取材しても、記事にできる情報は1割未満。しかし捨てた9割にも、伝えられるべきものがあります。ボツになった企画も数知れず。そんなネタを紹介します。なお、本ブログの文章と写真の無断転載はお断りします。ご利用希望者合はご一報下さい。
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リニア中央新幹線



 現在、8つの仕事を同時進行で進めているため、ここ1カ月間、ブログなどSNSを利用する時間がほとんどありませんでした。
 空いている時間を利用して、最小限でも書き留めなければならないことに絞って記します。

●100戸前後が立ち退く?
 4月29日、長野県飯田市に行きました。リニア中央新幹線計画も含め「立ち退き」問題についての講演を行うためです。
 私は土地収用問題の専門家ではありませんが、リニア計画の今後の大きな問題の一つに「立ち退き」、それも「強制立ち退き」が浮上すると読んでいることから、いろいろとデータも集め、リニアではない公共事業で実際に行われた行政代執行などについても取材したことがあり、リニア計画でも土地を取られまいと抗っている人たちが現れていることから、簡単な話をしてきました。

 私を招いてくれたのは市民団体「飯田リニアを考える会」ですが、この講演依頼を受けるにあたり、飯田市内に建設予定のリニア駅周辺での土地収用がどの程度進んでいるかを確認したいと思っていたところ、講演前のわずかな時間を割いていただき、考える会やその関係者らからいろいろとデータをいただくことができました。
 簡単な数字を出すと、

JR東海のリニア中央新幹線計画において、 
★リニア本線とリニア中間駅の建設工事で27戸と7事業所が、
★リニア中間駅の周辺開発事業で55戸と7事業所が、
 立ち退き予定
とされている。

 ということです。

リニア長野県駅と周辺開発予定地←ピンクで囲まれているのがリニア長野県駅の周辺開発予定地。その中で太く横切るピンクの線がリニア長野県駅。


●1日6800人利用の根拠は・・示されない。

 長野県第4の都市(人口約10万人)とはいえ、私の目から見れば、飯田市にはこれといった観光の目玉は少ない。一つ上げるとすれば、天竜峡の天竜下りくらいか。
 そういう場所でのリニア飯田駅に、長野県は一日6800人の利用があると想定しています。そのうちの4800人が旅行客で、リニア利用による県内での旅行消費額は1日あたりで約6800万円と推計。
 飯田市からは長野市も松本市も遠い。いったいどの観光資源にそれだけの金を落とすのかの詳細はそのうち県に問い合わせてみたいです。
 ただ、今年3月に飯田市リニア推進室の主催で住民説明会があったそうで、そこでは住民からこの一日6800人の根拠は何かとの質問が出されました。これに対して、出席していたJR東海は「私どもはどの駅に何人降りるか市に言ったことはない」(これはおそらく本当のことでしょう)
 そして飯田市は「長野県の指導で数字を出した」。県は「市に任せています」
 根拠が曖昧であることが露呈されたということです。

 最近になって、計画の曖昧さが徐々に知るようになったことで、リニア駅+リニア本線の建設工事で立ち退き対象となる27戸のうち23戸が自発的に学習会を開催しているようです。


●立ち退かない6人

 その27戸のうち、絶対に立ち退かないと決めているのは6軒です。
 この6軒は先祖代々の農家で土地も広いため、先祖からいただいた土地を簡単には渡せんと決めているようですが、周囲からは「お前たちはゴネ得しとるのか。リニアは飯田の発展に100年に一度の好機。お前たちはそれを潰すのか」との批判も浴びているようで、村八分を恐れてか、声一つ上げないでこの5年間耐えているのが現状のようです。
 ただし、この6人がまとまって意志を貫けば、リニア計画への相当なブレーキになるのは間違いのないところです。
 そのためにも必要なのは外部からの支援ですが、それについては後述します。
 
 じつは、私が立ち退きに関する話を聞いた家はその6軒の一つ、Kさんのお宅です。
 正確には、Kさんには大きな母屋がありますが、その近くにある離れの一軒家です。そこはリニア駅予定地から数十メートルしか離れていません。この離れはKさんの旦那さんが奥さんにその管理を任せていて、奥さんは「誰が出て行っても、私はここから動かない」と腹をくくっている人です。そして、飯田リニアを考える会などに、この離れを事務所代わりに使ってもいいと要望しております。
 
Kさん宅離れからリニア長野県駅予定地が見える←Kさんの離れの窓からは真ん前にリニア駅予定地が見える。人物は大坪さん。  リニア長野県駅予定地2←Kさん離れの外からリニア駅予定地を臨む。 ご覧のとおり、賑やかさとは無縁の場所。   リニア長野県駅予定地の中心杭←リニア駅予定地に打たれた中心杭  リニア長野県駅予定地の幅杭←同じ敷地での幅杭(計画本線の幅を示す杭。中心杭と向かい合うように2つ打たれる。

