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樫田秀樹

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●リニア山梨裁判、いよいよ最終局面か?
 3月14日。山梨県南アルプス市の8人の原告(現在は6人)が起こしたリニア工事差止訴訟の第16回口頭弁論が開催された。現在のサイフの状況から言えば、雑誌の記事にはならない取材はすべきではないが、山梨訴訟はある意味大切な局面に差し掛かっているのでさぼるわけにはいかない。
 ということで、最初からのお願いですが、取材経費の100円カンパにご協力いただける方はよろしくお願いいたします。こちらからPCやスマホの前で手続きできます

230314リニア山梨裁判 報告集会←裁判後の報告集会

●市民感覚の裁き
 2022年度から、裁判長が現在の新田和憲裁判長に換わってから、裁判のリズムがぐっとよくなった印象は多くの傍聴者が持っている。
 2022年4月19日の第11回口頭弁論。このときから本件を担当した新田裁判長は、原告と被告の両者にこう語ったのだ。
「このなかでは、リニアについては私が一番の素人です。だから、原告と被告の双方に、これまでの主張を整理した『要約書面』を用意していただきたい。原告に個別の損害があれば具体的にご主張いただき、被告には、損害が発生しないならそのご主張をしていただきたい」
 これまで双方が出した複数の準備書面を読むのは時間がかかるので、そのダイジェスト版の提出を要請したということだ。
 裁判後の報告集会で、原告側の梶山正三弁護士は「『私が一番の素人』だなんて、あんな発言をする裁判官は極めて稀有です」とその率直さを評価した。
 そして7月12日の第12回口頭弁論では、新田裁判長は「原告、被告双方にいろいろと質問をしたいから、次回期日はその質疑応答に充てたい」と通知した。
 この質疑応答は、原告と被告と裁判官だけで行う「進行協議」として実施するので、傍聴はできないと予想されていた。だが、9月13日の第13回口頭弁論では、原告の一人の意見陳述のあと、裁判長が「双方に質問したい」と発言し、そのまま進行協議が始まった。
 傍聴席からは「え、聞いてていいの」との囁きが聞こえたが、果たして誰も退廷することなく、傍聴席の全員がそのやりとりを聞いた。
一般市民には難解な法律論はあったが、被告への具体的な事例を挙げての質問もあった(要約)。
「被告に聞きたい。原告の差し止め請求は、『財産権侵害』と『人格権侵害』が根拠だが、その人格権侵害のうちの『騒音』については、新幹線環境基準を順守すれば違法性がないとの位置づけか。原告の書面によると、県内の他地区ではルートから何メートル離れれば何デシベルになるとの具体的シミュレーションに基づく説明をなさっているが、本件区間でも行っているのか?」
 JR東海は「確認させてください」とその場では答えなかった。裁判長はさらに続けた。
「原告の三宅さんの土地はリニア用地幅の21・6メートルに入っていない。そうであれば、買収や土地収用が関係するでしょうか? 関係しないのなら、三宅さんの差止請求の棄却を求める根拠は何でしょうか? 原告は土地価格がゼロになると主張。『そんなことはない』との被告のご主張は判るが、ゼロにならないにせよ下落するとは第三者的には思う。それを損害と認識するかしないかは疑問に思うところ。我々は三宅さんの事例で気づいたが、リニア事業用地に含まれない方々の土地との関係で、法的な意味合いを整理してほしい」
(三宅さんについては、こちらを参照してください 簡単に書けば、三宅さんの土地は、リニアルートにはギリギリかからないが、リニア高架で日陰にはなる。だがその日陰の時間が国の定める補償を受けるにはギリギリ足りない。だがギリギリ足りないだけの日陰と騒音のなかでは平穏な暮らしができないというのが三宅さんの訴えだ)
230314リニア山梨裁判 三宅さんと西川さん←向かって左が三宅さん。右も原告の西川勉さん。

 おお、まさしく市民レベルの一般感覚を有する問いかけではないか。といぅのは、各地での住民説明会で、会場からの「リニアが通ると不動産価格が下落する恐れがある。その場合は補償してくれるのか?」との問いかけにJR東海はいつも「不動産価格はそのときの社会情勢に応じて変わる。リニアが原因だとは言えない」と答えるだけだったからだ。新田裁判長は「そんなはずはない」との印象を述べたのだ。

