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樫田秀樹

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●スーパー堤防裁判。国が被告となる

 2月25日、スーパー堤防関連で、住民が「国」を訴えた初の裁判が開廷されました。

 昨年(2014年)12月6日、かつて93世帯あった東京都江戸川区北小岩一丁目の東部地区は無人地帯となりました。
 国のスーパー堤防事業で造成される幅150メートルもの堤防造成と、その堤防の上で江戸川区が区画整理事業を行うからとのことで、住民に立ち退きを要請したことで、一つのコミュニティが消滅したのです。

かつては住宅地だった←14年11月上旬。最後まで立退きに抵抗していた家族が引っ越す。

 その事業推進に納得できない住民はこれまで2回、江戸川区を東京地裁に提訴してきましたが、「スーパー堤防事業差し止め」を求めた最初の裁判は地裁でも高裁でも敗訴。「区画整理事業に違法性はない。スーパー堤防計画を変更できるのは区ではなく国である」との理由で敗訴。

 ならばと、スーパー堤防の本丸である国を訴えたのが今回の裁判です。
 提訴は昨年11月12日ですから、3カ月以上たっての初公判となります。
 東京地裁では最大の103号法廷は98席が満席となりました。


●宮坂さんの意見陳述

 裁判はまず、最後まで立ち退きを拒否していた一人、宮坂健司さんの意見陳述で始まりました。

「北小岩には私の祖父の時代から住んでいる。あそこを終の棲家と思っていたから、2世帯住宅を建てた。あそこは住民同士でおすそわけもあり、住みやすかった。ところがスーパー堤防計画が持ち上がってから、住民の人生設計が狂い、住民同士でも意見がぶつかりコミュニティが破壊された。今では、盛り土工事が始まり、建物一つない。あの場所にスーパー堤防を作る理由はない。カスリーン台風のときでさえ水害にあったことはなく、事業仕分けでは無駄な事業と判定された。
 このような無駄な公共事業で2回も移転を強要し、国はなぜスーパー堤防が必要かの説明を一度もしていない。区は『スーパー堤防ができるので出ていかねばならない』と説明した。そのために、住み慣れた家を壊して移転した。しかし区は『スーパー堤防と区画整理事業は関係ない』と説明する。怒りを通り越してあきれる。私たちは移転を強いられ、あの土地の代わりようを見て、心身疲弊してしまった。でも、行政の横暴を野放しにはできず、司法の公正・適切な判断を仰ぎたく提訴したのです」


●法的権限はあるのか!?

 ここで原告側の小島弁護士が補足説明的な主張を展開しました。

「宮坂さんの妻Mさんは、あの土地に住んで以来、自宅で映画上映会をするなど、地域コミュニティ活動を実現してきた。ところがスーパー堤防で一変した。Mさんはスーパー堤防に携わる区職員の度重なる訪問でうつ病になってしまった。Mさんは俳句の雑誌も発行したり、俳句を通しての情操教育もしていたのに、できなくなったのです。Mさんは現在も神経科に通院して睡眠薬で眠ります。同じ住民のS夫妻(90歳前後)も積極的に散歩や挨拶をしていたが、この夫妻も区職員の訪問を恐怖に感じ、家に閉じこもるようになってしまった。そういうなか、2012年12月16日の火災で、夫が亡くなってしまった。
 先行買収に応じて2010年1月25日に多摩地区に移転した0さん(84歳男性)は、地理が判らず買い物に苦労されている。『知人がいない』と寂しさを訴えています」

 スーパー堤防事業がいかに、一人一人の人生と心を壊したかを訴えたのです。

 さて、この日の小島弁護士の主張の目玉は、なんといっても「なぜ法的権限もないのに、盛り土工事を実施できるのか?」ということです。

 スーパー堤防は、簡単に言えば、「事業実施前に、住民に『移転を要請し承諾を得てから』盛り土工事を行わねばなりません。ところが、本件においては、誰一人として国からそのような要請を受けていないのです。

