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●小澤輝真社長と上川陽子法務大臣との面会
 刑務所や少年院の出所者などを積極的に採用する北海道の北洋建設(建築会社。小澤輝真社長)。
 この会社のことは本ブログでも何度か書いているが、4月24日、小澤社長が上京し、上川陽子法務大臣と面会しました。

小澤社長と上川法務大臣面会

 北洋建設は昨年、刑務所内に貼ってもらうための職員募集のポスターを作製し、全国の刑事施設に送付。その後、同社がすべての刑事施設にアンケート調査したところ、これだけ出所者の更生に努めている会社なのに、北洋建設のことを「知らない」、ポスターも「貼っていない」などの回答が散見され、北洋建設ですらこれだから、受刑者のための就職情報はごく限られていると痛感した小澤社長は、上川大臣にその是正を訴えるために上京したということです。

北洋建設のアンケート1←アンケートの回答の一つ。北洋建設の活動を知ってはいるが、ポスターは貼っていない。北海道は遠いからとの理由。

 小澤社長は脊髄小脳変性症という小脳が萎縮する難病に罹患し、本人曰く、余命4年。発病後は自力歩行ができなくなり、杖歩行、それもできなくなり今では車椅子での移動を余儀なくされ、言葉もろれつが回らなくなっている。本人もそれが「きつい」ようです。
 
●「周知が至らず、北洋建設には多大なご負担をかけてしまった」

 小澤社長が上川大臣と会うのは昨年末以来2度目のこと。
 大臣室では、上川大臣は小澤社長を迎え入れるため、その入室の5分以上も前から立っていた姿に好感が持てました。
 会見で、小澤社長が、「自社のポスターが貼られてもいないし、その理由が『当施設が北海道から遠いから』という、地元に帰りづらい受刑者にすれば実は好ましい条件が否定の理由に使われているのはありえません」と語ると、上川大臣も、「確かにその理由はおかしいですね。(受刑者には就職できるのは)このエリアだけと制限するのではなく、全国が対象となるべきです」との趣旨の発言をしたあと、受刑者更生のために多大な資金を投入してきた小澤社長には「(法務省から刑事施設に対して)十分に周知していなかったため(出所者の更生が進まず)、北洋建設には長い間ご負担をおかけしながらも、ただただひたすら出所者を受け入れていただき、頑張っていただいたとはありがたく思います」と、行政としての一定の反省があることを認める発言をしたのです。
 私も詳しくは知りませんが、法務省内部には今、出所者の更生を進めるためのワーキングチームがあるようで、この会見でもその主要メンバーが同席しておりました。このあたりの情報は今後要チェックです。
 
 上川大臣のことは詳しくは知らないので、断定的な評価はできませんが、少なくともこの日の対応については、ほかに取材していたメディアの方々も「大臣は官僚が作ったマニュアル文書ではなく、自分の言葉で交渉に臨んでいた。行政としての周知が不十分であることも認めた。一気には無理でも、出所者を巡る社会環境が少しは是正されるかもしれない」と語っておりました。

●日本初の刑務所用求人誌「Chance!!」

 面白かったのが、小澤社長の隣に座っていたのが、前衆議院議員の鈴木宗男氏だったこと。
 鈴木氏は北海道出身であることで小澤社長とは懇意の仲ですが、この日も羽田空港から法務省にまで車で小澤社長を連れてきたのでした。
 鈴木氏も2010年12月から2011年12月までの一年間、収監された経験がありますが、次の発言には実感がこもっておりました。
「私も刑事施設にいましたが、周りの受刑者を見ていると、多くの人が出所しても行く当てがないんです。これはまずい。現場のことを政治家は知らない。少しでも更生できる環境整備を」
 
 じつは、小澤社長、24日は法務大臣との面会が実現したわけですが、25日にもう一つの目的がありました。安倍首相との面会です。
 とはいえ、これは面会を要請しても返事がなし。法務省側も官邸に面会できないかを打診したようですが、回答なし。
 そこで、25日13時、小澤社長は官邸前まで直接赴いて、せめて要望書だけでも手渡そうと試みましたが、官邸前の警備員にさりげなく「観光ですか?」と釘を刺され、予想通りではありますが、中に入ることはできませんでした。
 私は、25日は1時間くらいしか時間を割くことができず、途中で失礼したのですが、思わぬ収穫が。以前から会いたいと思っていた人に会えたことでした。
 ㈱「ヒューマン・コメディ」の三宅晶子さん。

Chance!! 三宅晶子さん←刑務所や少年院への専用求人誌「Chance!!」をもつ三宅さん。

 ヒューマン・コメディは今年の3月に、日本では初めて刑事施設の入所者に向けた求人誌「Chance!!」を創刊したことで、その世界では知られています。
 Chance!! 創刊号には12の企業が掲載されており、その数社には既に応募があったとのこと。
 ヒューマン・コメディについては、そのうちゆっくりと取材をさせていただくので、詳細は後日。

