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樫田秀樹

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●不起立の処分に取り消しの判決

 本日、4月19日、東京都八王子市の元・夜間中学校教師の近藤順一さんの東京地裁での判決が出ました。

 近藤さんは、これまで、卒業式などで不起立をしたために、東京都教育委員会から4回処分されています。

1.戒告
2.減給1月
3.減給6月
4.停職1月

 これに対し、近藤さんは、
 ★都教委が発した「日の丸に起立し君が代を斉唱すべし」とした通達が違法であり、
 ★これを受けた校長が個々の教員に、起立と斉唱を命じる職務命令も違法である

 として、処分の取り消しを訴えたのです。

 今回の裁判が注目されたのは、なんといっても、これが、最高裁判所が1月と2月に続けて出した「不起立への処分は『戒告』が妥当であり、それ以上の処分は裁量権の逸脱」との判断のあとの最初の判決だからです。

 つまり、地方裁判所が、最高裁判所の判断に従うとするなら、近藤さんの4つの処分のうち、2~4は取り消されることになります。

 そして果たして、本日、そういう判決が出されたのです。

 このことから、今後、東京都内の公立学校の教職員は、複数回の不起立をしても「戒告」どまりになることがほぼ見えてきました。

 ちなみに、この判決において、裁判所は『通達』と『職務命令』は合憲であると判断しました(これも最高裁の判断に倣ったものです)。これがある限りは「戒告」もあることを不服として、近藤さんは控訴を決めています。

確かに「戒告」はもっとも軽い処分ではありますが、じつは、昇給が抑えられたり、退職後は再任用されない可能性も含むだけに、それでよしとはできないと主張しているのです。

 ちなみに、東京都では「時効5年」が一般的なようです。これは何かと言うと、最後の不起立から5年たてば、その不起立は再任用拒否の材料にはならなくなるということです。

 だが、これからは分かりません。というのは…。


●都教委の締め付け

 今年3月の、東京都内の卒業式では3人の教師が不起立をしました。2人が2回目、1人が4回目の不起立です。昨年だったら間違いなく「減給」や「停職」の処分が下ったはずですが、やはり、最高裁の判断に従って、3人とも「戒告」だけの処分ですみました。

 だが、都教委は、最高裁の判断に従うと同時に、教職員を何が何でも起立させるための新たな手を打ってきました。

 不起立者に対して7月に行われてきた再発防止研修を4月5日に行い、さらに3回の研修を科すという通知を発令したのです。
 これは、度重なる研修を科すことでの精神消耗を狙った策に他なりません。

 だが、その1人、田中聡史教諭は「不起立をしなかったときもあったが、今は、自分の気持ちに正直に不起立をしている。とてもすっきりしている」と、都教委の研修を怖れている様子はありません。

 ちなみに、田中先生は4月9日の入学式でも不起立を行いました。おそらくはまた「戒告」処分が発令されるかと思います。

 私は、3月下旬に、田中教諭の卒業式のある学校前で待機していましたが、中から出てきた生徒の1人がこう言ったのがとても印象的でした。

「強制で人を従わせるのはよくないことです。抗議の意味もこめて、田中先生は不起立した。そういう先生ガいたことが嬉しい。あとで田中先生に会ったら『ありがとうございました』と伝えてください』


●大阪はどう出る?

 今気になるのは、あの橋本市長がどう出てくるかです。

 大阪府では、教員が3回不起立をしたら免職との規定を定めています。つまり、『戒告』→『減給』→『免職』。

 だが、最高裁判所の判断は、全国の地方裁判所と高等裁判所に影響を与えています。

 なので、もし今後、大阪府で3回の不起立で免職になった教師が出てきても、裁判を起こせば、処分が取り消され、現場復帰が可能になるかもしれません。

 それ以前に、大阪府自身が「戒告」どまりの処分ですますかもしれませんが、それは想像の域を出ない話です。注視していきます。

 
●他の道府県ではどうなのか?

 さて、ここで東京と大阪以外に目を向けてみると、どこもこの2つの都府ほど厳しい通達や条例は定めていません。
 では、教師は卒業式などでは自由に不起立をしているのか? 答えは否です。
 東京や大阪のような酷い処分がないのにもかかわらず、ほとんどの教師は不起立をしていません。なぜか?

 私はこれを、九州のある教師に尋ねてみました。答えはーー

「いやあ、そういうことやると、結局、保護者や同僚から異端視されちゃうんです。というより、異端視はされないのに、そう思っちゃう自分自身がいるわけです」

 いかにも、周囲の顔色を伺って行動する日本人らしい答えです。

 つまり、元々、不起立をする教師は全国的に少ない。それは東京でも大阪でもそうです。そうであるのなら、一律に網をかけるやり方ではなく、個々に対応すればいいだけの話なのではと私は思います。

 なぜ「免職」という、その人の人生を破壊するような手段まで講じて、無理やりに起立をさせるのか。「維新の会」が何を目指すのか、少し見極めていきたいと思います。


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2012/04/20 00:10 橋下徹氏 TB(0) コメント(1)
 本日書くことは、ある雑誌から取材依頼をされ、実際に取材をし、執筆もしたのに、直後に「3.11関連の記事に押されてしまい、掲載ができなくなりました」との事情で掲載ボツになったネタについてです。