この立ち退きに関する説明をしてくれて、かつ、リニア駅+リニア路線、そして駅周辺開発事業などで立ち退くかもしれない家屋や土地の一つ一つを、今、丹念に写真撮影などで記録しているのが地元で長年「飯井生活と健康を守る会 生活相談所」の所長を務める大坪勇さん。
 大坪さんはまさしくKさん宅離れを事務所代わりとして「今からでも遅くはない。闘う気持ちをひとまとめにしたい」との覚悟で臨んでおります。ちなみに大坪さんは御年80歳。

リニア長野県駅と周辺開発予定地2←集会で現状を説明する大坪さん


●積極的な情報発信を
 私の講演の内容はここでは特に書き留めませんが、私が講演会の最後の方で話したのが「住民による情報発信」の必要性です。

 おそらく、リニア関係者でも、大坪さんの調べたデータを今回初めて知る方も多かったでしょう。
 ただ本来、それは「飯田リニアを考える会」など地元の市民団体が積極的に伝えるべきなのですが、このあたりのデジタル戦略が、リニアに関係する市民団体は概して弱い。これは課題です。

 市民団体の多くは「国やJR東海は私たちの疑問に答えてくれない。情報を出してくれない」と不平を露わにしますが、では、市民団体がが積極的に一般市民・国民に対して情報を発信しているのかと言えば、なかなか合格点をもらえる団体は少ないように思います。
 もちろん、地元でのチラシ配布や集会開催、機関誌発行などアナログの活動はとても大切ですが、インターネットという誰でも使える道具がある以上、それを活用しないのはもったいない。広がる情報も広がらない。
 ツイッターでも、ブログでも、ホームページでもいいのですが、「今」「地元で」「何が」起きているかを発信する作業は必須です。

 ただし、それを一市民団体だけに期待するのも無理があるかもしれません。
 
 今、第三者として、この都県を超えた情報共有に乗り出そうとするある組織もあるのですが、これについては、より具体的な構想がまとまってから、ここで宣伝しようと思います。

 ともあれ、今回は、あくまでも「飯田リニアを考える会」や大坪さんからの話を聞いただけなので、次回は、立ち退き拒否をする6軒の方々に直接話を聞きに行こうと考えております。

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●岐阜県のリニアルート、245Km地点での放射線測定

 愛知県の「春日井リニアを問う会」の川本正彦代表から、4月上旬に実施したという、リニアルートの245Km地点(品川駅から245Km)での放射線測定の結果が送られてきました。

 川本さんは、データに信頼性をもたせるために、この調査を過去何度と実施しております。また、岐阜県在住で核開発に反対する運動を展開する市民団体「多治見を放射能から守ろう!市民の会」の井上敏夫代表も、リニアルートが決定した2013年には早くも同地点で測定を行っています。

 その結果の概要を2年前、私が整理したのが以下の表です。単位は毎時マイクロシーベルト。
 使用した機器は、アメリカ製のInspector。地点②、③、④はウラン鉱床地帯です。

岐阜県245Km地点 3回測定

 2年前の測定を取材した時の記事はこちらをご覧ください


●今回の測定結果

 で、今年4月9日、川本さんは再度計測を実施しました。
 その結果は以下の通りです。
 ただし、今回はInspector機は使用しておりません。
 そこで、ルート上の値とウラン鉱床地帯上での値とを比較するために、2年前と今回とで使用した、Inspectorではない測定器の値も公開しております。

岐阜県245Km地点 180409測定
 
 これを見て分かるのは、Inspectorではない測定器でも、やはりルート上の値のほうがウラン鉱床地帯上の値よりも高いということです。
 
 じつは、ある情報ルートでは、岐阜県ではすでに「ウラン残土が出た」との話も私の元には届いておりますが、こういう2次情報、3次情報はすぐに信じることは避けます。
 でも、245Km地点の地下に「何かがある」との推察は外れてはいないと思います。何があるのか。
 これは、市民団体が心配しているだけではなく、岐阜県の有識者も心配していることです。

 それについては、『リニア、ウラン残土が出てきたらどうするのか? → 「出てくることを前提にしていません」』と題したブログで紹介しております。ご参照ください。
 
 JR東海、岐阜県、国には本気の調査を望むところです。
●事業認可後に行ったウラン分析のためのボーリング調査は1地点の2回のみ

 最後に、この岐阜県作成の図の説明を。

ウラン分析のボーリング 2016年7月公表01 ウラン分析のボーリング 2016年7月公表02

 上の図はJR東海がどこで、ウラン分析のためのボーリング調査を行ったかの図です。
 『拡大1』と『拡大2』とありますが、「拡大2」は、「拡大1」の図にある「約3Km」の左側に位置します。「拡大1」の図の「凡例」で覆われている箇所です。この「拡大2」に245Km地点があります。
 この図が2016年7月に公表されました。

ウラン分析のためのボーリング2017年6月公表

 この図は、2017年6月に公表。

 点線はリニアルート。
 この一帯で掘削工事で発生する残土は、拡大図にある「南垣外非常口」から排出されます。その非常口の掘削が始まっているのは(本線トンネルの掘削は3年後)、前回の本ブログで伝えた通りです。