Chance!! 前田←chance!!創刊号に掲載された12社のうちの1社の求人広告。

●僕は金は残さない。この活動のために使う


 それにしても小澤社長はその病状にも関わらずパワフルだな。
 法務省での会見後、以下のことを話してくれました。
「病気はきついです。しゃべることもだんだんできなくなっているし。それでも、生きているうちにやれることをやる。お金は残してしまえば税金をかけられるだけだから、僕はこの活動のために使います。出所者の更生にはお金かかります。でも僕は『社長』という立場と『土地がある』という立場にいるので、今まで土地を何度も売ってそういう金を捻出してきました。最初が3000万円、次が5000万円くらいだったかな。とにかくポジティブにやっていくだけです」

 今年も北海道に言って取材をしなければ。

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2018/04/26 09:59 未分類 TB(0) コメント(0)



●住民訴訟、第一回口頭弁論始まる
4月16日14時半。
 東京地裁で、東京都中野区にある「平和の森公園」の再整備計画に対して、住民が「中野区は、公園の価値を減少させ、適正な管理をしない」として、中野区長を訴えた「住民訴訟」の第一回口頭弁論が開催されました。

 東京地裁で一番大きな103号法廷を確保したということは、裁判所も大きな要件だと判断したということです。果たして、16日は、98の傍聴席を求めて115人が集まり、抽選での入廷となりました。


●平和の森公園の再整備計画
 詳しくは、本ブログの過去の記事を読んでもらうとして、ごく簡単に言えば、以下の説明になります。
★2015年3月。中野区の田中大輔区長が、平和の森公園(5.5ha)を、東京オリンピックの機運を区民のスポーツ振興に活かすため、スポーツ公園に整備すると発表。
★体育館、陸上競技場、少年野球場の拡幅などで、公園の3割が失われ、2万5000本の樹木のうち1万8000本もが伐採されることに(区の当初の説明は226本)、市民団体「緑とひろばの平和の森公園を守る会」が設立する。
★守る会は、アンケート、署名などで、区民の多数が再整備に反対であることを数字で示してきた。区民の税負担も80億円以上に上ることも問題視した。
 だが区は方針を変更せず、また、守る会のメンバーが区に対して出した「住民監査請求」にも、地方自治法で定めた「請求人に陳述の機会を与えなければならない」とした手続きを行わずに、「監査請求の要件を充たしていない」との理由で住民監査拒否との回答書を送付。

住民監査拒否

★2018年1月15日には伐採開始
★最後の手段として、守る会の5人のメンバーは「住民訴訟」を提訴する。

伐採される平和の森公園


●「工事差し止め」と「住民訴訟」との違い
 私がこの裁判で関心を惹かれたのは、これが「工事差し止め」ではなく「住民訴訟」という闘い方を選んだということでした。
 この裁判の1カ月前の3月17日、平和の森公園近くの会館で、「平和の森公園を守ろう!」と題した裁判の説明集会が開催され、約70人の区民が集まりました。
 主任弁護士となる小島延夫弁護士(東京駿河台法律事務所)らは、一般の工事差し止め請求と住民訴訟との違いを以下のように説明。

差し止め請求と住民訴訟との違い


★門前払いの心配は不要
 工事差し止め請求なら、裁判所が「原告適格」(訴える資格があること)がないと判断すれば門前払いの可能性があるが、住民訴訟であればその心配なく裁判は始まる。

★原状回復される可能性が高い
 工事差し止め請求で勝訴して工事が止まっても、再植林など原状回復措置は取られない。だが今回の住民訴訟は、「区長による再整備が違法」だと裁判所が確認することが目的なので、勝訴となれば、公園の価値が下がったままの違法状態は認めらないから、原状回復される可能性が大きい。


●第一回口頭弁論
 今回は5人の原告のうち、3人が意見陳述を行いました。
 その内容については、こちらのアドレスにアクセスしてください。

(文中にxx枚目とあるのは、スライド上映しながらの意見陳述でしたが、その投影番号です)

原告の一人、根岸志のぶさん←原告の一人、根岸さん。

 印象的だった陳述内容もありました。

★これは何を撮影したものと思いますか? 毎年夏休みに、NPO『緑の学級』主催で行われる「夜の平和の森公園を観察する会」で『羽化』真っ最中のセミの姿を目を輝かせてじっと見守る子どもたちです。185本もの樹木の伐採によって、こうした観察もできなくなってしまいました。