 93世帯を立ち退かせたのは、「区画整理事業をする」と説明してきた江戸川区です。

「そもそも法的権限がないではないですか。すでにスーパー堤防工事は実施段階にあるのに、その法的根拠が一切示されていません。地権者の同意なく移転させる権限はないのです。どの法的権限に基づいたのかを国は主張していない。この場で回答してほしい

被告(国)「おって回答いたします」

原告(福田健治弁護士)「なぜ今回答できないのですか? 訴状を出してもう、3カ月もたっています」

裁判長「その書面提出はいつになりますか?」

国「年度末を挟むので、早くても5月1日」(傍聴席から「2カ月以上もかかるの…」との声が漏れる)

小島「それは、今行っている工事を止めてならわかるが、工事をやりながら5月まではおかしい」

福田「私有地に居座って工事を行っているのですよ!」

 結局、国は工事を止めるつもりはなく、昨年11月12日の訴状提出から半年もたつ今年5月20日の11時半から同じ103号法廷で2回目の公判が行われることになりました。


●補足説明

 ここで簡単な補足説明です。
 住民は確かに立ち退き、今、北小岩1丁目の東部地区には家一軒もありません。住民は、家の解体を了解して立ち退いたのですが、立ち退いたと言っても、土地の権利はまだあるのです。つまり、弁護団が「国は『私有地』に居座って工事を行っている」と主張したのは、いまだに住民は地主であるからです。
 これは、スーパー堤防の上に江戸川区が区画整理事業で新たな街を造成したら、元の住民は戻ってくることを想定しているためです。

 しかし、80代や90代の高齢者がわずか数年間の間に2度も引っ越すでしょうか?
 そんな人はほとんどいません。

 ただ、傍から見れば、住民は「スーパー堤防事業」のために立ち退いたのではと解釈する人もいるでしょうが、前述のように、国は住民から土地使用の承諾を得ていません。住民が出ていったのは、区の区画整理事業における「仮換地(かりかんち)指定」があったから
 これは、
 
 あなたが住宅地として使用している土地は「区画整理事業」でもうすぐ使えなくなるが、工事完了後には、同じ場所で、区画整理された土地を使用できるようになりますよとの通知。

 仮換地指定を使えるのは、区画整理事業だけであり、他の工事への適用はできません。
 つまり、仮換地指定を使ったということは、住民の立ち退きはあくまでも区画整理事業のなかでの手続きだったということになります。


●報告集会
 裁判後、参議院議員会館で報告集会がありました。私は次の用事があったので、途中までしか参加できなかったのですが、印象的だったのが、意見陳述を行った宮坂さんの言葉でした。

「今、千葉県の八千代市に住んでいます。今も、旧家で歩いている夢を見ます。両親を見送ったのも辛かったが、今も辛いです。この事業をやらせてはいけません」
 
 その後、短時間ですが、宮坂さんのビデオ撮影をしました。簡単に編集したものをここにアップします。

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 それにしても、防災というできるだけ短期間での成果が期待される分野において、いったい何百年かかるかわからない事業を本気でやるのでしょうか? 国も江戸川区も。

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2015/03/04 18:39 スーパー堤防 TB(0) コメント(0)
●町が消える

 11月17日。朝9時に北小岩1丁目に着いた時には、既に、高橋喜子さん(84)の自宅前には引っ越し会社のトラックが2台止まっていました。

かつては住宅地だった ← 奥の右側が喜子さんの自宅。その左隣が長男、新一さんの自宅。新一さん宅も21日に引っ越す。

 半世紀近くも暮らしたこの土地を、喜子さんはいよいよ離れるのです。片づけの合間に喜子さんは話してくれました。
「悔しいです。ここが終の棲家と思っていました。1年半前にリフォームもしたばかりなんですよ」
 かつて90世帯が暮らしていた北小岩1丁目の東部地区(18班)。それが今では3世帯になり、17日に喜子さん、21日には隣に住む長男の新一さんが引っ越していきます。残る1軒も今月中には立ち退くと言われています。

高橋さん親子 ←高橋さん親子


●本当に200年もかかるこの事業が必要なのか?