 以前、橋下徹・大阪元知事(現・大阪市長)が成立させた大阪府の君が代条例について書きました。

 学校の式典では「日の丸に起立し、君が代を斉唱すること」と定めた条例です。
 様々な事情で不起立する教職員がいます。条例では、そういう教職員に対し、以下の懲戒処分を用意しています。
★1度目の不起立では戒告か「減給」
★2度目は「停職」
★3度目で分限免職

 そして、実際に、2月から大阪府のあちこちの公立学校で卒業式が始まったのですが、3月9日までに29人の教職員が不起立をしています。

 ところが、大阪の地元でこれがどう報道されているかを調べてみると、「いくらなんでもやりすぎだろ」と思うことが起こっていました。


●不斉唱チェック

 たとえば、和泉高校では、不起立に加え、君が代斉唱時に口が動いているかの『不斉唱』を管理職が確認したというのです。
 その結果、3人の教職員が該当し、式のあとの事情聴取では一人が「歌っていない」ことを認めました。現在、この一人に府教委が処分するかを検討しているとのことです。
 同校の中原徹校長は弁護士で、府教委が民間人校長として採用した人物です。さらにいえば、橋下徹氏の友人です。この「口元チェック」の連絡を受けた橋下氏は「これぞ徹底したマネジメントの好例」と大絶賛したそうです。
 今は太平洋戦争が行われていた前後の戦中の時代なのでしょうか? いったい、何のためにこんな強制が必要なのか、私にはまったく理解ができません。

●式をぶち壊した「維新の会」議員

 さらに、後味の悪い事件もありました。
 それは3月8日、守口市の芦間高校で、一人の教師が不起立をしたのですが、それを確認していた来賓の大阪維新の会の西田薫府議が、祝辞で「皆さん、ごめんなさい。社会の常識、社会のルールを教えるのも学校なのに、そのルールを守れない教員がいることをお詫びします。ほんとうにごめんなさい」と述べたのです。

 その挨拶の全文は分かりませんが、彼は「おめでとうございます」を言わなかったのです。これはヘンです。
 当然のごとく、式のあと、憤慨した複数の保護者が「お祝いの言葉もなく、式が台無しだ!」との抗議を学校と維新の会に寄せました。

 また、この騒ぎは式だけに留まりませんでした。西田議員はそのことを同じ日に「残念な卒業式」と題して、次のブログを書いています。


式典の中、来賓紹介として一番最初にご紹介頂きました。
 いつもなら「卒業生の皆さん、卒業おめでとう~」っと大きな声で一言話しますが、本日は
「皆さん、ごめんなさい」。
「社会の常識、社会のルールを教えるのも学校なのに、そのルールうを守れない教員がいることをお詫びします。
ほんとうにごめんなさい。」と…。

 こんな挨拶したのは初めてです。

 その呆れた不起立教員は、卒業証書授与の間も横のクラス担任の教員とペチャクチャペチャクチャと笑いながら話してました。

 座り続けた事に勝ち誇っていたのでしょうか…?

 私は、ただただ純真無垢な子ども達に、お詫びの気持ちでいっぱいでした。
 申し訳ない気持ちで、笑うことも出来ませんでした。
 このような不謹慎で偏った思想を持った教員に、触れさせていたことに。それも公教育の場に於いて。

 教育の正常化、急務に取り組まなければと改めて思いました。



●生徒や保護者からのコメント
 このブログのあと、じつに1078件(3月20日現在)ものコメントが寄せられました。いわゆる「炎上」です。コメントの初期は、その卒業生や保護者たちからの「式が台無しにされた」との怒りや憤りが並びました。
 以下、列記します。


2 ■卒業式に参加して

今日の卒業式に参加した保護者です。

こんな失礼な挨拶をされた人を見たのは、初めてです。
あなたの意見は、式後、校長に言えばいいのではありませんか。

卒業生は三年間、先生方にお世話になり、今日感謝の気持ちでいっぱいだったと思います。
充実した学校生活を送れたのではないでしょうか。
答辞での卒業生の涙でも明らかです。

あなたは、子供たちの三年間、先生たちほど関わったのですか。
「皆さん、ごめんなさい」とあなたに謝っていただく筋合いはありません。

先生方はあなたの部下ではありません。
部下の間違いを上司のあなたが謝っているつもりですか。

子供たちを直接教育された人を公の場で辱めていいんですか。
祝いの席で言うべき言葉だったのでしょうか。

あなたの今日の行動は、民意を反映しているおつもりだと思います。
私も大阪府民です。一民意を伝えます。
大阪府民 2012-03-08 23:58:05


5 ■無題

タイトルの「残念な卒業式」ですが非常に不愉快に思います。
ルールを守った守らなかった云々より あの場で空気を乱されたことの方がこちらとしてはよっぽど残念です。
私たちにとっては「最高の卒業式」でした。