●ついに現地検証が実現するか!?
 さて、JR東海は、騒音シミュレーションについて「確認させてください」と答えたが、3月14日の第16回口頭弁論に至るまでにおいても、三宅さんの差し止め請求の棄却を求める理由も、騒音シミュレーションも準備書面に記載していない。今回の被告側の準備書面(14)は本文がわずかに8行である…
 新田裁判長は今回も「三宅さんの訴えを棄却する理由を明確にせよ」とJR東海に指示した
 そして、梶山弁護士が「毎回要請しているが、裁判所には二つのことをお願いしたい。①原告が不動産を有する土地、そしてリニア実験線での現地検証をしてほしい。その後に、②原告側の証人尋問を実現してほしい」と要請すると、新田裁判長は「次回期日の5月16日を非公開の進行協議として、現地検証の可否の議論をしたい。原告の求める①と②の両方を協議できればベストである」と結んだ。
230314リニア山梨裁判 梶山弁護士←梶山弁護士

 裁判後、梶山弁護士は「おそらく現地検証は実現する」と確信していた。私もそんな印象を抱いた。
 もし現地検証の実現が、5月16日の3か月後あたりとすれば、8月か9月になる。その後の証人尋問がやはりその3カ月くらいあとであれば、年末前後と予想されるが、梶山弁護士は法廷では証人尋問のあとに最終準備書面の作成に進んでもけっこうだと発言している。
 つまり、判決が来年に出る可能性が出てきた
 
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リニア新幹線が不可能な7つの理由


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● 3月3日。リニア工事差し止めを求める静岡裁判の第9回口頭弁論。
 今、静岡県では、リニアを巡る情勢は、まったく新しい局面を迎えた。

230303リニア静岡裁判ミニ集会1←2023年3月3日の口頭弁論前のミニ集会。

 静岡県とJR東海とは2014年から、リニアのトンネル工事で失われる湧水の全量戻しの方法、生態系の保全などを話し合っているが、これまでは「長さ11キロの導水路トンネルを敷設して、湧水を大井川に戻す」や「ポンプアップして戻す」などの案を中心に話し合われてきたが、去年から、にわかに2つの議題がクローズアップされている。
①田代ダム案
大井川上流部にある田代ダム(東京電力)で発電に使う大井川の水は発電後に山梨県側の富士川水系に放流されているが、東電がそれを取水しないことで大井川への流量を増やす。
②高速長尺先進ボーリング
 山梨県と静岡県との県境の両側には断層(破砕帯)があるが、JR東海はこれまで一度も地表からの鉛直ボーリングによるコア(土のサンプル)を採取していない。それにより、正確な地質と透水係数(土中を水が流れる速度)が判るのに。しかし昨年、直径20センチ前後で長さ1キロに及ぶ水平ボーリングを山梨県側で掘削中のトンネルから静岡県境に向けて実施したいと、JR東海は静岡県に説明してきた。

 すべて書けば長くなるので、ここでは②について。

 この水平ボーリングではコアが取れないから、透水係数もわからないし地質もわからない
 だが、JR東海は「水平ボーリングでも判ることはある」「これは調査だ」と強調してきた。
 しかし、そのJR東海の担当者が10年ほど前に公表した資料には「水平ボーリングは水抜きに有効」と明記されているのだ。水抜きとは、山体から徹底的に水を抜いて、トンネル工事で出水がない状態にするための工程。
 だから、県は「これは調査ではない。水抜きという工事だ」「それは今やる作業ではない」と主張してきた
 ここで、「静岡県が、JR東海の山梨県内の工事にそういう要請をするのはおかしい」と思う人もいるかもしれない。
 だが、やはりJR東海が県に示した資料では、県境の両側にある断層がつながっている可能性が示されているのだ。つまり、もし水平ボーリングが山梨県側の断層に達したとき、静岡県の地下水も山梨県側に吸い寄せられる可能性があることから、水平ボーリングを見合わせるように要請していた。

 だが、先日のブログやFBで書いたように、JR東海は県に2月20日に「21日から高速長尺先進ボーリングをやる」と通知し、実際にやってしまった。

●裁判
 で、裁判に話を移す。
 裁判では、南アルプスを愛する登山者の竹本幸造さん(日本勤労者山岳連盟)が意見陳述を行った。JR東海はトンネル掘削で、南アルプスの地下水が350m以上も地下水位を下げるとの予測を出しているが、これで高山植物は死滅することになると主張し、また、始めたばかりの水平ボーリングは水抜き目的である以上、看過できないと訴えた。
230303リニア静岡裁判ミニ集会竹本さん←竹本さん。