 90世帯があったころは、当たり前の近所付き合いがあった。
 しかし、昨年12月に江戸川区が各戸に「除却通知」(土地を更地にして立ち退くこと)を出してから、多くの人が立ち退きました。
 最後まで残っていた6世帯も、もし行政代執行を受けてしまえば、移転費用も新たな住居の購入もしくは賃貸費用もすべて自前となるため、なくなく立ち退きに同意したのです。
 
 この事業の取り消しを求めて裁判で闘っている新一さんもじつにやるせなさそうでした。
「私たちに与えられた選択肢は二つだけ。行政代執行を受け入れても戦い抜くか。ここを出ていくかです。私は全然納得していないですよ」

解体される家 ←裁判でともに闘ってきた宮坂さんも、一足先に立ち退いた。解体される宮坂さん宅。

 それにしても、なぜ、江戸川区は、区で一番標高が高く、少なくとも過去100年以上も洪水がないこの土地を狙ったのか?

「それはじつに簡単な話です。区は、区内の町会長にこの事業をやらせてもらえないかを打診したんです。でも多くの町会長は、そんなのは到底受け入れられないと拒否しました。受け入れたのが、我が町会長です。噂では、自分の家が古いので、その建て替えにちょうどいいと思ったので、本事業を受け入れ、みんなを巻き込んだそうです」

●「次の裁判が本丸です」

 11月12日。新一さんたちは、3つ目の裁判を提訴。今度の被告は国です。
 というのは、これまでの裁判は区を訴えていましたが、裁判所は「江戸川区で行われているのは区画整理事業であり、スーパー堤防事業ではない」として、新一さんたちの訴えに耳を傾けようとしませんでした。
 確かに、今、江戸川区で行われているのは、国のスーパー堤防事業と区の区画整理事業の共同事業です。
 そうであるなら、スーパー堤防を推進する本丸である国を打ってようとの動きになるのは自然なことでした。

「そもそも、スーパー堤防事業を行うには、住民の同意を得てから行うことになっています。だが、私たちはそんな同意はしていません。今度の裁判の争点はそこになります。自分たちだけの裁判ではない。今後も区は区内の違う場所でこれを行うだろうから、同じような目に遭う人がもう出ないように私たちは闘うんです」

スーパー堤防記者会見 ←11月12日。東京地裁内での記者クラブでの記者会見。真ん中が高橋新一さん。

 200年と2兆7000億円をかける事業を江戸川区がどこまで本気でやるのかは判りませんが、当面、注視しなければならない問題です。

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2014/11/19 02:22 スーパー堤防 TB(0) コメント(0)
●一つの市街地が消滅する

 スーパー堤防が予定されている東京都の江戸川区北小岩1丁目の東部。
 この地区が来週消滅します。

 スーパー堤防については、本ブログでも何度も書いていますが、「納得できない」と最後まで移転を拒否していた4軒のうち3軒も来週、移転することになりました(最後の1軒の動向は不明)。
 
地域がなくなった ← 今年7月での北小岩1丁目。かつて90世帯あった地域に残るは5世帯だけだった。

 北小岩1丁目の住民は今、2つの裁判を起こしていますが、そのうち、事業停止を求めて江戸川区を訴えた裁判では、先月の10月2日、高裁で敗訴となりました。
 これにより、ますます行政代執行(強制立ち退き)の可能性が高まったことで移転を決めたのです。
 というのは、もし自分の信念を貫くことで、行政代執行を受けて家屋が取り壊された場合、新たな移転先に行くための、引っ越し費用、新たな住居の購入や家賃などはすべて本人負担になるからです。
 一方で、立ち退きを受け入れた場合は、事前の家屋調査に基づいた算定額での補償金が支払われます。
 これは極めて大きな違いです。

 またこの事業においては、国がスーパー堤防のための盛り土をしたあと、区が土地区画整理事業を行うわけで、概ねそれが3年後に完成したときには、出ていった住民には戻ってきてもいいというのが区の触れ込みです。 