★平和の森公園は、中野区で唯一の何もない草地広場があります。多くの人々の憩いの場として、あるいは、身体を動かす場と して愛されてきました。
 守る会が中野区役所前で集会をしていた時、1歳ぐらいのお子さんをバギーに乗せて通りかかった若いママさんが「発言させて下さい」と、「私は、子どもを外でのびのび遊ばせたいと思っていた時、緑豊かな 森と広い草地広場があるこの平和の森公園を知り、引っ越しをしてきました。引っ越しをしてから再整備のことを知りました。こんな貴重な緑と広場が変わるなんて考えられません。なんとしても緑と広場を残してほしい」と涙ながらに訴えました。

 つまり、これまでできたことがこれからはできなくなる=価値が下がる、ことを住民は訴えたわけです。
 
 この日は住民側の意見陳述で終わりましたが、古田孝夫裁判長からは、「被告が『適正な管理をしない』とは抽象的すぎます。何を示すのか、具体的に特定してほしい」との要請がありました。
 児島弁護士は「5月末までに」とそれを確約し、次回口頭弁論は6月13日11時半からとなりました。


●「結審には1年もかかりません」
 通常、こういった市民団体の裁判では、裁判後に裁判所内の控室か、近くにある弁護士会館の一室で報告集会を開催するものですが、今回は、近くの日比谷公園。

日比谷公園での裁判集会。原告4人+小島弁護士←原告5人のうちの4人と小島弁護士(右端)

日比谷公園での報告集会


 ここで小島弁護士が強調したのは

「まさに、公園の価値が下がったかを示せるのがポイントになります。だから、被告は逆にスポーツ公園にすることで価値が上がったというかもしれません」

 おそらく、本裁判は2カ月ごとの開催となりますが、住民から小島弁護士に「裁判は何年くらいかかるのでしょう」との質問に小島弁護士は「そんなにかかりません。6月に次回口頭弁論があり、その次の8月に区が反論、主張をして、早ければ10月には結審するかもしれません」とのことです。

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2018/04/23 15:50 環境問題 TB(0) コメント(0)


●岐阜県のリニアルート、245Km地点での放射線測定

 愛知県の「春日井リニアを問う会」の川本正彦代表から、4月上旬に実施したという、リニアルートの245Km地点(品川駅から245Km)での放射線測定の結果が送られてきました。

 川本さんは、データに信頼性をもたせるために、この調査を過去何度と実施しております。また、岐阜県在住で核開発に反対する運動を展開する市民団体「多治見を放射能から守ろう!市民の会」の井上敏夫代表も、リニアルートが決定した2013年には早くも同地点で測定を行っています。

 その結果の概要を2年前、私が整理したのが以下の表です。単位は毎時マイクロシーベルト。
 使用した機器は、アメリカ製のInspector。地点②、③、④はウラン鉱床地帯です。

岐阜県245Km地点 3回測定

 2年前の測定を取材した時の記事はこちらをご覧ください


●今回の測定結果

 で、今年4月9日、川本さんは再度計測を実施しました。
 その結果は以下の通りです。
 ただし、今回はInspector機は使用しておりません。
 そこで、ルート上の値とウラン鉱床地帯上での値とを比較するために、2年前と今回とで使用した、Inspectorではない測定器の値も公開しております。

岐阜県245Km地点 180409測定
 
 これを見て分かるのは、Inspectorではない測定器でも、やはりルート上の値のほうがウラン鉱床地帯上の値よりも高いということです。
 
 じつは、ある情報ルートでは、岐阜県ではすでに「ウラン残土が出た」との話も私の元には届いておりますが、こういう2次情報、3次情報はすぐに信じることは避けます。
 でも、245Km地点の地下に「何かがある」との推察は外れてはいないと思います。何があるのか。
 これは、市民団体が心配しているだけではなく、岐阜県の有識者も心配していることです。

 それについては、『リニア、ウラン残土が出てきたらどうするのか? → 「出てくることを前提にしていません」』と題したブログで紹介しております。ご参照ください。
 
 JR東海、岐阜県、国には本気の調査を望むところです。
●事業認可後に行ったウラン分析のためのボーリング調査は1地点の2回のみ

 最後に、この岐阜県作成の図の説明を。

ウラン分析のボーリング 2016年7月公表01 ウラン分析のボーリング 2016年7月公表02

 上の図はJR東海がどこで、ウラン分析のためのボーリング調査を行ったかの図です。
 『拡大1』と『拡大2』とありますが、「拡大2」は、「拡大1」の図にある「約3Km」の左側に位置します。「拡大1」の図の「凡例」で覆われている箇所です。この「拡大2」に245Km地点があります。
 この図が2016年7月に公表されました。