 当初「リニアルートはウラン鉱床を外れている」と主張していたJR東海ですが、岐阜県環境影響審査会などの指摘も受けてか、ウラン鉱床ではないが地質が似ている地帯とのことで、「約3Km」の地点でのボーリング調査を実施ます。

 ところが、その調査結果を描いた「2017年6月」公表『ウラン鉱床に比較的近い地域及び地質が類似している地域における地質状況について(平成28年度調査分)』と、その前年の「2016年7月」公表前年に発表した同名の資料を見ると、以下のことがひも解けます。


★「3Km幅」において、ウラン分析をするボーリング調査は3カ所
★「3Km幅」外においては、ウラン分析をするボーリング調査は1カ所

これを時系列で整理すると

 ★2012年1月19日(検査のための試料採取日) ⑧地点(245km地点)
 ★2013年1月8日(分析する会社の試料受付日) ⑤地点(南垣外非常口に近い場所)
 ★2015年12月25日(試料採取日) ③地点(南垣内非常口かそれに非常に近い場所)
   (上記3地点の地点番号は「2016年7月」公表版による)
 ★2016年10月17日(試料採取日) ①地点(南垣内非常口かそれに非常に近い場所)
  (この地点番号は「2017年6月」公表版による)

 JR東海はこの地域で「11本のボーリング」を実施しておりますが、そのうち「ウラン分析をする」地点は3地点(4回)でしかありません。
 そして、最初の二つは、公にはリニアのルートが確定していない時期での調査です。
 
 つまり、2014年10月の事業認可後にJR東海がウラン分析のためのボーリング調査をしたのは2地点(ほぼ同地点)。

 これも以前ブログに書いたけど、思った以上に反響がなかったのが、JR東海がじつは2012年や2013年1月という、まだリニアルートが確定していない時点で、まさしく川本さんたちが測定した245Km地点や非常口予定地近くでボーリング調査を行っていたという事実です。記事はこちら

 なぜ、ルート確定前に、まさしく今の確定ルート上でのピンポイントの調査が可能なのか。
 そのなぞ解きをする時間はありませんが、2016年と17年に公表された報告書では、ウラン濃度は低いので問題なしとの報告が上がっています。
 だがそれならそれで、なぜJR東海は、2012年と2013年にすでにウランの有無の調査をしていた事実を一般住民に説明してこなかったのか?(もししていたとしたら、この文節は後日削除します)

 細かな点でいくつかの疑問を覚える事案です。

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●岐阜県瑞浪市、非常口の残土運搬が始まった。

 いつもは、自分自身の記録を書き留めるこのブログですが、今回は、岐阜県在住のジャーナリスト、井澤宏明さんの書いた現地レポートを紹介します。
 岐阜県の瑞浪市で非常口(資材搬入口であり営業時の避難口。この完成後に本線のトンネルを掘削する)の掘削が始まりました。それを地元がどう受け止めているかのレポートです。
 人様のレポートですので、私のコメントは入れません。
 
 ただ、最低限の事実を基本情報として共有すれば、井澤さんのレポートをより深く読み取ることができます。以下、ご参照ください。
 
★基本事項
 岐阜県の東濃地区は日本最大級のウラン鉱床地帯で、JR東海は、リニアのルートは、この一帯の地下にある数々のウラン鉱床を避けていると説明する。
だが2016年2月の市民団体の調査では、リニアルートの真上での放射線の測定値こそ、近くにあるウラン鉱床地帯よりも高い値が出た。
 心配されるのは、そのトンネル工事でウラン残土が出てきた場合だ。ところが問題は、仮置き場はあるにせよ、ウラン残土をどこで恒久処分するかがまだ決まっていないこと。
 それが決まってからの着工であるはずなのに、決まらないまま、非常口の掘削が始まった。その掘削で発生する約130万立米の残土のうち約100万立米を近くの耕作放棄地で処分(積む?)する予定だ。そこに残土を運ぶための空中ベルトコンベヤーが完成した。


● 以下、井澤さんのレポートです。
 また、最近l、愛知県の市民団体「春日井リニアを問う会」の代表、川本正彦さんがここを訪れた時の写真を何枚か送ってくれました。その写真も随所に配置します。


ーーここからーー

●掘削前夜、変わる風景

 リニア中央新幹線を巡る談合事件の捜査が東京地検特捜部により行われています。日本を代表する大手ゼネコン4社がトンネルや駅などの建設工事を受注調整して分け合ったとされるこの事件の根底にあるのは、建設の必要性をあいまいにしたまま9兆円という巨費を投じてしゃにむに突き進むリニア事業のゆがんだ姿です。沿線の住民が作る団体「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」は昨年末、「独禁法違反という犯罪性の強い工事を続行することは決して認められない。JR東海はリニアの工事をいったん中止すべきだ」という声明を出しました。が、きょうも工事は続いています。