 来週引っ越す3軒のうち、2軒は親子です。一人が84歳になられたYさん(女性)。
 長年住み慣れた土地から出ていかざるを得ないのは無念であることでしょう。Yさんはこう語ってくれましたーー「84歳の私が、他の土地で3年暮らし、それからまた戻ってくるなんてとてもでないけどできるものではありません。江戸川区はこの計画を『町興し』といいますが、私からすれば『街壊し』です」
 その息子さんの高橋新一さんは、裁判の原告団長でもある人。移転は泣く泣く受け入れたと語ります。

●3度目の裁判へ

 ただし、高橋さんにとっては、これで闘いが終わったわけではありません。11月12日、高橋さんたちは3度目の提訴を決めました。被告は国。
「江戸川区は今、北小岩1丁目から南に1キロの篠崎地区で土地買収を進めています。つまり、今狙われているのは篠崎。そして、それをやがて区内のあちこちで展開することでしょう。そこに住む住民が、私たちのような目に遭ってはいけないことです。それを食い止めるためにも、私たちは裁判を決めました」

 引っ越しの様子などは、またお知らせしたく思います。


●リニアではどうなる?

 現在、スーパー堤防と並んで、多くの地権者との交渉を余儀なくされる事業と言えば、リニア中央新幹線になります。先日の新聞では、その数5000人と報道されています。
 もし、たった一人でも最後まで立ち退きを拒否すれば、リニアは工事が遅れ、完成することがなくなります。

 しかし、前回のブログでも書いたように、ちょうど家の建て替えをしたいがお金がない人、この際、息子や娘の近くで住みたいと思う人、借金がある人などは、立ち退きに応じます。
 そして、最後まで立退きに抗う人には、もしかしたら、行政代執行という、家屋の強制解体が待っているかもしれません。この処分を受けた場合は、新しい移転先への引っ越し代や住居の購入費や家賃はいっさい出ません。

 ただし、これまでの日本の歴史を振り返った時、行政代執行はある一地点で行使されたことがほとんどであり、リニアの場合は、1都6県にまたがる多数の自治体でほぼ同時期に行われる可能性があるという点で特異性があります。
 
 リニアでは、本当に行政代執行を行使するのかは何とも分かりません。行政代執行を担当するのはJR東海ではなく、それぞれの自治体だから、本当に住民を苦しめる処分を行使するとすれば、それは自治体の、それを担当した職員のトラウマになることでしょう。
 しかし、この伝家の宝刀を振りかざせば、その行使前にやむなく立ち退きを受け入れる住民がいるであろうことも、今回のスーパー堤防の一件で垣間見たような気がします。

 住民が幸せになるために、金融、運輸、役所がある。しかし、今、この国では住民を不幸せにして巨大インフラを作ることが優先されている。私たちはこれをもっと真剣に考える必要があるように思います。

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2014/11/15 21:04 スーパー堤防 TB(0) コメント(0)
●強制解体始まる

 前回のブログでお知らせした江戸川区北小岩の家屋の強制解体ですが、予定通り、7月5日朝9時から行われました。
 今回対象となったのは、様々な事情で人が住んでいない家屋。無人だから、区にとってもやりやすかったのかもしれませんが、自分の近所で行われる強制解体に立ち退きを拒否している他の5軒の方々は、恐ろしさとやるせなさを覚えたはずです。
 
 朝9時ころには、住民、支援団体、江戸川区議会議員、弁護士などざっと50人くらいは集まり、主だったメディアも取材に訪れていました。

 とはいえ、この日は解体というよりも足場を組み、家の三方を飛散防止シートで囲み、瓦屋根に1m四方くらいの穴を開けて終了です。

 堤防に集まった住民や支援団体は反対の横断幕を掲げ、次々とアピールを展開。
「ここは江戸川区で一番(標高が)高いところ。かつて洪水に遭ったことはない。何のためにスーパー堤防が必要なのか」
「江戸川区は納得のいく説明を果たしていない」
「一人暮らしの高齢者がここを出て、どうやって生活しろというのか」
「こんなことを強行すれば、江戸川区は住民からの信頼を失うことになる」