訂正と卒業生への謝罪をお願いします。
一卒業生 2012-03-09 23:17:54


6 ■無題

 (前略)
 私たちの一生に一度しかない高校の卒業式の場で、あのような挨拶の言葉、正直なんのことか分かりませんでした。
 先生が起立せずに座っていたことは確かに間違っていたかもしれません。しかし、その場で言うことだったのでしょうか。私たちは本当に感動する卒業式で終えることができ、芦間高校の生徒として卒業できたことを誇りに思っています。
 残念な卒業式と題され、少し許せない気持ちがあります。
 私たち卒業生は3年間、ずっと見守り続けてくれた先生方に感謝の気持ちでいっぱいです。
 誰もが見れるブログでこのようなことを書かれた私たちのことも考えてほしかったです。

芦間8期の卒業生 2012-03-09 23:21:34


7 ■無題

 初めまして。この度は、私たちの卒業式にご来賓賜りまして誠にありがとうございました。
 ただ、申し訳ございませんがはっきり言わせていただきます。
 沢山の方々からおめでとうと祝っていただき、本当に大切な時間を過ごしましたが、あの場での「ごめんなさい」という挨拶。なぜ、あそこであのような自己主張をされたのですか?
いくら条例で決まっているからとはいえ、あたしたち卒業生におめでとうの挨拶もなしなのですね。

 まず第一に、昨日の卒業式での主役はあたしたち卒業生です。
 たくさんの方々に感謝して抱えきれない思い出を持ってとても良い学校だったと胸を張って言い切れます。
 その最後の最後の思い出となる卒業式を、あのような形で雰囲気をぶち壊したのは西田さん、あなたです。

 答辞をきちんと聞いていただけたでしょうか。あの答辞は、私たち生徒自身で考え出来上がったものです。
 あれを聞いても、私たち生徒が、どれだけ先生方に感謝しているか、どれだけ学校の友達や先生、すべての方を大好きなのか、 西田さんには、伝わっていなかったのですね。
 とても残念です。
 
 両親に続いて、我が子のように時に厳しく、時に優しく私たちをここまで育ててくださった最高の恩師をけなされて黙っていられません。
 どこまでも不快な思いをさせられました。

卒業生。 2012-03-09 23:25:35


9 ■無題

 あなたのした事は正しいです。
 ただあの人にもそれ相応の理由があるはずです。卒業式前に私たちの前であの人はちゃんと謝罪しました。
 公務員として守らなければならない事はあの人もわかっています。
 それでも座っていた!!

 それだけ覚悟があるはずです。
 あなたがあの人の事をクズ呼ばわりするのは構いません。
 それをわかっていてあの人は座っていたのですから。
 ただあなたは私達のたった一度しかない高校の卒業式を台無しにしたのですよ。

 ルールを守ることは確かに大切です!!
 しかしルールよりも大切な事それをあなたは知っていますか?

卒業生 2012-03-09 23:52:43


10 ■無題

(前略)
 確かに規則に従わない先生も悪いと思います。
 しかし、「ごめんなさい」から始まる答辞なんて考えられますか?普通は「おめでとうございます」ですよね?
謝るのはその後でもいいのではないですか?

 残念な卒業式は訂正すべきだと思います。

卒業生代理 2012-03-10 00:00:41


14 ■無題

 昨日は私たちの卒業式にお忙しい中ご臨席賜りまことにありがとうございました。
 条例により国歌斉唱の事情は先生方だけでなくわたしたち卒業生も重々承知しています。
 しかし わたしたち卒業生はあの先生には三年間大変お世話になり、感謝の気持ちでいっぱいのままに昨日 卒業式を終えました。
 正直に申し上げますと、あの場での先生方の態度よりも、あの場の空気を乱されたことの方が大変遺憾です。
 条例を差し引いても、わたしたち卒業生にとってまたわたしたちの保護者にとっても 母校にとっても大変失礼極まりない挨拶だったと感じております。

(中略)

 また その先生は卒業式前日に、国歌斉唱の件でわたしたち卒業生に謝罪なさりました。

 自分の行動に対して嘘をつかず、きちんと説明してくださった先生にわたしはとても感謝しています。

卒業生 2012-03-10 00:14:34


17 ■無題

(前略)
 伝わってなかったら困るので最後に一言。
 私たちは学校や先生のために書いてるのではありません。卒業生が主人公である卒業式を侮辱したあなたに非常に腹立たしく、悔しさでいっぱいです。
 私たち卒業生は最高の学校で最高の仲間、最高の先生に出会い最高の卒業式を迎えられたと堂々と言えます!!
 
 残念なのはあなたの言動です!!!