空中に巨大コンベヤー

 岐阜県内初のリニア工事が一昨年末に始まった瑞浪市日吉町を1月末、久々に訪ねました。「そろそろ掘削工事が始まるらしい」と住民から連絡をいただいたからです。
 品川―名古屋間286キロのうち86%がトンネルのリニア。工事中はトンネルの掘削口となり、完成後は緊急時の避難口となる「非常口」が地上数キロ置きにつくられます。
 日吉町の南垣外地区にも1か所が予定されています。非常口から約400メートルの長さの斜坑を掘り、そこからリニア本線となる日吉トンネル(7.4キロ)を東西に掘り進めます。着工から1年をかけて非常口工事現場や残土置き場の整備が行われてきました。


生活道路や農地を横切り、建設された巨大コンベヤー

 低い山々に囲まれた緩やかな谷間に広がる南垣外地区。その風景はしばらく見ぬ間に一変していました。高さ約20メートル、ジェットコースターのような巨大なベルトコンベヤーが生活道路を横切り、空を切り裂くように見下ろしています。

山梨実験線の高架橋を思わせるベルトコンベアー←空中ベルトコンベヤー(川本さん撮影)

 コンベヤーは非常口予定地から残土置き場まで約2キロも続き、谷全体がすっぽりと工場の内部か採石場になってしまったかのよう。人家の軒先から10メートルも離れていないところもあり、「これが動き始めたら住民は堪らないな」と重苦しい気持ちになります。

整備中の発生土処分地←整備中の発生土処分地(川本さん撮影)

 まだ掘削が始まっていないのにもかかわらず、辻々には交通誘導員が立っています。タンクローリーなどと出くわすたび、わずかに道幅が広くなった所で待たなければなりません。脱輪しそうな狭い道をバックさせられることも。
 コンベヤーは、非常口から掘り出した残土約130万立方メートルの8割強を、耕作放棄地に整備した置き場に運び上げます。JR東海によると、掘削は今年度内を目途に始め、3年間続きます。当初、残土はダンプで運ぶ計画でしたが、工事車両の通行が1日最大460台という想定に住民が強い不安を訴えた結果、コンベヤーを使うことで車両を160台まで減らすことになりました。


消えたコジュケイ

 南垣外地区では、リニア建設に伴う人家の立ち退きなどがないこともあって、工事に強く反対する声は上がってきませんでした。沿線各地で難航している残土の置き場が近くに確保出来たことも着工を早める一因となりました。自治会のメンバーは、建設中の生活への影響を少しでも減らそうと、JR東海や工事を請け負う清水建設などと話し合い、歩道設置などを実現してきました。
 それでも、穏やかだった農村の環境が変わることは避けられません。

南垣外 民家の裏にベルトコンベヤー←民家のすぐ裏を通るベルトコンベヤー(井澤さん撮影)

「(工事のない)日曜日が待ち遠しい」。非常口予定地の近くに住む女性はつぶやきます。リニア工事が始まり、車両や重機の音、樹木伐採の音などさまざまな雑音が耳に入るようになりましたが、「ノイローゼになっちゃうで、気にしないようにしてる」といいます。


人家に迫るコンベヤー。住民の暮らしは守られるのだろうか

 庭先に来ていたコジュケイのつがいが姿を見せなくなり、これまでは田んぼのあぜ道までしか出てこなかったキジが庭に現れるようになりました。工事により、すみかを追われたようです。「今年はウグイスが鳴くだろうか」。こんなことを心配しなければならなくなりました。

南垣外工事ヤード←南垣内工事ヤード。住居のすぐ近くだ。(川本さん撮影)

 目に見える変化だけではありません。掘削が始まれば、この連載でも触れたように、この地域では、ウランを掘り出す可能性があります。放射線を出し肺がんを引き起こすラドンが空中に放出される危険性と隣り合わせの工事です。
 住民の男性に掘削直前の心情を問うと、「丁寧な仕事をやってほしいだけです」と言葉を絞り出しました。

処分地の前の道路脇に石碑←処分地の前の道路に石碑(川本さん撮影)


ーーここまでーー

 コメントは書かないと書きましたが、一つだけ。
 私も2年前、まだ工事の始まっていないとき、この現場を訪れましたが、住民は間違いなく来る工事に不安を覚えていました。だが、その不安の発露は「心配」や「懸念」であり、できるだけ住民に迷惑をかけない工事を「お願い」するという、いわば、ほかの地域とほぼ同じ対応で来ているようです。
 私は反対運動をやれとは言いません。だが、「心配」や「懸念」を表明するだけでは、決して相手と「対峙」することにはならないということが分かってきました。
 井澤さんは、ウラン残土が排出する可能性がある以上、放射能問題に詳しいスペシャリストの元に住民数人を連れて行ったことがありますが、それでも、住民の方向性に大きな変化は現れませんでした。
 住民は責められない。特に集落という小さい世界に住む以上、正面から事業者と対峙するのは難しいこともあります。そこで、外の組織との交流がどれだけあるのかが、今後、リニアでもほかの大型公共事業でも課題となるところです。

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●計画路線から外れても、地下水は地下でつながっている。
 リニア計画において、どの地域でも心配されているのが「地下水の枯渇」です。
 品川・名古屋の286Kmのうち86%の246Kmでトンネルが建設されるのだから、実験線周辺の河川の枯渇が事実として残った以上、今後の工事においてその周辺住民が心配するのは当然といえましょう。