 まったくその通りだと思います。写真はクリックで拡大します。途中でサムネイルのサイズを変更したため、サムネイル画像が粗くなっていますが、クリックすれば鮮明です。

スーパー堤防反対横断幕1

スーパー堤防反対横断幕2

住民3人 ← 立ち退きを拒否している住民3人。真ん中の高橋喜子さん(84)は「高齢の私がここを出てどこに行けというのでしょうか」と不安を隠さない。

●続報。7月7日

 朝9時半に現場に到着すると、メディア数社と支援団体や住民が20人弱ほど集まっていました。
 すでに屋根瓦はすべて剥がされていました。
 私はこの日、用事があったため、10時半までしかいれなかったのですが、10時15分頃、パワーショベルが動き出し、2階部分の窓枠やひさしなどを次々と剥がし始めました。

 ただ、10時過ぎには、支援団体や住民はあらかた引き上げていたので、これを見たのは、メディア数社だけ。

 以下、写真を置きます。クリックで拡大します。

強制解体1

強制解体2

強制解体3

 私は現場を午前10時半にあとにしたので、おそらく、7月7日の夕方までには大半が解体されたかと思います。

 住民のなかには、立ち退きや話し合いに応じず、『催告書』『再催告書』、そして『再々催告書』を区から送られた人もいます。
  この内容は恐ろしい。7月11日までに除却(自主的な家屋の取り壊し)を行わなければ、区が強制解体を行うと通知しているのです。補償金すら提示されていない。
 いったい、このやり方が許されるのか。その再々催告書が以下の写真です。

再々催告書


●次なる現場は玉突き立ち退き

 私は、7月4日の午前中、北小岩から南に1キロ下った篠崎地区のスーパー堤防の予定地を見てきました。北小岩の次に狙われるのがここです。これまでに200世帯以上がこの土地を離れ、すでに空地だらけになっていました。
 
玉突き立ち退き予定地2 ← あちこちが空き地になった。写真右奥に妙勝寺の本堂の屋根が見える。

 北小岩との共通点は、この計画が持ち上がった当初は、住民の9割がたが「とんでもないことだ」と計画に反対していたことです。
 ところが、区の個別訪問により、ある人はその補償条件に惹かれて土地と家屋を売ることに同意し、ある人は
「高齢の私が国に抗えるものではない」と繰り返される区の個別訪問に折れ、地域は少しずつ歯抜け状態になっていきました。
 そして、商売をしている人は、住民がいなくなることで売り上げが落ち「ここでは生きていけない」と苦渋の判断で違う土地への移転を決意しました。

 現在、篠崎で最後まで反対すると決めているのはほんの数軒だけになりましたが、区にとって最大のハードルであるのが「妙勝寺」です。敷地面積、約1000坪。檀家も数百人といる。
 ここが「スーパー堤防には大義がない。納得ができない。動かない」と反対の意を示しています。

妙勝寺山門

先代の住職の渡辺清明氏(2年前に逝去。享年71)は、この計画に大反対で、説明に訪れていた区の職員に対して常に「来るのなら、この計画が中止になったとの報告をもってこい!」と怒鳴り倒していたそうです。
 現代は、先代の妻であるMさんがやはり反対の意を貫いておられます。

「先代は常々、『公共事業は人を幸せにするためにやるものだ』が口癖でした。ところが、このスーパー堤防は、地域を壊すだけです。この地域は、子供たちが空き缶蹴りをして遊ぶなど、とてものびのびできる場所でした。しかも、ここで洪水が溢れたことは、少なくとも妙勝寺がこの地に移転した100年前からはただの一度もありません。そもそも0メートル地帯でもありません。区の職員は何回かここに来て説明をしますが、私はいつも『そちら様の言うことは分かりました。私どもはこう思っています』と言うだけの、平行線を辿っています」

 区は、5年以内に、寺に道路一本を隔てた場所に移るよう要請しています。
 しかし、それは、750年の歴史を有し、100年前に建て替えたときの本堂や施設を壊すことに他なりません。地面に敷き詰めた石畳もはがし、お墓も撤去して移すとの説明を寺は受けています。
 本堂は、材木の一本一本を外して、移転地で組み立てるなどはまず無理な話なので、移転すると妙勝寺はコンクリート製のお寺と様変わりします。