卒業生 2012-03-10 00:22:31


22 ■無題

 私は先日卒業した卒業生です。
 私は日本国民として、卒業生の一人として西田さんのおっしゃていること共感させていただきました
 私は日本国民としての誇りをもち君が代を歌いました
 しかし、立たなかった国民がいた。
 しかもそれが国に雇われている国家公務員でとても遺憾でした。
 
 芦間高校での3年間をそういった教師から学んできたと思うと凄く残念です。
 ですが、西田さんが突然にこのようなことを発言されたので私は戸惑いました。
 あれはあの場の責任者の校長から話されるべき話だったんではないでしょうか?
 西田さんも反省すべき点はあると思います。

 ですが、このような残念な卒業式と書かれるようなことが他の学校でもおきぬよう、西田さんには人力していただきたいです。


卒業生 2012-03-10 00:42:12


 これらのコメントに対しての西田議員は3月11日のブログでこう書いています。

この度の卒業、おめでとう。
また、お騒がせしてごめんなさい。

今回の僕のブログに対して、
原因は僕にあるにせよ、
方向が変わってきています。

僕に対するご意見は覚悟していますが、
このやり取りを見ている卒業生の皆さんを
結果的には、一番傷つけてしまっています。
本当にごめんなさい。


 そして以後、ブログでの発言はなされていません。


●コメントを読んでわかってくること。

 これらコメントを読んでわかってくる事実があります。

★不起立した教師を深く愛する生徒もいれば、そうではない生徒もいること。だが、どちらの場合でも、西田議員の言動を批判している。
★不起立した教師は、前日に生徒たちに不起立することを謝罪していた。
★大阪では、今後3回の不起立で「クビ」になる可能性が高い。それが分かっていても不起立をした。それを単なるルール違反との視点だけでは語れない。
 

 これは、不起立教師が原因だとか否かの話ではありません。
 あくまでも、西田議員が大人として行動できなかった一点に尽きます。不起立教師に文句があるのなら、式のあとに直接話しあえばいいだけの話です。
 
 もう一つだけ言えることがあります。
 東京都の公立学校の式典においては必ず東京都教育委員会の職員が来賓として出席していますが、これは祝辞を述べるよりも、不起立者がいるかいないかを確認するために来ているわけです。
 なぜなら、式典での起立と斉唱を義務付けたのは都教委だからです。
 同様の理由で、大阪府では、今後、式典では、君が代条例を定めた「維新の会」の議員が来賓として列席する…。それだけは間違いないはずです。
 
 もう西田議員のようなポカはないにしても。

●処分は

 3月9日までに不起立した29人のうち、2月の不起立者17人には3月9日に府教委から呼び出しを受け、「戒告処分」が発令されました。同時に、一人ひとりが別室に呼ばれ、「今後は上司の職務命令に従う」との誓約書への署名が求められたのです。

 17人のうち約半数が、60歳から再び学校で教える再任用予定なのですが、府教委職員は「署名は再任用の合否に影響します」と明言したといいます(卑劣なやり方です)。

 1999年の国旗国歌法で、日の丸が国旗、君が代が国歌と定められた以上、東京都や大阪府のような通達や条例は今後も他道府県でも出てくるかもしれません。だが、これは、「クビ」をちらつかせてまでの強制を伴わせるべきなのか? 教師でもクビになるべきは、わいせつ行為をしたとか、刑事事件を犯したとかの場合です。それと不起立が同等なのかは考えるべきです。
 
 そもそも、起立して君が代を歌ったからといって、それで直接国を愛することには絶対につながりません。

 橋下氏は何を実現したいのでしょうか? 己と意見の合わない少数者をただ切り捨てるやり方は、ハシズムなどと茶化しておだてている場合ではなく、私自身は恐ろしさを覚えます。
 
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2012/03/20 22:54 橋下徹氏 TB(2) コメント(0)
 私は、橋下徹・大阪市長はやり手であるとは思う一方、怖さも感じています。
 それを思わせてくれたのが、昨年6月、大阪府知事時代に制定した「大阪府君が代条例」です。

 これは、大阪府内の公立学校の式典において、「日の丸に起立し、君が代を斉唱すること」を義務づけたもの。
 そして、橋下氏が擁する「維新の会」が成立を目指す「教育・職員基本条例」では、これに従わす、「不起立」して斉唱しない教職

員には以下の懲罰を想定してました。

●1度目は「戒告」か「減給」
●2度目は「停職」
●3度目で分限免職

 これは、自分と意見が異なる者を、ただ排除しようとする道筋でしかありません。


●東京都教育委員会の場合

 じつは、東京都においても、2003年10月23日に、東京都教育委員会が同様の通達を出していますが、「自分の思想や良心には背けない」「クリスチャンの自分には立てない」などの理由で、これまでに述べ437人が不起立を行っています。

 そして都教委の懲罰は以下のようになっています。
●1度目は「戒告」
●2度目は「減給1ヶ月」
●3度目は「減給3~6ヶ月」
●4度目は「停職1ヶ月」
●5度目は「停職3ヶ月」
●6度目以降は「停職6ヶ月」

 さらに、これに留まらず、

●担任外し(クラスの担任教師にさせない)
●長距離異動(片道2時間はかかる学校への異動)
●過員配置(すでに教科担当の必要人員がいる学校へ異動させる)
●再任用取り消し(定年退職後の60歳から65歳までの5年間は非常勤教員として働けるのに、その合格を取り消す)

 これら処分の不当を訴え、東京都では20件以上もの裁判が起こされ、その原告数は1000人弱にも膨らんでいます。


●定職6ヶ月の辛さ

 実際、東京都では、停職6ヶ月という最も思い処分を受けた教員は2,3人いますが、その一人の根津公子さん(昨年、定年退職。家庭科教師)は、私の記憶では3度もの「停職6ヶ月」を受けてきた人です。
 根津さんは、父親が太平洋戦争時に中国で参戦していたその経験から、どうしても戦争に繋がるものには賛同はできないと、式典では不起立を貫いてきました。