ウラン分析のためのボーリング2017年6月公表

 この図は、2017年6月に公表。

 点線はリニアルート。
 この一帯で掘削工事で発生する残土は、拡大図にある「南垣外非常口」から排出されます。その非常口の掘削が始まっているのは(本線トンネルの掘削は3年後)、前回の本ブログで伝えた通りです。

 当初「リニアルートはウラン鉱床を外れている」と主張していたJR東海ですが、岐阜県環境影響審査会などの指摘も受けてか、ウラン鉱床ではないが地質が似ている地帯とのことで、「約3Km」の地点でのボーリング調査を実施ます。

 ところが、その調査結果を描いた「2017年6月」公表『ウラン鉱床に比較的近い地域及び地質が類似している地域における地質状況について(平成28年度調査分)』と、その前年の「2016年7月」公表前年に発表した同名の資料を見ると、以下のことがひも解けます。


★「3Km幅」において、ウラン分析をするボーリング調査は3カ所
★「3Km幅」外においては、ウラン分析をするボーリング調査は1カ所

これを時系列で整理すると

 ★2012年1月19日(検査のための試料採取日) ⑧地点(245km地点)
 ★2013年1月8日(分析する会社の試料受付日) ⑤地点(南垣外非常口に近い場所)
 ★2015年12月25日(試料採取日) ③地点(南垣内非常口かそれに非常に近い場所)
   (上記3地点の地点番号は「2016年7月」公表版による)
 ★2016年10月17日(試料採取日) ①地点(南垣内非常口かそれに非常に近い場所)
  (この地点番号は「2017年6月」公表版による)

 JR東海はこの地域で「11本のボーリング」を実施しておりますが、そのうち「ウラン分析をする」地点は3地点(4回)でしかありません。
 そして、最初の二つは、公にはリニアのルートが確定していない時期での調査です。
 
 つまり、2014年10月の事業認可後にJR東海がウラン分析のためのボーリング調査をしたのは2地点(ほぼ同地点)。

 これも以前ブログに書いたけど、思った以上に反響がなかったのが、JR東海がじつは2012年や2013年1月という、まだリニアルートが確定していない時点で、まさしく川本さんたちが測定した245Km地点や非常口予定地近くでボーリング調査を行っていたという事実です。記事はこちら

 なぜ、ルート確定前に、まさしく今の確定ルート上でのピンポイントの調査が可能なのか。
 そのなぞ解きをする時間はありませんが、2016年と17年に公表された報告書では、ウラン濃度は低いので問題なしとの報告が上がっています。
 だがそれならそれで、なぜJR東海は、2012年と2013年にすでにウランの有無の調査をしていた事実を一般住民に説明してこなかったのか?(もししていたとしたら、この文節は後日削除します)

 細かな点でいくつかの疑問を覚える事案です。

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←拙著「悪夢の超特急 リニア中央新幹線」。

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●岐阜県瑞浪市、非常口の残土運搬が始まった。

 いつもは、自分自身の記録を書き留めるこのブログですが、今回は、岐阜県在住のジャーナリスト、井澤宏明さんの書いた現地レポートを紹介します。
 岐阜県の瑞浪市で非常口(資材搬入口であり営業時の避難口。この完成後に本線のトンネルを掘削する)の掘削が始まりました。それを地元がどう受け止めているかのレポートです。
 人様のレポートですので、私のコメントは入れません。
 
 ただ、最低限の事実を基本情報として共有すれば、井澤さんのレポートをより深く読み取ることができます。以下、ご参照ください。
 
★基本事項
 岐阜県の東濃地区は日本最大級のウラン鉱床地帯で、JR東海は、リニアのルートは、この一帯の地下にある数々のウラン鉱床を避けていると説明する。
だが2016年2月の市民団体の調査では、リニアルートの真上での放射線の測定値こそ、近くにあるウラン鉱床地帯よりも高い値が出た。
 心配されるのは、そのトンネル工事でウラン残土が出てきた場合だ。ところが問題は、仮置き場はあるにせよ、ウラン残土をどこで恒久処分するかがまだ決まっていないこと。
 それが決まってからの着工であるはずなのに、決まらないまま、非常口の掘削が始まった。その掘削で発生する約130万立米の残土のうち約100万立米を近くの耕作放棄地で処分(積む?)する予定だ。そこに残土を運ぶための空中ベルトコンベヤーが完成した。


● 以下、井澤さんのレポートです。
 また、最近l、愛知県の市民団体「春日井リニアを問う会」の代表、川本正彦さんがここを訪れた時の写真を何枚か送ってくれました。その写真も随所に配置します。