●心配する座間市

 地下水枯渇を恐れるのは、リニア計画沿線上の自治体や住民だけではありません。
 神奈川県座間市でも相当に気をもんでいる。
 座間市は、リニアが通り中間駅も建設される相模原市に隣接する自治体。
 私はその怖れを初めて耳にしたのは、2013年10月上旬に相模原市で開催されたJR東海の「準備書」説明会においてです。

 JR東海の説明に対して、会場で手を挙げた座間市の住民が「相模原市と隣接する座間市はその水供給の85%が地下水です。リニア工事において、座間市の地下水位が下がったり枯渇する可能性はないのか」とJR東海に質問したのです。
 これに対して、JR東海は「影響は小さいと予測します」「事後調査もやります」といった回答をしていたと記憶しております。

 以下、座間市とJR東海とのやりとりを整理しました。

★2014年5月22日  平成26年度第1回「地下水採取審査委員会」会議
 地下水への影響を市も問題視しJR東海が「環境影響評価書」を発表した2014年4月の翌月の5月22日には、有識者からなる「平成26年度第1回地下水採取審査委員会会議」を実施しました。
 そこで話し合われたことは
評価書は情報が依然として不十分
▼評価書には、相模原地区での地下水データが4地点しか示されていない。座間市の涵養域では、相模原台地を横断する6Kmの区間について、少なくとも300~500mごとののデータが必要。
▼砂礫層の透水係数は通常、毎秒10の-3乗~10の-4乗メートルなのに、評価書では10の-5乗メートルと桁が違うのは疑問。
工事中に地下水位の変動が生じるのに、評価書では、構造物の完成後の落ち着いた状態での地下水位を示している。これでは地下水流動阻害についての情報は不十分。
▼相模原市での中間駅は「深層に建設すべき」。そうすれば、トンネルは相模原市と座間市の主帯水層である相模層群を通過しない。

★6月9日  「委員会」から遠藤三紀夫市長への建議。
 この会議により、6月9日、委員会は上記問題点をクリアするために、「座間市での水解析、工事中の地下水流の計算、そしてトンネルの深層での建設など」をJR東海に要望するよう遠藤市長に建議します。

★6月18日  市長からJR東海・柘植康英社長への質問
 この建議を受け、市長はその内容を文書でJR東海に伝えたうえで「貴社の見解を伺います」との質問を投げています。
 そして、そこには一筆「7月18日までに文書にて御回答くださいますようお願いいたします」と記しています。

●文書での回答はいたしておりません

 これに対して、JR東海は以下のように回答したのです。

★7月18日  JR東海・中央新幹線推進本部・中央新幹線建設部・環境保全統括部の内田吉彦部長から市長への回答
 これまでも環境影響評価の内容についてご質問いただいた際には、面談や電話にて説明させていただいており、文書での回答はいたしておりません。今回の内容についてのご担当の窓口に面談の上説明をさせていただきたいと考えております。
(といった内容については文書で回答している)

★同日  口頭での説明
  実際、同じ7月18日、神奈川県のJR東海環境保全事務所の社員が来庁し、口頭回答。市は聞き取った内容を書面に起こします。ごく簡単にまとめれば

▼地下水の解析範囲の南端(座間市に近い側)では、構造物(駅やトンネル)を建設してもしなくても、その地下水位の差はほぼゼロ。したがって、以南を解析する必要はない。
▼深層地下水の帯水層は傾斜があるので、地下水はトンネルの周囲を回り込むため、地下水位への影響は小さい
▼適切な工法で十分に遮水するので、トンネルが深くなる方向に地下水が流出する可能性はない
▼漏水の可能性は低い以上、モニタリングは必要ない

 といった内容です。

 この回答に対して、市長は、「回答には理解いたしかねる部分がある」として「回答の疑問点について」と題した文書を、再度、JR東海・柘植社長に提出。

★7月29日  遠藤市長から柘植社長への照会
 当市といたしましては、今回は座間市地下水採取審査委員会委員長からの建議を受け、座間市長から貴社の代表取締役社長宛に文書で紹介したもので同様に取り扱われるべきものと考えておりますが、貴社の考えを改めて伺います。文書回答できない理由が他にもあればご説明願います。

★8月8日  内田部長から市長への回答
 環境影響評価に必要な内容は評価書に記載してあるものと考えており、改めて文書での回答をすることはいたしておりません 今回のご質問内容についても、貴市ご担当の窓口に面談のうえ説明させていただきました。


 そして、JR東海のこれら回答を受け、8月21日に第2回「地下水採取審査委員会」会議が開催されるのですが、そこでは、JR東海の回答を「到底満足できるものではない」として、各委員から多くの疑問や意見が提示されました。いくつか列挙します。