 裁判では、この意見陳述の後、原告団と被告が別室での進行協議に入ったのだが、その内容が裁判後の報告集会で明らかにされたが、その一つが

★被告のJR東海は、「透水係数を出す」と確約したこと。

 本当か? すぐさま私は質問の手を上げ、こう尋ねた。

――透水係数を出すには、地表からの鉛直コアボーリングが必要となる。JR東海はそれをやるということですか?
西ヶ谷弁護士「おそらく根拠のない数字が出されるはず。そうなればなったで、私たちは、『その数字はどういう方法で出したのか?』と詰めていく」
 次回口頭弁論は6月9日。JR東海はどんな透水係数を出すのか。

230303リニア静岡裁判報告集会1←真ん中にいるのが西ヶ谷弁護士。

 そして報告集会で弁護団が配布したのが「土木学会」トンネル工学委員会が2007年に発行した「より良い山岳トンネルの事前調査・事前設計に向けて」という本の一部。著作権があるため、ここでそのコピーを全ページ見せることはできないが、要点だけ書けば

★JR東海が始めた水平ボーリングのようなコアを採らないボーリングは、「水抜きのみを目的とした場合に採用する」と明記されていることだ。
230303コアとノンコアボーリング資料2

透水係数を得るためには「コア・ボーリング」が最も直接的な方法だとも明記されている。
230303コアとノンコアボーリング資料1

 土木学会がこう明記していても、JR東海はなおも「調査である」と譲らない。
 しかも、2月21日に強行した水平ボーリングについては、国交省も「調査開始の延期を」とJR東海に訴えていた。JR東海は県の要請も国の要請も無視したということになる。

 そして、よくよく調べると、強行工事の4日前の2月17日、JR東海の金子社長は記者会見でこんな発言をしている。
静岡県との合意が必要とは思っていない。ただ、心配は心配として受け止め、対処を文書で知らせた上で、慎重に進めていく」
 これはとらえようによっては怖い発言である。

★昨年末にリニア取材資金が尽きてからは、財布の中を減らすことで取材を継続しています。
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 現在、国策、または国家(的)事業に正面から意見を出す自治体は2つだけ。
 辺野古の基地移設に反対する沖縄県と、リニア計画における水や生態系の保全を訴える静岡県だ。

 実際、リニア工事において、(無策であれば)県の水源である大井川が毎秒2トン減ると予測したのはJR東海であり、その具体的な解決策が提示されない以上は、静岡県が県内での本線着工を許可できるはずもない。
 だが現在、静岡県には異常ともいえるバッシングが続いている。
★リニアが通過する他都県から
★一部記者から
★ネットユーザーから

 現在、静岡では毎月のようにリニアに関する新たな情報が出てくる。これを整理するのはけっこうきついが、昨年秋までの時点ということで、月刊「世界」(岩波書店)に掲載した「奪われる水源」をここに公開する。
 国(国交省鉄道局)がJR東海を「指導する」として始めた「有識者会議」だが、国寄りと思われる座長の情報操作で、結局は「静岡県でのトンネル掘削は問題ない」と印象付ける報告を出し、それをJR東海が、静岡県民が原告となってリニア工事差し止めを求めた裁判で、証拠資料として提出するなど、静岡県への逆風が吹いている。

 私は、国もJR東海も非難しない。ただ、事実だけを書いた。
 以下、公開します。

そして、この原稿を書いてから、JR東海は静岡県に「田代ダム」案を提示したり、県境に近づく山梨県側トンネルから、実質は水抜き目的である「高速長尺先進ボーリング」を協議しながらも強行実施したり、さらには、一枚岩と思われていた、大井川を水源とする8市2町の首長たちの一部からJR東海寄りの意見が出されるなど、状況は変動している。
 そして、静岡に限らず、リニア取材は今後も続くので、よろしければ、こちらから100円カンパにご協力ください。どうぞよろしくお願いいたします。

2209 奪われる水源 静岡県01
2209 奪われる水源 静岡県02
2209 奪われる水源 静岡県03
2209 奪われる水源 静岡県04


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 リニアの品川・名古屋間の2027年開業は間違ってもあり得ない。
 JR東海、そして一部メディアは、その原因は「静岡県のせいで」と主張する。
 だが、これはこれまで何度も書いてきたが、リニアが通る1都6県のすべてで工事は遅れている。
 今回、それを、より目を引く手法のひとつとして、映画「スターウォーズ」のオープニングに似せて動画を作ってみた。
 初めての経験なので、文字の動きがやや早い、文字がやや見づらいなどの課題はあるが、随時改良していきたい。