 しかし、根津さんは強いだけの人ではありません。特に、2回目の「停職6ヶ月」の処分を受ける前は、ご自身も支援者も、「次は免職なのではないのか?」と予想していました。
 つまり、教職を失うということです。

 「どうする?」

 根津さん自身が深く考えました。そして出した結論は、「やはり私は私を貫くしかない。ここで私の信条を私自身が裏切ったら、私が教職を続けられたとしても一生後悔する」ということでした。
 しかし、この頃、根津さんは顔以外の全身に発疹が出ます。夜も寝れない日もありました。

 そして2008年3月、卒業式で不起立。

 そして3月31日、根津さんの学校に、都教委の職員が処分を言い渡しにやってきます。多くの支援者とメディアが校門前に集まり、その固唾を見守ってきました。ああ、これだけ生徒に愛されてきた根津さんがいよいよ免職なのかと、誰もが諦めにも似た気持ちをぐっとこらえていました。

 そして数十分後、学校の2階の窓が開き、根津さんが支援者に大声で伝えました。

「ねえ、聞いて。都教委は、私を免職にする理由がないと言いました!」

 え? 

 次の一瞬、それまで何ヶ月も、根津さんをクビにするなと都教委に訴え続けてきた支援者は雨の中で泣いていました。

 そして支援者の前に現れた根津さんは、こう言ったのです。

「よかった。また教師を続けられる!」

 その安堵した顔は、いかにそれまで苦しんでいたかを表していました。
 とはいえ、受けた処分は再び停職6ヶ月。東京都の場合、不起立で被る被害はあまりにも甚大です。
 特に停職の場合は、その間は賃金ゼロ。停職6ヶ月ではボーナスもありません。
 たった一度の不起立であっても、60歳からの再雇用もなくなります(ただし時効5年とも言われています。不起立しても、以後、5年以上は起立して定年退職を迎えれば再雇用はOKだと)

 しかし、不起立を続けても都教委に免職決定をさせなかったのは、保護者や教育に関心を寄せる市民の支援活動があったからにほかなりません。


●東京と大阪の違い

 さて、大阪府の君が代条例ですが、私が、これはまずい、東京以下だと思ったのが、東京都の場合は、あくまでも都教委という教育行政機関が作った通達ですが、大阪では「維新の会」という、「政治の力で」同様の条例を作り上げたことです。

 政治が教育にどこまで介入すべきなのかの議論は多々ありますが、大阪府の場合は、一党独裁が今後も同様のことを繰り出してくるのではないかとの懸念があります。


●だがうまくはいかないはず

 さて、東京都では裁判が20以上もあると書きましたが、今年の1月と2月、最高裁において、判決の出た裁判があります。

★一つは、「戒告」「減給」「停職」などの処分取り消しを求めた裁判。
 1月16日、最高裁は「懲戒処分で妥当なのは『戒告』だけ。減給や停職には、処分相当とする具体的事情がなければ許されない」と、「戒告」以上の処分を戒めたのです。

★一つが、都教委の通達に基づく、校長の職務命令(立って歌いなさい)に従う義務がないことの確認を求めた裁判
 これは、東京地裁では原告の全面勝訴。しかし高裁では逆転敗訴。そして2月9日、最高裁は「上告棄却」を言い渡します。

 もちろん、原告はこの判決に憤っています。しかし、判決文を読んでみると、「なぜこれで敗訴なのか」と思わせるほどに、都教委のやり方を戒めているのです。
 5人の裁判官のうち、裁判長は反対意見を述べ、2人の裁判官も、反対と同義とも取れる「補足意見」を述べているのです。

 たとえば、櫻井龍子裁判官は、「職務命令は教職員の思想と良心の自由を制約し、(不起立者への戒告、減給、停職と重くなる)加重処分は裁量権の範囲とは到底いえない。教育の現場でこのような職務命令違反行為と懲戒処分がいたずらに繰り返されることは決して望ましいことではない。教育行政の責任者として,現場の教育担当者として,それぞれがこの問題に真摯に向かい合い,何が子供たちの教育にとって,また子供たちの将来にとって必要かつ適切なことかという視点にたち,現実に即した解決策を追求していく柔軟かつ建設的な対応が期待されるところである」との補足意見。

 横田尤孝裁判官は「都教委が、本件通達発出後これまで本件職務命令違反者に対して行ってきた、おおむねstyle="color:#FF0000">違反1回目は戒告、2回目及び3回目は減給、4回目以降は停職という懲戒処分の量定は、免職処分にまでは至らないとはいえ、一般論としては問題があるものと思われる」と補足意見。