▼環境影響評価に示されている透水係数はばらつきが大きく、上総層群に至っては最大値と最小値で6桁も異なっている。ばらつきが大きい場合、リスク管理の観点から最大値を用いて計算する(中略)必要があり、単純に平均値を用いるのは環境影響評価として問題。
▼解析範囲の南端付近では地下水位差がほぼゼロであるとのことだが、解析範囲の南端の境界条件を既知水頭境界として設定しているのだからそのような結果になるのは当たり前であり、説明になっていない。
▼JR武蔵野線、京都市営地下鉄東西線の事例など、工事中に地下水流動阻害の影響が最も大きくなるという知見が数多くあるにもかかわらず、「影響が大きい工事完了後」という説明は受け入れられない。
▼遮水可能な工法を採用したとしても、全く地下水が漏出しないとは考えにくい。漏出は想定範囲であり、対応を考えておくべき。漏水が起こらないのが前提ならば、過去の事例を示すべき。

 委員会は、10月3日、この内容をJR東海に問い質すべきだ遠藤市長に建議。そして10月15日に遠藤市長がまたも柘植社長に「貴社の説明内容に係る意見・要望について」との文書を提出。
 これに対するJR東海の回答はA4用紙で2枚。

★12月26日  内田部長から遠藤市長に回答

 内容は、簡単に書けば「地下水への影響は、計画路線から10Kmも離れた座間市への影響はないものと考えております」といったもの。

★2015年1月30日  第3回「地下水採取審査委員会」会議
これに対して、「地下水採取審査委員会」会議は「納得できるものではない」が、「(3か月前の2014年10月に国が事業認可をして)建設の段階に入った以上は十分なモニタリングを行ってもらう」との方向性で一致。
▼モニタリングの地点、井戸構造、測定方法等の情報を提供してもらいつつ、最低月に1回以上はその結果を提供してもらう。
▼有識者、JR東海、座間市などで構成する「地下水対策検討委員会」の設立をJR東海に要望する。

 この2点について建議を受けた遠藤市長は、2月26日、その内容を「要望」として柘植社長に文書を送付。

★3月18日  内田部長から遠藤市長への回答
 「地下水への影響は、計画路線から10Kmも離れた座間市への影響はないものと考えております」
 「非常口およびリニア地下駅付近でモニタリングを実施することで、座間市域への影響も把握できる」
 「モニタリングの調査地点、測定方法、頻度などは学識経験者の意見を受けて検討し、着工前に座間市に報告する。モニタリング結果は公表する」

★5月8日  平成27年度第1回「地下水採取審査委員会」会議
 これについて、委員会は
▼モニタリング内容の決定前に座間市が意見を述べる機会が必要だ。
▼JR東海は、着工前の詳細な調査データを提示し、当委員会が同席の上で説明会を開催すべき
▼モニタリング結果はリアルタイムで公表すべき。
▼座間市が行っている地下水モニタリングデータもJR東海に提供する。

 等々を話し合い、またも、6月2日、遠藤市長が柘植社長に「要望」として文書を提出します。
 しかし、6月22日に内田部長から遠藤市長に送付された回答は、3月18日に回答とほぼまったく同じもの。
 これに対して、当然、委員会からは不満の声が出されるわけです。

★7月24日  平成27年度第2回「地下水採取審査委員会」会議
 ▼これ以上新たなシミュレーションの実施を求めても応答がない。
 ▼必要なのは、モニタリングで異常があった場合の対策を即時的に示してもらうことだ。
 ▼JR東海は座間市に説明するというが、この時に当委員会の同席もされるべきだ。

 この建議を受けた遠藤市長がまたまた柘植社長に要望を送りますが、

★9月17日  内田部長から遠藤市長への回答
 この回答はA4用紙のわずか半分。

「モニタリングの内容については、事業者の責任において学識経験者等に意見を求めて策定します。これら内容は、事前に貴市担当部局に丁寧に説明いたします」

★11月12日  平成27年度第3回「地下水採取審査委員会」会議
 この回答に、委員はほとほと疲れたのでしょうか、以下の発言をしております。

▼「回答はほとんど前回と同じ。これ以上は何を言っても同じ文書が返ってくると思われる。重要なのはJR東海の説明に当委員会が同席して、しっかり意見を言うことである」


 で、この後、同委員会は平成28年度に一度(2017年1月30日)と平成29年度に一度(2018年2月5日)だけ開催されておりますが、ここでは、もうリニア関連の話は出てきません。座間市での地下水総合調査のコンサルに「パシフィックコンサルタンツ社」(リニア計画での神奈川県の環境アセスを請け負った会社)を決めたとの話くらいで、わずかに、2月5日にこんなやりとりがあるだけです。

委員長「リニアの関係で何か進展がありましたか?」
事務局「特にありません
。地下水に関する調査結果等については、結果がまとまり次第、JR東海から座間市に情報提供をいただけるということで調整しています」


●●私からの質問

 結局、何を質問しても同じ回答を受け取っていた市はこの状況をどう見たのか。
 私は昨年のある時期、座間市環境経済部環境政策課環境保全係に質問をしたことがあります。
 できれば、対面取材を望みましたが、議会開催時期と重なっていたので、先方の要望で文書でのやりとりとなりました。ただし、最初に電話で問い合わせたときは、担当職員は「あの対応には誠実さを感じません」と相当な不満を漏らしておりました。
 以下、判りやすいように、一問一答形式に書き表します。

