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樫田秀樹

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 月刊ZAITEN2月号に「JR東海・葛西敬之名誉会長 国民に禍為すリニアの暴走」との18ページの特集記事が掲載。
2002ZAITEN表紙 2002ZAITEN目次

 この目次を見てもわかるように、相当に気合いの入った特集だ。
 もし私が独自に企画するなら、ここまで気合いの入った記事の組み立てはさすがに躊躇すると思う。逆に言えば、ZAITENの「JR東海問題取材班」というチームだから可能になった特集だが、JR東海がいい悪いではなく、実際に静岡県や各県の住民とがJR東海と対峙しているのは事実なのだから、それを報道しない報道界にあって、ガツンとそれをやり切ったことには敬意を表したい。
 
 ちなみに、私も6ページをいただき、「静岡県VS JR東海」と「山梨県住民がJR東海を訴えた裁判」、そして「リニア工事での事故事例」について寄稿した。
 まだ同誌は発売中なので、私の記事、最初の1ページだけ公開します。

2002ZAITEN記事1ページ

ZAITEN2月号


リニア新幹線が不可能な7つの理由



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●リニア裁判に、2020年3月30日に「中間判決」が出る。
 738人の原告が減らされる? それとも全員が「原告適格なし」と判断されて、中間ではなく「終結判決」として、4年も闘ってきた原告は門前払いをくらう?

191220裁判後集会←裁判後の報告集会。

●リニア裁判とは?
 JR東海が、2027年に品川(東京都)と名古屋を40分で結ぶと計画する「リニア中央新幹線」。
 だが、ルートの86%が地下トンネルということもあり、地下水脈の長区間における破壊、東京ドーム50杯分もの膨大な残土の処分先が未定なこと、約5000件と予想されている土地収用等々、予想される、あるいは進行中の問題は深刻だ。
 リニア計画は2014年10月に国土交通省が事業認可したが、2016年5月、738人の原告がその事業認可取り消しを求めて、国交省を相手取っての行政訴訟を提訴した。

●「中間判決を出します」
 これまで行われた口頭弁論は17回。
 主に、リニアが通る1都6県の住民から「どういう被害が起こっていて、また起こるのか」という意見陳述に時間が費やされたが、2020年頃からは、原告、被告からも証人尋問が行われると予想されている。

 だが、2019年12月20日の第17回口頭弁論において、古田孝夫裁判長は「2020年3月30日に『中間判決』を出す」と明言した。

 中間判決?

 これは、簡単に言えば、738人の原告のうち、原告として的確な人を裁判所が指定する・・ということだ。

191220関島弁護士←関島弁護士

 原告側の関島弁護士は、原告には4つに分類されるという

1 リニアに乗車する人たち。つまり日本国民全員。
2 南アルプスの自然を守りたい人たち(リニアは南アルプスに史上初めてトンネルを掘る)
3 ルート周辺に不動産を有している人たち。収用の可能性がある人たち。
4 ルート周辺でリニアの騒音や日照被害、また、残土運搬車による騒音や振動などの被害を被る人たち。

 関島弁護士は、『1』と『2』は外されるかもしれないという。
 また、裁判後の食事の席で、関島弁護士は「もしかしたら、全部外される可能性もないわけではない」と言った。

●中間判決の悪しき前例。全員が「原告適格なし」で門前払いをくらった祝島の上関原発訴訟。

 前例がある。

 中部電力が計画する上関原発。この建設予定地近くの祝島では全村をあげての反対運動が30年近くも続いているが、2008年の10月と12月に、に111人(要確認)の原告が2つの裁判を起こした。
 だが、この裁判、今年(2019年1月)に「中間判決」が出され、なんと原告全員に「原告適格がない」と判断された。つまり、10年も闘ってきたのに、訴訟は「門前払い」で終わったのだ(その後、控訴する)。ネット記事はこちら。


●古田裁判長は異動前に判断を示したい?
 古田裁判長は、東京地裁に赴任してそろそろ4年。異動の時期である。
 で、この3月30日というのは、まさに、年度末。異動の直前だ。
 彼がこの日を指定したのには、自分の在籍中に、何かしらの形は残すとの判断があったに違いない。

 よく解釈すれば、後任の裁判官に釘を刺すため、原告適格者をきちんと指定して、裁判闘争を続ける。
 悪く解釈すれば、安倍政権の意向もかかっているこのリニア計画を推進するために、全員に「原告適格がない」と判断する。

 どっちだ。

 古田裁判長は、いい判決も出しているし、納得できない判決の両方を出している。ただし、資料は良く読み込む裁判長としての評価は高い。
 おそらく、弁護団も原告団も3月までに何かしらのアクションは起こすはずだ。

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●リニアのトンネル出口では飛行機のエンジン音を間近で聞く音が発生?
 120デシベル。
 この騒音は「会話が不可能」で「聴力機能に障害」を起こす。
 例えば、飛行機のエンジン近くがその騒音になる。
 だが、それを超える126デシベルの騒音が発生するとしたら、うるさいどころの話ではない。