ーーここからーー

●掘削前夜、変わる風景

 リニア中央新幹線を巡る談合事件の捜査が東京地検特捜部により行われています。日本を代表する大手ゼネコン4社がトンネルや駅などの建設工事を受注調整して分け合ったとされるこの事件の根底にあるのは、建設の必要性をあいまいにしたまま9兆円という巨費を投じてしゃにむに突き進むリニア事業のゆがんだ姿です。沿線の住民が作る団体「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」は昨年末、「独禁法違反という犯罪性の強い工事を続行することは決して認められない。JR東海はリニアの工事をいったん中止すべきだ」という声明を出しました。が、きょうも工事は続いています。


空中に巨大コンベヤー

 岐阜県内初のリニア工事が一昨年末に始まった瑞浪市日吉町を1月末、久々に訪ねました。「そろそろ掘削工事が始まるらしい」と住民から連絡をいただいたからです。
 品川―名古屋間286キロのうち86%がトンネルのリニア。工事中はトンネルの掘削口となり、完成後は緊急時の避難口となる「非常口」が地上数キロ置きにつくられます。
 日吉町の南垣外地区にも1か所が予定されています。非常口から約400メートルの長さの斜坑を掘り、そこからリニア本線となる日吉トンネル(7.4キロ)を東西に掘り進めます。着工から1年をかけて非常口工事現場や残土置き場の整備が行われてきました。


生活道路や農地を横切り、建設された巨大コンベヤー

 低い山々に囲まれた緩やかな谷間に広がる南垣外地区。その風景はしばらく見ぬ間に一変していました。高さ約20メートル、ジェットコースターのような巨大なベルトコンベヤーが生活道路を横切り、空を切り裂くように見下ろしています。

山梨実験線の高架橋を思わせるベルトコンベアー←空中ベルトコンベヤー(川本さん撮影)

 コンベヤーは非常口予定地から残土置き場まで約2キロも続き、谷全体がすっぽりと工場の内部か採石場になってしまったかのよう。人家の軒先から10メートルも離れていないところもあり、「これが動き始めたら住民は堪らないな」と重苦しい気持ちになります。

整備中の発生土処分地←整備中の発生土処分地(川本さん撮影)

 まだ掘削が始まっていないのにもかかわらず、辻々には交通誘導員が立っています。タンクローリーなどと出くわすたび、わずかに道幅が広くなった所で待たなければなりません。脱輪しそうな狭い道をバックさせられることも。
 コンベヤーは、非常口から掘り出した残土約130万立方メートルの8割強を、耕作放棄地に整備した置き場に運び上げます。JR東海によると、掘削は今年度内を目途に始め、3年間続きます。当初、残土はダンプで運ぶ計画でしたが、工事車両の通行が1日最大460台という想定に住民が強い不安を訴えた結果、コンベヤーを使うことで車両を160台まで減らすことになりました。


消えたコジュケイ

 南垣外地区では、リニア建設に伴う人家の立ち退きなどがないこともあって、工事に強く反対する声は上がってきませんでした。沿線各地で難航している残土の置き場が近くに確保出来たことも着工を早める一因となりました。自治会のメンバーは、建設中の生活への影響を少しでも減らそうと、JR東海や工事を請け負う清水建設などと話し合い、歩道設置などを実現してきました。
 それでも、穏やかだった農村の環境が変わることは避けられません。

南垣外 民家の裏にベルトコンベヤー←民家のすぐ裏を通るベルトコンベヤー(井澤さん撮影)

「(工事のない)日曜日が待ち遠しい」。非常口予定地の近くに住む女性はつぶやきます。リニア工事が始まり、車両や重機の音、樹木伐採の音などさまざまな雑音が耳に入るようになりましたが、「ノイローゼになっちゃうで、気にしないようにしてる」といいます。


人家に迫るコンベヤー。住民の暮らしは守られるのだろうか

 庭先に来ていたコジュケイのつがいが姿を見せなくなり、これまでは田んぼのあぜ道までしか出てこなかったキジが庭に現れるようになりました。工事により、すみかを追われたようです。「今年はウグイスが鳴くだろうか」。こんなことを心配しなければならなくなりました。

南垣外工事ヤード←南垣内工事ヤード。住居のすぐ近くだ。(川本さん撮影)

 目に見える変化だけではありません。掘削が始まれば、この連載でも触れたように、この地域では、ウランを掘り出す可能性があります。放射線を出し肺がんを引き起こすラドンが空中に放出される危険性と隣り合わせの工事です。
 住民の男性に掘削直前の心情を問うと、「丁寧な仕事をやってほしいだけです」と言葉を絞り出しました。

処分地の前の道路脇に石碑←処分地の前の道路に石碑(川本さん撮影)