質問1 貴市は、何度もJR東海に対して「モニ夕リンダ計画について当市担当部局に説朋される際には、当市担当部局朧員に加えて、座間市地下水採取審査委員会委員の同席を要望します」と要請していますが、JR東海は一度もそれに応える回答を寄せておりません。
 貴係が最後にその要望をあげたのは2015年8月17日ですが、それ以降、JR東海は何かしらの回答を寄こしたのでしょうか。
 また、文書だけではなく、電話や直接対面などでの交渉の席でどういう回答をしているのでしょうか?
回答1 その1か月後の2015年9月17日付で、「中央新幹線(品川・名古屋間)建設に係る地下水モニタリングについて(回答)」との回答文書がありました。
これ以後に電話や直接対面による交渉はありません。

質問2 JR東海に要請した「地下水対策検討委員会」設立は実現したのでしょうか?
回答2 地下水対策検討委員会の設立は実現しておりません。

質問3 JR東海は、リニア工事でも座間市の地下水水位に影響はないと結論しておりますが、この結論に貴市はどのように考えているでしょうか?
回答3 JR東海が、一連の法に従った手続き等を進めているとはいえ、座間市地下水採取審査委員会からの意見を見ても不十分さを感じております
 平成28年3月に改定した「座間市地下水保全基本計画」で地下水影響予測を行いましたが、現況と大きな差は生じませんでした。
 しかし、市民からの不安の声も多いことから、今後も監視活動を行ってまいります。

質問4 貴市として、妥協できないのは、やはり「モニタリングでの同席」ということになるのでしょうか。
回答4 モニタリング計画について、座間市地下水採取審査委員会委員の同席のうえ、説明をしていただくことが重要であると考えております。

質問5 もし、JR東海が「モニタリングの同席」を認めない場合、貴市として次に取りうる要請や手続きはどのようなものになるでしょうか?
回答5 座間市地下水採取審査委員会に検討及び助言を求めながら、市として必要な対応をしてまいります。


 おそらく、委員会や市としては、これ以上の暖簾に腕押しをするよりも、何か動きがある際に要望を出していくことになるのだと思います。

 ただ、座間市のやりとりを一読してもう少し知りたいと思うのは

▼委員会会議は公開されているが、記録を見る限り、傍聴者の人数はいつも「一人」。もちろん、こうした会議はとても地味で目立たないから、この参加の有無では計れないにしても、一般民の不安はどれほどのものなのか。
▼もし、座間市の地下水に何かしらの影響が出た場合、JR東海はどう対処するのか。
▼長野県中川村などはそうですが、文書の質問に対しては、JR東海はちゃんと文書回答している。なぜ座間市ではそれができないのか。

 といったことですが、やはり、住民の声が大きくなることが、座間市とJR東海との関係性をよくする一つの鍵なのかもしれません。
 ちょっと書きすぎました。
 本日はこのへんで。

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●第9回「ストップ・リニア!訴訟」口頭弁論

リニア第9回口頭弁論 裁判前集会


 3月23日、JR東海のリニア中央新幹線計画について、国土交通省の事業認可取り消しを求めた「ストップ・リニア!訴訟」の第9回口頭弁論が東京地裁で開催され、3人の原告が意見陳述しました。
★一人目 東京都町田市のシイタケ農家の森和幸さんは、自宅裏の地下をリニアが走行すると、シイタケ栽培や日常生活に必要な地下水が枯渇するかもしれないとの不安を訴えました。そして、裁判後の司法記者クラブ(裁判所内の記者会見場)では「JR東海は、この件を話し合うために私を来訪したことはただの一度もありません」と、自分の生活が軽視されていることに憤りを隠していませんでした。

●二人目 神奈川県相模原市の桜井真理さんは、自宅はリニアルートから外れてはいますが、リニア中間駅がその隣に建設されるJR橋本駅まで10分以内の距離に住んでいます。
 桜井さんは「リニア新幹線を考える相模原連絡会」のメンバーであり、ここのところは、リニア計画で立ち退かされるかもしれない人たちからの相談も受けております。実際、市ではリニア計画で100人単位の住民が立ち退くと予想されていて、昨年末にはJR東海が某マンションの全住民44世帯の立ち退きを求め、当然、住民とすれば困惑するばかりです。
 マンションともなれば、この機会に補償金を得て老人ホームに入る資金にしようとか、抗う力がないとか、絶対反対とか、様々な意見がでてくるため、住民の意見を統一するのは至難の業かと思われます。
 桜井さんは「終の棲家として市に住んでいる住民がいるのに、「その暮らしを一方的に踏みにじっていいのか。声を大にして問いたい」と訴えました。

●三人目  「リニア新幹線を考える相模原連絡会」の代表でもある浅賀きみ江さんも相模原市在住で、リニアのルートは自宅から30メートル離れた場所の地下を走る予定。浅賀さんが強く訴えたのが、橋本駅に隣接する県立相原高校(農業)の敷地にリニア中間駅が建設されることになったため、相原高校が来年春に移転することでした。