 そして原告の一人に「素敵だ」と言わしめたのが、今月で退官する宮川光治裁判長の反対意見です。
通達は、教育者の魂というべき教育上の信念を否定する。不起立は憲法上保護されるべき。本件のような紛争が繰り返されるということは、誠に不幸なことである。こうでなければならない、こうあるべきだという思い込みが、悲惨な事態をもたらすということを、歴史は教えている。
 国歌を斉唱することは、国を愛することや他国を尊重することには単純には繋がらない。国歌は、一般にそれぞれの国の過去の歴史と深い関わりを有しており、他の国からみるとその評価は様々である。また、世界的にみて、入学式や卒業式等の式典において、国歌を斉唱するということが広く行われているとは考え難い。
 思想の多様性を尊重する精神こそ、民主主義国会存立の基盤であり、良き国際社会の形成にも貢献するものと考えられる」


 つまり、最高裁の判断は、教職員は通達には従わねばならない。だが、不起立の自由はある。その不起立をして懲戒処分は「戒告」だけに留めるべき・・ということです。
 もちろん、減給や停職は「処分相当とする具体的事情」があればできるとの含みも残していて、なおかつ、これら不起立教員が定年退職後に臨時教員として再就職できるかは未明です。

 とはいえ、これが大阪府に影響を与えないはずがありません。

 実際、1月16日の最高裁判決の翌日、大阪府の松井知事は
●一度目は「戒告」
●2度目は「減給」
●3度目は「停職も選択肢に」

 と条例案を修正する方針を出しました。しかし、あくまでも、最高裁は「処分は戒告まで。機械的に加重していく処分は容認されない」との見解を示したのです

 また、橋下市長も、市議会に府と同様の条例の提出を準備していますが、「単純に3回で免職にはしない。不起立のあとに『指導研修』を入れて是正の方向にもっていく。それでも嫌だと言うなら辞めてもらうのが筋」と発言しています。
 つまり、橋下市長は最高裁の判断と対峙しています。今後の動向が注目されます。


●今後のこと

 来月は卒業式シーズン。東京都ではまた何人かの教員が不起立するかと思います。その教師たちに都教委は3月31日にどんな処分を下すのかが注目されます。
 また、東京都で、これまで減給や定職などの処分を受けている教職員の裁判はまだ続いていますが、その一人の判決も4月21日に予定されています。この判決で、果たして、最高裁の判断を受け、どんな結果が出されるのかも注目されるところです。

●ちなみに不起立のこと

 たまに「不起立が式典の進行を妨げる」との情報もありますが、だいたいがガセネタです。
 というのは、実際に式典に臨めば分かりますが、9割以上の人が立つ会場で、少数の人が座っても気づかれないからです。
 これが逆に、日の丸掲揚時には「座って君が代を歌いなさい」との通達だとしたら、従えない人たちは立つことになり、さすがにこれだと目立ちますが。
 実際、勇気を出して不起立したのに、学校側が気づいてくれなかった・・という教師もいます。
 
 日の丸や君が代には、それぞれの信条や思想で、好き嫌いがあって当然です。
 しかし、都教委や橋下行政においては、意見が違うからといって、ただ弾圧する。ただ強制する。
 私はここが根本的に間違っていると思います。


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2012/02/15 12:19 橋下徹氏 TB(0) コメント(0)
 橋下徹・大阪市長が誕生しました。
 橋下市長の目標の一つは「大阪都」計画。

 これは、もちろん「東京都」をモデルにしての制度改革です。

●東京都って何だろう?

 さて、では、その「東京都」とは何か? と改めてきかれるとなかなか答えられません。どこが、他の道府県と違うのか?

 理解しやすいよう、「住所」から見ていきましょう。

 たとえば、こんな住所があります。神奈川県横浜市南区。ほかにも、宮城県仙台市青葉区、等々。
 ところが、いわゆる東京23区は、たとえば、「東京都練馬区」「東京都港区」・・。

 そう、他の政令指定都市などでは、○○県○○市○○区 といった住所なのに、東京都だけは、東京都○○区といった具合に、都のすぐあとに区が来るのです。

 これはなぜかというと、東京23区は、都の「内部団体」としての位置づけだったからです。
 もっといえば、東京23区は、いわゆる普通の一人前の自治体=「基礎的自治体」ではなかったということです。都という親から自立できない子どものような存在でした。

 たとえば、交通、上下水道、清掃などの大型公共事務は23区が行うのではなく、親である都が行い、固定資産税・市町村民税・特別土地保有税は、23区の区民が区にではなく、いったん都に収め、都がそのうちの44%を各区に配分するという、小さなヤクザ組織のいくつかが本部に上納金を収め、本部がそのうちの何割かを末端組織に配分し直すようなものです。

 つまり、他の自治体と違い、一つの地域に「道府県」の権限と「市町村」の権限とがかぶさる二元構造ではなく、都が一元化して、この1000万人近い人口をもつ地域を治めていたわけです。
 ただし、他の市の区と違い、区議会、区役所など「市」としての機能も備えていたので、一般住民には、まさか自分たちの街が「内部団体」であるなど知らなかったはずです。

 簡単に言えば、橋下氏が目指すのは、大阪都が直接、現在の大阪市と堺市をいくつかの区にして、「内部団体」として、一元化して治めるということになります。
 これまでは、各自治体で決めていた事柄が、今後は大阪都(実現すればですが)が「やれ」と言えば、各区でいっせいに実現します。非常に効率がいいといえばいいやり方です。
 その場合、現在の市役所や市議会がどう再編されるのかは、ちょっと予想がつきません。橋下氏のことだから、大胆なリストラを行うかもです。