妙勝寺本堂

 ところが、その場合、とんでもない問題が発生します。
 
 移設先とされる場所には戸建て住宅やアパートなどがある。
 つまり、区は、これら戸建て住宅やアパートの所有者に対して、「お寺が移ってくるから、立ち退いてほしい」と説明しているのです。玉突き立ち退きです。

玉突き立ち退き予定地1 ← 写真左奥に妙勝寺の本堂の屋根が見える。区が要請している寺の移転地から撮影。

スーパー堤防反対のぼり篠崎1

 これら戸建てやアパートの所有者が納得するはずがなく、今、周囲では「スーパー堤防建設反対」ののぼりが何本もたっています。

 もちろん、妙勝寺はこの計画を決して受け入れません。
 北小岩もそうですが、「納得できない!」とする人たちが最後の最後まで移転を拒否した場合に何が起こるのでしょう?

 成田空港を建設するときは、最後まで移転を拒否する農民には、機動隊が出動し、住民を羽交い絞めにして家屋から引きずり出し、家具を持ち出し、パワーショベルで家屋を解体するという暴挙を展開しました。しかし、そのやり方は、のち、国からの謝罪があったはずです。つまり、法律では規定はされているが、使ってはいけない禁じ手なのです。
 それを、この江戸川区でやるかどうかです。

 スーパー堤防にはおかしなことがたくさんありますが、それはまた書きます。


●軽い後悔

 それにしてもと思うのは、私がこの件で取材を始めたのは今年に入ってからですが、じつに遅かった取材開始でした。
 リニア中央新幹線は初期から関わり、それなりの情報を発信できるに至っておりますが、これほどの大義のない巨大事業に、ジャーナリストとして関わってこなかったことに軽い後悔を覚えています。

 ただ、江戸川区は、区内の荒川と江戸川の全沿川をスーパー堤防にすると計画しているだけに、これから住民への説明を始める場所はまだまだあるわけで、今からでも腰を据えて取り組みたいと思います。

 私が今、取り組んでいる、取り組もうとしているのは、 「リニア」と「スーパー堤防」と「新国立競技場建設による高齢者の立ち退き」。これ3つを同時並行にするの時間的にも予算的にもきつい。だが頑張るしかないですね。

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2014/07/06 13:29 スーパー堤防 TB(0) コメント(0)
スーパー堤防。本当にやるのか、強制解体!

 この週末、東京都の住宅地である一軒の家が強制解体されます。

 江戸川区の北小岩。
 ここで計画されているのは「スーパー堤防」。それを造成するために、立ち退きに反対している最後の数軒のうちの1軒から、家具や家電、書籍などの「動産」を外に出し、空になったところでその家屋をパワーショベルなどで壊すのです。

解体される家 ← 土曜日に解体される家。囲いがされている。周囲の住宅地は空き地と化している。クリックで拡大。

 スーパー堤防とは、堤防の幅が、堤防の高さの30倍程度(最大で約300メートル)もある巨大堤防。
 洪水の時でも決壊しないのがウリで、国土交通省が首都圏と近畿圏にある6河川の873Kmで1987年から建築を開始しましたが、これまでにできたのは50キロだけ(その多くは企画に満たないものだった)。このペースだと完成に400年と12兆円がかかることから、2010年、民主党政権での「事業仕分け」で「廃止」が決まりました。
 だが、翌年、国交省は計画を120キロに縮小させて事業を復活。
 江戸川区はこのうち、江戸川と荒川の合わせて44キロをスーパー堤防にすると策定。しかし、江戸川区だけでも200年と2兆7000億円がかかるというどう考えても非現実的な計画です。

 大まかな経緯は省略しますが、幅300メートルもの堤防を作ろうと思えば、当然、今そこに住んでいる住民たちには立ち退いてもらうことになります。
 実際、北小岩では一つの地域の90世帯のほとんどが立ち退きました。それも昨年11月に「除却通知」(立ち退き要請)という江戸川区の通知が来てから、その圧力に驚いた住民が恐れるように移転をしたのです。