デシベルとパスカルの対比表←「リオン株式会社」のHPから。単位の「μ」は「マイクロ」=「100万分の1」。下は20マイクロパスカルから、上は2千万マイクロパスカル=20パスカルまでイラストで説明している。それをデシベル換算しているので判り易い。

 11月19日。リニア工事差止裁判が終わってからの報告集会で、梶山弁護士は以下の報告をした(概要)。
「私も当初は見逃していた。JR東海の環境影響評価書の『微気圧波』の予測値は単位が『パスカル』だが、これを一般人にも判り易い『デシベル』に換算してみたらとんでもない値になることが判った」

 微気圧波は、列車が狭いトンネルに突入したことで生じる圧縮波がトンネル出口で圧力波として「ドン!」という衝撃音を起こす。
 JR東海は、微気圧波を減らすため、そのトンネル出口に長さ150mの「緩衝工」(筒状の建造物)を設置して、その緩衝工端部中心から『20m』『50m』『80m』離れた場所でどれくらいの微気圧波が出るかを以下のように予測している。

緩衝工のイメージ←JR東海が環境影響評価書などで示したトンネル出口の緩衝工のイメージ

JR東海の微気圧波の予測

●パスカルをデシベルに換算してみたら

 実際、私も評価書の「騒音」項目には目を通したが、この「パスカル」表示されている「微気圧波」項目は素通りをした。
 やはり騒音といえば「デシベル(db)」との先入観があったからだ。
 資料を読み返すと、2013年11月15日、山梨県でリニア計画を審議する「山梨県環境影響評価技術審議会」で、JR東海はこう説明した(要約)。
「微気圧がなぜdB 表示ではなくてPa表示なのかは、微気圧波はパルス状の圧力波であり、継続時間が極めて短い(「ドン!」)ことを勘案して、騒音レベルであるdB 表示よりも圧力レベルであるPa 表示とすることが適切とした」
 これに対して、福原博篤委員はこう述べている(要約)。
「民間の部分では、低周波音の評価値をdBで考えている。JR東海は絶対値をPaで表示しているが、それを、dBならこうですと示すことが普通の人たちがより理解できる」
 つまり、dbで示してほしいということだ。
 
 さて、梶山弁護士が今回の裁判で提出した資料の一つに、「日本の科学者」2014年10月号に掲載された庄司善哉・秋田大学名誉教授の「リニア中央新幹線の騒音問題」と題した論文がある。ここで庄司教授は、以下の算出をした。
 
20m → 42Pa → 126db
50m → 28Pa → 123db
80m → 18Pa → 119db


 これは、けっこう恐ろしい数字だ。いわゆるdbを用いた騒音では、新幹線沿線においても最大で75dbと定められていることを思えば、いかに一瞬の「ドン!」であっても、飛行機のエンジン音を間近で聞くような音が1日に128回(大阪開通時で1時間に片道8本運行予定。1日16時間運行で計算)あれば、住民には負担にならないか。

 と書いてはきたものの、私は科学者ではないので、とりあえず、この情報は「参考」ということで押さえておきたい。もう少し勉強して、どこまでが事実かを把握したい。なので、読者もこの情報を「参考」ということでとらえてください。

 今の私にその時間があるかだが、リニアルートでトンネル出口から80m以内にある家屋がどれほどあるかは調べてみたい。
 本当は、こういう調査こそ、それぞれの都県で頑張っている市民団体や住民団体にやってほしいのだが。

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●「どうしてですか!」

 11月19日。甲府地方裁判所。
 「どうしてですか!」
 法廷で梶山正三弁護士が裁判長に対して声を上げた。

梶山正三弁護士←梶山正三弁護士

 山梨県南アルプス市の住民8人が原告となり、JR東海を訴えた「リニア工事差止請求」裁判。
 8人はいずれもリニア中央新幹線の地上(高架)走行ルートから30メートル以内の至近距離に家屋や土地をもっている。つまり全員が同じような問題に対峙する。
 ごくごく簡単に書けば、
★時速500Kmの超高速が引き起こす騒音が朝から真夜中まで続く。
★ルートの北側の家屋なら、リニアの高架(高さ30メートル)が作る日陰で暮らすことになる。
★この騒音と日照問題で、8人の不動産は価値が下落し、引っ越そうにも家や土地が売れない。

原告8人のうちの7人←裁判後の報告集会。原告8人のうち7人が参加した。

 これらの問題については、こちらの記事こちらの記事に書いているが、 11月19日、甲府地裁で8人のうち3人がこのことを意見陳述。そのあとで、梶山弁護士が前々から裁判所に要請していた、裁判官による「現地検証」を「お願いしたい」と鈴木順子裁判長に尋ねた。すると鈴木裁判長は「合議をした結果、現時点で検証をすることはありません」と答えた。

「どうしてですか!」
「まずは主張をすべて出すのが先です」
「現地を見た方がその主張がわかるのです。見る方が先です」
「この時点では検証はしません」
「それ、おかしいじゃないですか。現地を見ないと実感ができません。文書だけで判断はできないです」
「それより先に主張を整理してください」