 制作に丸一日かかりました。
 こちらから100円カンパをいただければ幸いです。手続きはとても簡単です。

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●いったい、何のための9年間だったのか。
230222リニア 静岡県民のJRへの抗議行動5

 JR東海が(無策であれば)、静岡県の水源である大井川が、リニア・トンネル工事の影響で毎秒2トン減るとの予測を出したのは2013年9月。このまま着工されては大変なことになると、川勝平太知事の「失われる水の全量戻しを」との意見の下、静岡県は2014年4月に「中央新幹線環境保全連絡会議」を設置し、以来、JR東海、有識者、そして県(主に難波副知事)とが話し合いを続けていた。
 この連絡会議は今現在も続いている。

 これは、県が納得するだけの「全量戻し」の方法をJR東海が提示していないためで、またほかにも「生態系保全」や「膨大な残土置き場」の問題も未解決のため、県は準備工事(宿舎建設など)は認めるものの本線工事に着工許可を出していない。

 この連絡会議の長い歴史をここで書き記すことはしないが、大雑把に書けば、
★失われる水の「全量戻し」で問われているのは2つある
1.県北部の南アルプスでのトンネル掘削で工事中も工事終了後も山体から半永久的に流出する水。JR東海は導水路トンネルやポンプアップなどで大井川水系に戻すのラフな案は示している。
2.トンネル掘削中に、標高の低い山梨県と長野県に流出する水。JR東海は、山梨県にはその期間は10か月間であり、量は約500万トンと推定しているが、たっぷりと水を含んだ破砕帯でJR東海は鉛直ボーリング調査を実施していないため、その透水係数が不明。つまり想定している暫定的な透水係数は一桁間違えば、5000万立米、二桁間違えば5億㎥が失われることになる。
 これについて、県の有識者は、とにかく「透水係数を確認するための、コア(土壌サンプル)を取る鉛直ボーリング調査をするべきだ」と主張している。
 じつは私もJR東海に同じことを尋ねている。その時の回答が「現場に行くだけでも困難なうえ、たとえそれをやったとしても局地的な調査にしかならない」というもの。
 この回答ヘンだ。
 そういう局地的な調査を何カ所もやって全体像が見えてくるのに、この回答は、あたかも1か所だけの調査を前提にしたような回答だ。


●山梨から掘っているトンネルが静岡に迫っている
 そして昨年から県とJR東海とが話し合っているのは、山梨から掘り進めてきたトンネルが今、静岡県境まで800mにまで迫っている
 だが、県境付近には、山梨県側にも、静岡県側にも、破砕帯があり、前述のとおり、JR東海は鉛直ボーリング調査をしていない。
 だが、JR東海は「高速長尺先進ボーリング」という、直径20センチ前後、長さ1キロという水平ボーリングを実施し、本掘削の前にどういう地質かを明らかにするための調査を行いたいと県に説明していた。

 ところが、この水平ボーリングは、県から言わせると「調査ではなく(トンネル工事に必要な)水抜き工事」だ。というのは、この水平ボーリングは「水抜き」の効果があると、JR東海自身が10年前に明言している資料があるからだ。

230222リニア 静岡県民のJRへの抗議行動1

 ちなみに、「水抜き」工事とは何かだが、トンネルを掘ると必ず水が出る。それが時にはトンネルの中が川になったり、はたまた鉄砲水の発生などで、現場はトンネル掘削ができなくなる。確実にトンネル掘削を行うためには、まず、徹底して山体の水を抜く。そして山体がカラカラの状態になったところで、安心して工事ができるということだ。
 だが、この水抜き工事は、ときに死者を出し、ときに地元の水源であった湧き水や沢水を枯らしてきた。
 そして今回は、大井川という県の水源に毎秒2トンの減流をもたらすかもしれないため、トンネルから出た水は全量大井川水系に戻すことをJR東海に要請しているのだ。

230222リニア 静岡県民のJRへの抗議行動2

 県は連絡会議のなかで、透水係数も判らないのに、いまそれをやる必要があるのか。もし破砕帯にぶつかれば、静岡県の地下水もすべて引っ張られてなくなってしまう。まずは鉛直ボーリングで、透水係数、どういう地質構造なのかをきちんと調べる必要がある…と訴え、水平ボーリングの実施の見合わせを要請していた。