除却通知

地域がなくなった ← そして地域がなくなった

 江戸川区は数年後にスーパー堤防ができれば、立ち退いた住民は戻ってこれると説明します。
 つまり、住民はわずか数年の間に2度の引っ越しをすることになります。しかも、戻ってきても、区からもらった補償金だけでは家を建て直せるだけのお金があるかもわかりません。

高齢女性の訴え ← 高齢女性の訴え。この計画は「街づくりではなく町こわしです」

 この計画に対して「十分な説明も受けていないし、納得もできない」と立ち退きを拒否しているのは6世帯

 今回、江戸川区は、このうちの1軒に対して「強制解体」を通知したのです。

 私はもちろん現地に行きますが、今の日本で本当にこんな横暴的な手段を行政が実施するのかです。してしまえば、最後、その行政は住民には決して信用してもらえません。

 以下に、今年、スーパー堤防について書いた短い記事を置きます。
 週刊SPA!に書いた記事です。

週刊SPA記事1

週刊SPA記事2

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2014/07/03 17:24 スーパー堤防 TB(0) コメント(0)
取材のカンパをお願いいたします
1都6県にまたがるリニア問題を一人で取材することは自分で選んだ道でありますが、それも多くの方から取材費カンパというご支援をいただいたからです。とはいえ、2022年末にその資金プールがついに底をつき、東京都や神奈川県以外の遠方への取材を控えざるを得なくなってしまいました。今一度、ご支援を賜りたくここにそのお願いをする次第です。ご支援者には、今年には発行予定のリニア単行本を謹呈させていただきます。私の銀行口座は「みずほ銀行・虎ノ門支店・普通口座・1502881」です。また100円からのご寄付が可能なhttps://ofuse.me/koara89/letter もご利用ください。私と面識のない方は、お礼をしたいので、ご支援の際に、できればお名前を連絡先を教えていただければ幸いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。  樫田拝
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私が原発を止めた理由
3.11以後の原発裁判において、初めて運転差し止めを命じた判決を出した裁判長が、退官後の今、なぜあの判決を出したのか、なぜほかの裁判では住民は敗訴するのかを説明している。
超電導リニアの不都合な真実
リニア中央新幹線の問題点を『技術的』な側面から、極めて客観的に情報を分析しその発信に努め、リニアの実現性には課題ありと論じている。難しい専門用語を極力排し、読み易さにもこだわった良書。
リニア新幹線 巨大プロジェクトの「真実」
リニア中央新幹線を巡る問題を語らせては、その理論に一部のすきも見せない橋山禮治郎氏の第2弾。このままでは,リニア計画とJR東海という会社は共倒れになることを、感情ではなく、豊富なデータを駆使して予測している。必読の書。
自爆営業
国会で問題にされても一向に改まらない郵便局の自爆営業。年賀状1万枚、かもめーる700枚、ふるさと小包便30個等々のノルマはほぼ達成不可能だから、ほとんどの職員が自腹で買い取る。昇進をちらつかせるパワハラや機能しない労組。いったい何がどうなっているのか?他業種の自腹買取も描いている。
アキモトのパンの缶詰12缶セット
スペースシャトルの宇宙食にもなった。保存期間は3年。しっとりおいしい奇跡の缶詰。24缶セットもある。
共通番号の危険な使われ方
今年10月に全国民に通知され、来年1月から運用が始まるマイナンバーという名の国民背番号制度。その危険性を日本一解かり易く解説した書。著者の一人の白石孝さんは全国での講演と国会議員へのアドバイスと飛び回っている。
マグネシウム文明論
日本にも100%自給できるエネルギー源がある。海に溶けているマグネシウムだ。海水からローテクでマグネシウムを取り出し、リチウムイオン電池の10倍ももつマグネシウム電池を使えば、スマホは一か月もつし、電気自動車も1000キロ走る。公害を起こさないリサイクルシステムも矢部氏は考えている。脱原発派は必見だ。