 
●内部団体から独立していた東京都

 しかし、じつは、2000年4月から、東京23区は都から独立しました(「都区制度改革」と呼びます)。当初は、渋谷区が渋谷市、新宿区が新宿市になるのかとの予想もあったのですが、名称は区のままです。
 
 これは、簡単に言えば、23人もの子どもを抱えて財政的に苦しくなった親の事情と、そろそろ、自前の財源でもって親から独立したがっていた23人のこどもたちの、利害が一致したからです。

 この両方の願いをかなえるのに、ぴったりだったのが「清掃事業」でした。簡単に言えば、ゴミの収集とその焼却や埋め立てまでの事業です。

 なぜか。当時、東京都には清掃事業だけで1万人もの職員がいて、年3000億円もの金がかかっていました。これをすべて23区に移管すれば、1万人のリストラと、年3000億円の経費削減ができるというわけです。
 そして、23区にすれば、「基礎的自治体」の条件の一つとして、清掃事業を自前でできさえすれば、親から独立できる。

 東京都豊島区の池袋。この駅を降りると、場所によっては高さ200メートル以上もの煙突を目にできます。90年代後半にできたゴミ焼却場のものです。

 1996年、当時、東京都は、東京23区の各区に一つずつ「清掃工場」「清掃車庫」を作ることを進めていました。当然、各区で大反対運動が起こっていたのですが、当時、ほとんどの都民は「なぜ」なのかを知ることがありませんでした。
 私はたまたま、ある取材の過程でそのウラ、23区独立問題、を知ったのですが、少なくとも各区が「清掃工場」と「清掃車庫」さえ整備すれば「ほら見てください。ウチの区は、普通の自治体としての条件が整ったんですよ」と国に示せるわけです。

 国は1990年に、23区は「基礎的自治体(普通の自治体)」だとする答申を出しているのですが、その条件が、清掃事業の各区への移管でした。
 そして、通常、国の答申は「答申10年」と言われているように、10年経てば死文化します。つまり、各区にすれば、なんとしても2000年までに清掃事業を整備しておく必要があった。それが、特に池袋(豊島区)と渋谷区での無茶な清掃工場の着工につながり、住民の大反対運動が起こったわけです。

 しかし、考えてみれば、あの狭い23区に各区が一つずつ清掃工場と清掃車庫をもつなんて、とてもではないが現実的な話ではありません。

 実際、清掃工場の「各区に一つ」はじきに立ち消えとなるのですが、清掃車庫だけは強引に建設が進みました。本来の都営住宅建設予定地に、ハローワークの建設予定地に、桜並木の遊歩道に。
 この時期、どこの区役所に尋ねても「勘弁してください。清掃車庫の候補地はあそこしかないんです。ここで建設ができなかったら、23区は永久に独立した自治体になれないんです」と必死に応えていました。

★メリットは何か?

 では、内部団体から基礎的自治体へとなることでのメリットは何だろう? この件を担当していたある職員はこう応えています。
「都が23区800万人の相手をするよりも、それぞれの区が数十万人に第一義的責任をもつほうが、住民との風通しがよくなるはずです」

 目の届く範囲でのゴミ収集が行われるので、効果的な清掃事業を行える。
 

★デメリット
 ごみ収集だけは十分な予算のある都が対処すべき。でないと、区の少ない予算では民間業者への委託が増え、ずさんなゴミ処理が横行する。(つまり、相反する二つの見方があります)

 国民健康保険も区によって高い、安いのバラツキが現れる。等々


●橋下氏はどうするのか?

 さて、2000年3月までは内部団体で、4月からは基礎的自治体へと変わった東京23区。
 とはいえ、今でも、都と区の間の役割分担と、財源配分の明確化については都区の合意は得られていないという、都がまだまだ23区を内部団体扱いしているという問題点はあるのですが、橋下氏が目指すのは、どちらかというと、2000年3月までの、都と23区との関係なのでしょう。

 だが、東京都と23区とは、橋下氏の目指すのとは逆の方向に行きました(と言っていいのかな)。

 ともあれ、今回の市長選で大阪市民は橋下氏を選んだ。そして、橋下氏は「ハシズム」で行政を断行する。
そうしてほしいのが「民意」であるなら、私たちは今後、大阪市と境市とがどうなるかを見守るしかできません。

 要は、その地域の住民が暮らしやすくなればいいのです。
 だが、経費削減を優先し、弱者を切り捨ててきた橋下氏にそれができるのか。その疑念だけはどうしても払拭できません。


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2011/11/28 23:37 橋下徹氏 TB(0) コメント(0)
 橋下徹氏は何をしたいのか?