相原高校の散策路←相原高校の散策路。誰でも自由に通行できる。 相原高校の牛←相原高校は農業高校。生徒たちは自分で搾乳したり、加工品をつくり、曜日を決めて、正門前や校内でその販売も行っている。

 校門閉鎖が当たり前の昨今ですが、相原高校はその広い敷地の中に開校以来約100年をかけて整備されてきた並木道があり、そこは一般住民の散策路として開放されており、牛を連れて歩いている学生さんたちは目が合えば「こんにちは!」と挨拶をしてくれる。保育園や小学校の児童のために、動物とのふれあいや農業体験を実践するなど、けっこう地域のなかのオアシス的な場所として重宝されております。
「考える会」では、相原高校を移転させないでほしい旨の署名を5000筆以上も県教育委員会に提出するなど、多くの市民の反対の声がある現実に、意見陳述では「納得できません」と締めました。

リニア第9回口頭弁論原告3人←原告の3人。手前から浅賀きみ江さん、桜井真理さん、森和幸さん。


●原告側意見陳述は終了。だが被告は今まで原告の主張への反論を準備していなかったって?

 さて、第2回口頭弁論から第9回口頭弁論までの8回にわたり、リニアが通過する1都6県の各地に居住する原告の意見陳述が行われたわけですが、今回をもって1年半にわたって行われた原告意見陳述は終了となります。
 裁判の次回以降は、被告の国(国土交通省)と、「参加人」として裁判に参加するJR東海から、原告の準備書面と意見陳述に対しての反論が3回にわたって行われる予定です。
 とはいえ、この「3回」もけっこう裁判長がねじこんで実現した回数です。こんなやりとりがありました。ただし高速のメモ書きなので、一部書ききれなかった発言もあるので、おおよそで書いております。( )内の言葉は私が書いた補足説明です。

古田孝夫裁判長「参加人(JR東海)の書面をいつまでにいただけますか?」
被告側弁護士「5月末には。そして、原告への私たちの反論も、原告の主張が長い時間(1年半)がかかったので、すぐには反論の準備ができません」
裁判長「え、(ほぼ2カ月ごとに行われた)原告からの主張(準備書面や意見陳述)に対して、被告は順次反論の準備を進めているとばかり思っていたのですが。(何も準備していないとは)これまでかかった時間(1年半)を被告が繰り返すということですか?」
被告「国としては、原告の主張はまだ不十分だと思っています」
裁判長「(数秒間沈黙)。なかなかつながらない作業になりますね。回数を切っていただけますかね。2回とか3回とか」
被告「4回・・」
裁判長「(これまでのペースの)2カ月ごとにやると、4回だと8カ月もかかります。3回にしていただけませんか?」
原告・横山聡弁護士「こちらも、(書面提出や意見陳述を)順次やってきて、その間に、準備されていると思っていました。3回以内でお願いします!」(相当に憤っておりました)
裁判長「法廷の空き具合もありますので。次回は早くても6月改訂となります。次は早くても8月か9月。できればそこで完結していただきたいが、11月までではどうですか?」
被告「できるだけ11月には」(と立ち上がって一礼する)
裁判長「その間、原告には原告適格の根拠の整理を」
(注:原告適格とは、そもそも訴える資格のある人のこと。たとえば、原告でも海外に住んでいて日本に来る予定もない人は、リニアとの利害関係は生じないので、訴える適格がない。またたとえば、リニア沿線外に住んでいるが、リニア工事で発生する残土を運ぶダンプカーがすぐそばを通るなどの場合は、騒音や振動などの被害が生じるので原告適格があると主張できる。ただし、ダンプ街道からどれだけ離れているかで、被告は「原告適格はない」と言うかもしれない)
横山「JR東海の準備書面を見たが、どこにどれだけの施設を建設するのかが曖昧。工事で発生する残土にしても、どういうルートで運んで、どこに処分するかが一切書いていない。それをせずして、原告適格を判断できません」
裁判長「(被告に)決まっているんですか?」
被告「明らかにできるところは明らかにしたいです」
横山「ルートは決まっているのではないんですか!? そういう場当たり的なことをするんですか!?」
被告 (聞きとれず)
裁判長「これは取り消し請求ですから、事業認可時点での計画を基点にすれば、何も決まっていない」
原告・関島保雄弁護士「リニアのルートを外れていても、広範囲に被害はあります(騒音や地下水枯渇など)。そもそも残土をどこに捨てるかのルートも決まっていない。可能性のある範囲で原告適格を考えています。(たとえば)水資源枯渇の危険性も主張しているが、神奈川の住民にも適格があると思います」
裁判長「広めに範囲を設定していただき、(原告738人の)一人ひとりの適格を決めていただけますか?」
横山「(一礼)」

 ということで、被告側がこれまでの原告からの準備書面や意見陳述に対しての、反論の準備をしていなかったともとれる発言をしたわけですが、傍聴していた人からは、これからゆっくりとそれを準備して裁判を引き延ばすつもりだったのかとの声も聞こえておりました。
 これ、裁判長が「3回」と仕切らなかったらどうなっていたんだろう。

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