●「リニア建造物がない状況では検証できません」「え~!」


 と、ここで鈴木裁判長は被告であるJR東海の代理人(弁護士)に「被告は検証についてはどう考えますか?」と話を振った。すると、被告はこう発言したのだ。
「建造物がない状況なので、検証はできません」
 とたんに傍聴席から「え~!」とどよめきが起きた。
 リニア新幹線の工事を差し止めるための裁判において、JR東海側は「リニアの施設が完成してからでないと検証できない」と言ったのだ。
 傍聴者の」一人が呟いたーー「裁判で争っているとはいえ、あの理屈で来るとは思わなかった。すげえ会社だな…」

 現場検証の要請はこの日初めて要請したのではなく、裁判が始まった当初からの要請だった。
 加えて、ただの要請ではなく、8人の原告の現場を回るための綿密なスケジュールも示していた。

検証指示説明書←検証指示説明書の一部抜粋

 ただし、このように現場検証をしない裁判官はどちらかというと多数派だ。
 簡単に言えば、やる気がないのかもしれない。
 鈴木裁判長は「主張がすべて出すのが先」と言ったが、これは「主張が出そろえば現場検証する」と解釈できないこともないが、その望みは薄い。
 それにしても、梶山弁護士には気骨を感じる。

リニア新幹線が不可能な7つの理由
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●リニア計画路線の近くでは不動産価格が下落する?

 リニア計画路線の近くでは不動産価格が下落するのでは…とは、リニア計画に疑問を呈する市民団体や、実際にその計画路線のすぐ近くに住む住民が提起する事案だ。
 対して、JR東海は「不動産価格はその社会状況に応じて変化する。リニアが原因と特定できない」といった趣旨の説明を住民説明会で繰り返してきました。
 
 ただ、市民側にしてもJR東海側にしても、推測の域を出ない発言です。私にしても、実際に、リニアが近くを走ることで生じる日陰や騒音のために不動産が買われなくなったり、もしくはその場所に建つ自分の家が売りたくても価値が下落するために売れなくなる・・との事例を私は直接見たことはなかった。
 それを先日初めて、具体的な数値とともに確認した。

売れない不動産 山梨県その2


 山梨県南アルプス市。
 そこには地面に黄色い杭が打ってあった。
 JR東海の測量で、リニアの端を表す杭だ(ちなみに、中心線に打つ杭は赤い)。
 その杭からその空き地までは約35mから40mくらいか。
 空き地には「売地」と大きく書かれた看板が建っている。4区画ある土地のなかで南西の角なので、間違いなく売れる土地だ。
 実際、売れた。販売価格は72.6坪で800万円
 ところが、不動産業者と買主とが受領ローン手続きに入ったところで、東側にリニア中央新幹線のルートを示すポイント杭が打たれる。
 不動産業者のSさんによると「2,3年前ですが、ええ、本当にある日突然でした。それがリニアのための測量杭だと知ると、不動産業を営む以上は『重要説明事項』としてお客さんに説明をしなければなりません。すると、買主はとても驚いて、この売買はキャンセルとなりました」。
 その後も、南西角の土地に惹かれて引き合いは何件もあった。そのたびにSさんは「重要説明事項」として、リニアが走行すれば騒音が発生し、リニアルートの北側なので家屋が日陰になるかもしれず、南側の眺望がなくなる」と説明した。
 そして、いずれも契約不成立となる。
 Sさんは、この一等地の値段を下げた。坪約10万円を9万円、8万円、7万円と下げた。そして今、その土地は480万円にまで下落した。坪約6.6万円だ。それでも売れない。
 Sさんは「おそらく、どれだけ値を下げても、誰も買わないと思います」と諦めていた。

売れない不動産 山梨県その1←やはりリニアルートのすぐ近くにあった土地。草ボーボーになっている。誰も買おうとしない。近いうちに不動産業者に数字を確認したい。

 こういった具体的な数字はやはり説得力がある。
 おそらく、「売れない」ことに困っている不動産業者はまだまだいるはずなので、これからも機会があれば、その数字を拾っていきたい。もしリニア沿線で売れなくなった不動産情報があれば、是非お寄せ下さい。

リニア新幹線が不可能な7つの理由
←3刷決定!!


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リニア取材のカンパをお願いいたします
 リニア中央新幹線の取材範囲は、東京都から愛知県までと広範囲で、多大な取材経費を要することから、2018年後半に取材資金が底をつき、2020年に新たな単行本を出すことを目的に、2019年4月からクラウドファンディングでの取材資金を呼びかけさせていただきました。そして、多くの方からのご支援をいただくことができました。本当にありがとうございました。とはいえ、リニアの取材は来年も5年後も行うわけで、来春以降は、再び取材資金の確保に頭を悩ますことになりそうです。何度もクラウドファンディングは使えません。そこで、少額でもご支援をいただければと、ここにそのお願いをする次第です。額面に関わらず、ご支援に対しては、リニアについての単行本の送付や記事の案内などをさせていただきます。私の銀行口座は「みずほ銀行・虎ノ門支店・普通口座・1502881」です。今後とも応援をしていただければ幸いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。  樫田拝
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