。
 
 今後の入管問題における課題は以下のことだ。
・入管法改正法案が廃案になったが、それは、マイナスに行こうとしていたのがゼロに戻っただけで、依然として問題は残っている。つまり、長期収容の解消、仮放免者が人間らしい生活を送ること、入管行政に第三者を入れるなどの活動が残っている。それを実現できるかどうか。

 おそらく、次期国会で、廃案になった入管法改正法案は再浮上するかもしれない。
 そのときに、再び、市民や外国人が国会前に集まるかもしれないが、そういうマイナスをゼロに戻す運動に加え、是非、ゼロからプラスに転換する運動にも期待をしたい。
 
★5万88筆の署名
 「学生・市民の会」は7月9日から8月12日まで、収容中の監視カメラ映像の全面開示や再発防止策の徹底を求めるオンライン署名活動を行っていたが、集まった署名5万88筆を、この日の午前中、出入国在留管理庁幹部に手渡した。
 だがビデオの全面公開がない以上、署名活動は続けられ、10月1日に第2次提出を目指しているという。

210813 ウイシュマさん集会11 集合写真 署名5万人

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1都6県にまたがるリニア問題を一人で取材することは自分で選んだ道でありますが、それも多くの方から取材費カンパというご支援をいただいたからです。とはいえ、2022年末にその資金プールがついに底をつき、東京都や神奈川県以外の遠方への取材を控えざるを得なくなってしまいました。今一度、ご支援を賜りたくここにそのお願いをする次第です。ご支援者には、今年には発行予定のリニア単行本を謹呈させていただきます。私の銀行口座は「みずほ銀行・虎ノ門支店・普通口座・1502881」です。また100円からのご寄付が可能なhttps://ofuse.me/koara89/letter もご利用ください。私と面識のない方は、お礼をしたいので、ご支援の際に、できればお名前を連絡先を教えていただければ幸いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。  樫田拝
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私が原発を止めた理由
3.11以後の原発裁判において、初めて運転差し止めを命じた判決を出した裁判長が、退官後の今、なぜあの判決を出したのか、なぜほかの裁判では住民は敗訴するのかを説明している。
超電導リニアの不都合な真実
リニア中央新幹線の問題点を『技術的』な側面から、極めて客観的に情報を分析しその発信に努め、リニアの実現性には課題ありと論じている。難しい専門用語を極力排し、読み易さにもこだわった良書。
リニア新幹線 巨大プロジェクトの「真実」
リニア中央新幹線を巡る問題を語らせては、その理論に一部のすきも見せない橋山禮治郎氏の第2弾。このままでは,リニア計画とJR東海という会社は共倒れになることを、感情ではなく、豊富なデータを駆使して予測している。必読の書。
自爆営業
国会で問題にされても一向に改まらない郵便局の自爆営業。年賀状1万枚、かもめーる700枚、ふるさと小包便30個等々のノルマはほぼ達成不可能だから、ほとんどの職員が自腹で買い取る。昇進をちらつかせるパワハラや機能しない労組。いったい何がどうなっているのか?他業種の自腹買取も描いている。
アキモトのパンの缶詰12缶セット
スペースシャトルの宇宙食にもなった。保存期間は3年。しっとりおいしい奇跡の缶詰。24缶セットもある。
共通番号の危険な使われ方
今年10月に全国民に通知され、来年1月から運用が始まるマイナンバーという名の国民背番号制度。その危険性を日本一解かり易く解説した書。著者の一人の白石孝さんは全国での講演と国会議員へのアドバイスと飛び回っている。
マグネシウム文明論
日本にも100%自給できるエネルギー源がある。海に溶けているマグネシウムだ。海水からローテクでマグネシウムを取り出し、リチウムイオン電池の10倍ももつマグネシウム電池を使えば、スマホは一か月もつし、電気自動車も1000キロ走る。公害を起こさないリサイクルシステムも矢部氏は考えている。脱原発派は必見だ。