 2022年年12月11日に静岡県庁で開催された「大井川流域市町首長と地質構造・水資源部会 専門部会委員との意見交換会」においても、森下部会長が「山梨工区の先進坑が現在の位置で停止しても、(将来の)静岡工区の工事を始めてから再開すれば十分に間に合いますので、今急いで高速長尺先進ボーリングをする必要はない。つまり、静岡県の地下水が県外に流出するリスクを冒してまで県境付近まで工事を進める意義はない」と説明し、JR東海には「なぜ、高速長尺先進ボーリングを今やるのか?」との質問を投げている。
 JR東海はこれにはゼロ回答であるが、少なくとも「全量戻し方法など県に説明してから高速長尺ボーリングを開始する」との約束だけはしていた。だが、2月21日、県にはなんの説明もなく突然工事が開始されたのだ。

●市民の抗議
 それまでは散々「我々の事業は地元の理解を得てから行う」「丁寧な説明に努める」とまで明言していたのに、そして、県がまだ同意もしていないのに水平ボーリングを強行した。もちろんJR東海の言い分としては山梨県側の工事は山梨県からの許可を得ているから、ということになろうが、地下水に県境はない。

 2月22日、静岡駅近くのJR東海支社や工事事務所には、いくつかの市民団体が集まり、抗議の声を上げた。

230222リニア 静岡県民のJRへの抗議行動3

230222リニア 静岡県民のJRへの抗議行動4

  市民団体「南アルプスとリニアを考える市民ネットワーク」からは松谷清静岡市議と服部隆さんが、そして「大井川の水を守る62万人運動」の村野雪さんの3人がJR東海の工事事務所を訪れ、工事の中止を求めた。
 そして、JR東海の担当者はこう説明したそうだ。
「静岡県が主張する危険箇所到達までの間に協議をすれば良いだろう。山梨県内の工事に静岡県の許可はいらない。静岡県側にある地下水を山梨県側に引っ張る結果となったとしても少しだけだ」。
 そして、市民団体が「JR東海が、『高速長尺先進ボーリングが水抜きに有効』との論文を書いている」ことを指摘すると、「水抜きに有効だけど水を抜かないこともできる」と回答したという。
230222リニア 静岡県民のJRへの抗議行動6
 
●JR東海の自殺行為になるのでは?
 私はリニア計画には賛成でも反対でもない立場だ。
 だが、長年、リニア計画を取材してきたのは、この推進の仕方はまずい、との認識があるからだ。
 今回は、それが、静岡県との9年間のやりとりの積み重ねを一気に壊したことに問題がある。

 市民の訴えで印象深いのは「この9年間、JR東海と県は同じテーブルで話し合っていた。常に県の合意を前提に事業を進めるとの方針だったのに、今回の強行で、県は県内工事の許可を容易には出さなくなるはずだ。JR東海は自分で自分の首を絞めたのだ」との訴えだ。
 
 また、市民グループの一員で南アルプスをこよなく愛する服部隆さんの訴えも力強く、かつ分かりやすかった。これは動画で公開します。



 それにしても、この9年間の積み重ねを自らの手で壊したJR東海。今後も同じことをするのか?だとしたら空寒い思いが走る。
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 今回は、抗議行動予告の情報を受けたのが前日だったので、急きょの取材となった。大きな声では言えないが、急きょの出費となった。もし100円カンパにご協力いただければ幸いですこちらからよろしくお願いいたします。">

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1都6県にまたがるリニア問題を一人で取材することは自分で選んだ道でありますが、それも多くの方から取材費カンパというご支援をいただいたからです。とはいえ、2022年末にその資金プールがついに底をつき、東京都や神奈川県以外の遠方への取材を控えざるを得なくなってしまいました。今一度、ご支援を賜りたくここにそのお願いをする次第です。ご支援者には、今年には発行予定のリニア単行本を謹呈させていただきます。私の銀行口座は「みずほ銀行・虎ノ門支店・普通口座・1502881」です。また100円からのご寄付が可能なhttps://ofuse.me/koara89/letter もご利用ください。私と面識のない方は、お礼をしたいので、ご支援の際に、できればお名前を連絡先を教えていただければ幸いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。  樫田拝
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私が原発を止めた理由
3.11以後の原発裁判において、初めて運転差し止めを命じた判決を出した裁判長が、退官後の今、なぜあの判決を出したのか、なぜほかの裁判では住民は敗訴するのかを説明している。
超電導リニアの不都合な真実
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リニア新幹線 巨大プロジェクトの「真実」
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