 橋下徹氏が大阪市長選に出るために、先日、大阪府知事を辞任しました。
 
 私は橋下徹・元大阪府知事が何をしたいのかよくわかりません。
 私は、彼を、マスコミが伝えるほどには高く評価していません。橋下氏は政治体制の改革にはとても熱心で、筋も通っている。よく勉強もしている。だが、一方で同時に社会的弱者を切り捨てる。そこが評価できません。

 インターネットなどでも話題になったのは、2008年10月23日、府の財政再建の一環で断行した私学助成削減を巡って、現役の私立高校生たちとの対談です。この場で、母子家庭の私立高男子生徒が、助成削減による不安を訴えると、「いいものを選べば、いい値段になる。公立にもいい先生はいる。僕も公立だからね。僕からすると、自分に合う公立高校の進路選択もあったのではないか」と、今さら言っても仕方のないことを語り、最後は「日本は自己責任が原則の国です」で締めくくったのです。

 私も母子家庭で育ったので、高校時代のわずか数千円の奨学金(もらっていたのはクラスで3人だけでした)にも助けらたことを覚えています。今の時代、本当に1000円、2000円の金すらに困っている家庭は増えています。子どもの貧困率は15%。7人に一人が学費や給食費にも困り、1日2食や、風呂の水も4日に一度取り替えるような家庭が増えています。
 
 それぞれの家庭の状況を顧みることなく、一律に削減を試みる橋下知事のやり方に違和感を覚えました。

 確かに、日本のどの自治体も予算は厳しい。だからこそ、あらゆる分野で予算を削減しているわけです。
 だが私は、少なくとも「教育」「医療」「福祉」においてだけはこれ以上の削減は、逆に社会のひずみを生むと思っています。


●346人の大量クビ切り

 これはマスコミではほとんどまったく報道されませんでしたが、こんなこともありました。

 2009年3月、大阪府立学校に勤務する非正規職員(教務事務補助員、図書室補助員、理科実験補助員、家庭科実習補助員、校務補助員)の346人がいっせいにクビを切られました。
 これら346人の多くの年収は105万円。それに児童扶養手当の50万円を合わせてやっと暮らす母子家庭もいたのです。何年働いても賃上げはゼロ。だが、それでも唯一の収入源として一所懸命に働いていたのです。

 ところが、08年、橋下知事は「大阪維新プログラム」なる経費削減計画の下、補助員の廃職を決定しました。
 私も、これら346人の人たちも、支援する労組も、まったく理解できなかったのは、新しい仕事を紹介するでもなく、ただ切り捨てたことです。さらに不可解なのが、その頃社会問題と化していた「派遣切り」などで無職となった人たちのため、大阪府も400人の緊急雇用を講じたことです。

 346人のクビを切りながら、社会的には、400人を雇用して救済したことだけが表に出る。

 そして、呆れたのが、346人の解雇で年5億円が浮く一方、19億円もかかる大阪市繁華街の御堂筋のイルミネーション計画を推進していたことです。さすがにこれは、緊縮財政の下では必要ないでしょう。
 だが、08年6月21日、大阪府関連労働組合連合会が橋下知事との交渉で、「非常勤補助員の雇用よりもイルミネーションが大切なのか」と問い質すと、知事は「私のビジョンではそうだ」と返しているのです。

 私はこのことを、09年6月号の月刊「世界」(岩波書店)に書きました。
 私のHP http://homepage2.nifty.com/kasida/social-matter/frame-kansei-wp2.htm にも公開してます。

 しかし、私以外はどのメディアもこれを取り上げない。そこで私は、あるテレビ番組制作会社にこの企画をもちかけたところ大変な関心をもってくれたのですが、その会社がテレビ会社Aにその企画をあげたところ、こう言われたそうです。
「橋下知事は今、抜群の人気を誇っている。私たちも彼が進める政治改革を伝えたい。そこのところで、それに水を差す報道はできない」
 日本のマスコミはこの程度です。
 そして、346人は果たして09年3月に解職されました。その中の一人Aさんにはずっと取材をさせていただいたのですが、解職後、電話をするともう引っ越したのかつながりませんでした。どこに行ったのか、今何をしているのか、とても気になります。
 以下は、346人のなかの有志が08年12月頃に催した解雇反対の集会の模様の動画です。




 もちろん、橋下元知事の行動を私は全部否定しているのではありません。既存勢力と闘う姿勢はたいしたものだと思います。
 だが、彼が立ち上げた「大阪維新の会」大阪府議団が今年5月に可決させた「学校での君が代斉唱時に起立を義務付ける条例案」にはがっかりしました。既存勢力との闘いとは程遠いレベルの条例だからです。

 本日は時間がないので、これについてはまた書きます。 


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2011/10/28 12:40 橋下徹氏 TB(0) コメント(0)
取材のカンパをお願いいたします
1都6県にまたがるリニア問題を一人で取材することは自分で選んだ道でありますが、それも多くの方から取材費カンパというご支援をいただいたからです。とはいえ、2022年末にその資金プールがついに底をつき、東京都や神奈川県以外の遠方への取材を控えざるを得なくなってしまいました。今一度、ご支援を賜りたくここにそのお願いをする次第です。ご支援者には、今年には発行予定のリニア単行本を謹呈させていただきます。私の銀行口座は「みずほ銀行・虎ノ門支店・普通口座・1502881」です。また100円からのご寄付が可能なhttps://ofuse.me/koara89/letter もご利用ください。私と面識のない方は、お礼をしたいので、ご支援の際に、できればお名前を連絡先を教えていただければ幸いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。  樫田拝
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