ーーここまでーー

 コメントは書かないと書きましたが、一つだけ。
 私も2年前、まだ工事の始まっていないとき、この現場を訪れましたが、住民は間違いなく来る工事に不安を覚えていました。だが、その不安の発露は「心配」や「懸念」であり、できるだけ住民に迷惑をかけない工事を「お願い」するという、いわば、ほかの地域とほぼ同じ対応で来ているようです。
 私は反対運動をやれとは言いません。だが、「心配」や「懸念」を表明するだけでは、決して相手と「対峙」することにはならないということが分かってきました。
 井澤さんは、ウラン残土が排出する可能性がある以上、放射能問題に詳しいスペシャリストの元に住民数人を連れて行ったことがありますが、それでも、住民の方向性に大きな変化は現れませんでした。
 住民は責められない。特に集落という小さい世界に住む以上、正面から事業者と対峙するのは難しいこともあります。そこで、外の組織との交流がどれだけあるのかが、今後、リニアでもほかの大型公共事業でも課題となるところです。

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●計画路線から外れても、地下水は地下でつながっている。
 リニア計画において、どの地域でも心配されているのが「地下水の枯渇」です。
 品川・名古屋の286Kmのうち86%の246Kmでトンネルが建設されるのだから、実験線周辺の河川の枯渇が事実として残った以上、今後の工事においてその周辺住民が心配するのは当然といえましょう。

●心配する座間市

 地下水枯渇を恐れるのは、リニア計画沿線上の自治体や住民だけではありません。
 神奈川県座間市でも相当に気をもんでいる。
 座間市は、リニアが通り中間駅も建設される相模原市に隣接する自治体。
 私はその怖れを初めて耳にしたのは、2013年10月上旬に相模原市で開催されたJR東海の「準備書」説明会においてです。

 JR東海の説明に対して、会場で手を挙げた座間市の住民が「相模原市と隣接する座間市はその水供給の85%が地下水です。リニア工事において、座間市の地下水位が下がったり枯渇する可能性はないのか」とJR東海に質問したのです。
 これに対して、JR東海は「影響は小さいと予測します」「事後調査もやります」といった回答をしていたと記憶しております。

 以下、座間市とJR東海とのやりとりを整理しました。

★2014年5月22日  平成26年度第1回「地下水採取審査委員会」会議
 地下水への影響を市も問題視しJR東海が「環境影響評価書」を発表した2014年4月の翌月の5月22日には、有識者からなる「平成26年度第1回地下水採取審査委員会会議」を実施しました。
 そこで話し合われたことは
評価書は情報が依然として不十分
▼評価書には、相模原地区での地下水データが4地点しか示されていない。座間市の涵養域では、相模原台地を横断する6Kmの区間について、少なくとも300~500mごとののデータが必要。
▼砂礫層の透水係数は通常、毎秒10の-3乗~10の-4乗メートルなのに、評価書では10の-5乗メートルと桁が違うのは疑問。
工事中に地下水位の変動が生じるのに、評価書では、構造物の完成後の落ち着いた状態での地下水位を示している。これでは地下水流動阻害についての情報は不十分。
▼相模原市での中間駅は「深層に建設すべき」。そうすれば、トンネルは相模原市と座間市の主帯水層である相模層群を通過しない。

★6月9日  「委員会」から遠藤三紀夫市長への建議。
 この会議により、6月9日、委員会は上記問題点をクリアするために、「座間市での水解析、工事中の地下水流の計算、そしてトンネルの深層での建設など」をJR東海に要望するよう遠藤市長に建議します。

★6月18日  市長からJR東海・柘植康英社長への質問
 この建議を受け、市長はその内容を文書でJR東海に伝えたうえで「貴社の見解を伺います」との質問を投げています。
 そして、そこには一筆「7月18日までに文書にて御回答くださいますようお願いいたします」と記しています。

●文書での回答はいたしておりません

 これに対して、JR東海は以下のように回答したのです。

★7月18日  JR東海・中央新幹線推進本部・中央新幹線建設部・環境保全統括部の内田吉彦部長から市長への回答
 これまでも環境影響評価の内容についてご質問いただいた際には、面談や電話にて説明させていただいており、文書での回答はいたしておりません。今回の内容についてのご担当の窓口に面談の上説明をさせていただきたいと考えております。
(といった内容については文書で回答している)

★同日  口頭での説明
  実際、同じ7月18日、神奈川県のJR東海環境保全事務所の社員が来庁し、口頭回答。市は聞き取った内容を書面に起こします。ごく簡単にまとめれば

▼地下水の解析範囲の南端(座間市に近い側)では、構造物(駅やトンネル)を建設してもしなくても、その地下水位の差はほぼゼロ。したがって、以南を解析する必要はない。
▼深層地下水の帯水層は傾斜があるので、地下水はトンネルの周囲を回り込むため、地下水位への影響は小さい
▼適切な工法で十分に遮水するので、トンネルが深くなる方向に地下水が流出する可能性はない
▼漏水の可能性は低い以上、モニタリングは必要ない

 といった内容です。

 この回答に対して、市長は、「回答には理解いたしかねる部分がある」として「回答の疑問点について」と題した文書を、再度、JR東海・柘植社長に提出。

★7月29日  遠藤市長から柘植社長への照会
 当市といたしましては、今回は座間市地下水採取審査委員会委員長からの建議を受け、座間市長から貴社の代表取締役社長宛に文書で紹介したもので同様に取り扱われるべきものと考えておりますが、貴社の考えを改めて伺います。文書回答できない理由が他にもあればご説明願います。

★8月8日  内田部長から市長への回答
 環境影響評価に必要な内容は評価書に記載してあるものと考えており、改めて文書での回答をすることはいたしておりません 今回のご質問内容についても、貴市ご担当の窓口に面談のうえ説明させていただきました。


 そして、JR東海のこれら回答を受け、8月21日に第2回「地下水採取審査委員会」会議が開催されるのですが、そこでは、JR東海の回答を「到底満足できるものではない」として、各委員から多くの疑問や意見が提示されました。いくつか列挙します。

▼環境影響評価に示されている透水係数はばらつきが大きく、上総層群に至っては最大値と最小値で6桁も異なっている。ばらつきが大きい場合、リスク管理の観点から最大値を用いて計算する(中略)必要があり、単純に平均値を用いるのは環境影響評価として問題。
▼解析範囲の南端付近では地下水位差がほぼゼロであるとのことだが、解析範囲の南端の境界条件を既知水頭境界として設定しているのだからそのような結果になるのは当たり前であり、説明になっていない。
▼JR武蔵野線、京都市営地下鉄東西線の事例など、工事中に地下水流動阻害の影響が最も大きくなるという知見が数多くあるにもかかわらず、「影響が大きい工事完了後」という説明は受け入れられない。
▼遮水可能な工法を採用したとしても、全く地下水が漏出しないとは考えにくい。漏出は想定範囲であり、対応を考えておくべき。漏水が起こらないのが前提ならば、過去の事例を示すべき。

 委員会は、10月3日、この内容をJR東海に問い質すべきだ遠藤市長に建議。そして10月15日に遠藤市長がまたも柘植社長に「貴社の説明内容に係る意見・要望について」との文書を提出。
 これに対するJR東海の回答はA4用紙で2枚。

★12月26日  内田部長から遠藤市長に回答

 内容は、簡単に書けば「地下水への影響は、計画路線から10Kmも離れた座間市への影響はないものと考えております」といったもの。

★2015年1月30日  第3回「地下水採取審査委員会」会議
これに対して、「地下水採取審査委員会」会議は「納得できるものではない」が、「(3か月前の2014年10月に国が事業認可をして)建設の段階に入った以上は十分なモニタリングを行ってもらう」との方向性で一致。
▼モニタリングの地点、井戸構造、測定方法等の情報を提供してもらいつつ、最低月に1回以上はその結果を提供してもらう。
▼有識者、JR東海、座間市などで構成する「地下水対策検討委員会」の設立をJR東海に要望する。

 この2点について建議を受けた遠藤市長は、2月26日、その内容を「要望」として柘植社長に文書を送付。

★3月18日  内田部長から遠藤市長への回答
 「地下水への影響は、計画路線から10Kmも離れた座間市への影響はないものと考えております」
 「非常口およびリニア地下駅付近でモニタリングを実施することで、座間市域への影響も把握できる」
 「モニタリングの調査地点、測定方法、頻度などは学識経験者の意見を受けて検討し、着工前に座間市に報告する。モニタリング結果は公表する」

★5月8日  平成27年度第1回「地下水採取審査委員会」会議
 これについて、委員会は
▼モニタリング内容の決定前に座間市が意見を述べる機会が必要だ。
▼JR東海は、着工前の詳細な調査データを提示し、当委員会が同席の上で説明会を開催すべき
▼モニタリング結果はリアルタイムで公表すべき。
▼座間市が行っている地下水モニタリングデータもJR東海に提供する。

 等々を話し合い、またも、6月2日、遠藤市長が柘植社長に「要望」として文書を提出します。
 しかし、6月22日に内田部長から遠藤市長に送付された回答は、3月18日に回答とほぼまったく同じもの。
 これに対して、当然、委員会からは不満の声が出されるわけです。

★7月24日  平成27年度第2回「地下水採取審査委員会」会議
 ▼これ以上新たなシミュレーションの実施を求めても応答がない。
 ▼必要なのは、モニタリングで異常があった場合の対策を即時的に示してもらうことだ。
 ▼JR東海は座間市に説明するというが、この時に当委員会の同席もされるべきだ。

 この建議を受けた遠藤市長がまたまた柘植社長に要望を送りますが、

★9月17日  内田部長から遠藤市長への回答
 この回答はA4用紙のわずか半分。

「モニタリングの内容については、事業者の責任において学識経験者等に意見を求めて策定します。これら内容は、事前に貴市担当部局に丁寧に説明いたします」

★11月12日  平成27年度第3回「地下水採取審査委員会」会議
 この回答に、委員はほとほと疲れたのでしょうか、以下の発言をしております。

▼「回答はほとんど前回と同じ。これ以上は何を言っても同じ文書が返ってくると思われる。重要なのはJR東海の説明に当委員会が同席して、しっかり意見を言うことである」


 で、この後、同委員会は平成28年度に一度(2017年1月30日)と平成29年度に一度(2018年2月5日)だけ開催されておりますが、ここでは、もうリニア関連の話は出てきません。座間市での地下水総合調査のコンサルに「パシフィックコンサルタンツ社」(リニア計画での神奈川県の環境アセスを請け負った会社)を決めたとの話くらいで、わずかに、2月5日にこんなやりとりがあるだけです。

委員長「リニアの関係で何か進展がありましたか?」
事務局「特にありません
。地下水に関する調査結果等については、結果がまとまり次第、JR東海から座間市に情報提供をいただけるということで調整しています」


●●私からの質問

 結局、何を質問しても同じ回答を受け取っていた市はこの状況をどう見たのか。
 私は昨年のある時期、座間市環境経済部環境政策課環境保全係に質問をしたことがあります。
 できれば、対面取材を望みましたが、議会開催時期と重なっていたので、先方の要望で文書でのやりとりとなりました。ただし、最初に電話で問い合わせたときは、担当職員は「あの対応には誠実さを感じません」と相当な不満を漏らしておりました。
 以下、判りやすいように、一問一答形式に書き表します。

質問1 貴市は、何度もJR東海に対して「モニ夕リンダ計画について当市担当部局に説朋される際には、当市担当部局朧員に加えて、座間市地下水採取審査委員会委員の同席を要望します」と要請していますが、JR東海は一度もそれに応える回答を寄せておりません。
 貴係が最後にその要望をあげたのは2015年8月17日ですが、それ以降、JR東海は何かしらの回答を寄こしたのでしょうか。
 また、文書だけではなく、電話や直接対面などでの交渉の席でどういう回答をしているのでしょうか?
回答1 その1か月後の2015年9月17日付で、「中央新幹線(品川・名古屋間)建設に係る地下水モニタリングについて(回答)」との回答文書がありました。
これ以後に電話や直接対面による交渉はありません。

質問2 JR東海に要請した「地下水対策検討委員会」設立は実現したのでしょうか?
回答2 地下水対策検討委員会の設立は実現しておりません。

質問3 JR東海は、リニア工事でも座間市の地下水水位に影響はないと結論しておりますが、この結論に貴市はどのように考えているでしょうか?
回答3 JR東海が、一連の法に従った手続き等を進めているとはいえ、座間市地下水採取審査委員会からの意見を見ても不十分さを感じております
 平成28年3月に改定した「座間市地下水保全基本計画」で地下水影響予測を行いましたが、現況と大きな差は生じませんでした。
 しかし、市民からの不安の声も多いことから、今後も監視活動を行ってまいります。

質問4 貴市として、妥協できないのは、やはり「モニタリングでの同席」ということになるのでしょうか。
回答4 モニタリング計画について、座間市地下水採取審査委員会委員の同席のうえ、説明をしていただくことが重要であると考えております。

質問5 もし、JR東海が「モニタリングの同席」を認めない場合、貴市として次に取りうる要請や手続きはどのようなものになるでしょうか?
回答5 座間市地下水採取審査委員会に検討及び助言を求めながら、市として必要な対応をしてまいります。


 おそらく、委員会や市としては、これ以上の暖簾に腕押しをするよりも、何か動きがある際に要望を出していくことになるのだと思います。

 ただ、座間市のやりとりを一読してもう少し知りたいと思うのは

▼委員会会議は公開されているが、記録を見る限り、傍聴者の人数はいつも「一人」。もちろん、こうした会議はとても地味で目立たないから、この参加の有無では計れないにしても、一般民の不安はどれほどのものなのか。
▼もし、座間市の地下水に何かしらの影響が出た場合、JR東海はどう対処するのか。
▼長野県中川村などはそうですが、文書の質問に対しては、JR東海はちゃんと文書回答している。なぜ座間市ではそれができないのか。

 といったことですが、やはり、住民の声が大きくなることが、座間市とJR東海との関係性をよくする一つの鍵なのかもしれません。
 ちょっと書きすぎました。
 本日はこのへんで。

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