取材しても、記事にできる情報は1割未満。しかし捨てた9割にも、伝えられるべきものがあります。ボツになった企画も数知れず。そんなネタを紹介します。なお、本ブログの文章と写真の無断転載はお断りします。ご利用希望者合はご一報下さい。
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樫田秀樹

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●NPO職員、明日、南スーダンの現状を語る

 南スーダンでの出来事は今や時事ネタです。南スーダンで活動する数少ない日本のNPO法人「日本国際ボランティアセンター」(JVC)の今井高樹さんは、かれこれ、10年ほどスーダンと南スーダンとに関わっていますが、その今井さんが、明日21日(火)の
衆議院予算委員会の中央公聴会に参考人として出席
し、南スーダンの状況を話すようです。午前9時から11時35分の間の予定。
 じつは私も数十年前に、JVCのソマリア担当として現地に2年滞在しておりました。その縁で、今はJVCの機関誌の編集の一部を手伝っているのですが、昨年、今井さんの現地報告記事でショックだったのが「地方では、武装勢力により、子どもたちがニワトリのように首を切られて死んでいる」との一文でした。
 必要なのは軍事介入ではなく、交渉であるはずなのに、自衛隊はいったい何をしに行くのか。
 明日はテレビ放映はあるのかな? 録画をしたいところです。


●子どもたちがニワトリのように殺されている

 その機関誌で今井さんが書き、私が編集した記事の一部だけを以下に公開します。続きを読みたい方は、是非、JVCにコンタクトしてください。

ーーここからーー

 昨年9月、緊急支援のため入ったジュバ(南スーダン首都)の状況は、予想を超えていた。
 壁一面の弾痕や略奪された商店。そんな戦闘の痕跡が残る市内で、出会った人の誰もが私に何かを訴えてきた。毎晩のように響き渡る銃声、いつ支払われるか分からない給与、年率800%のインフレで「手が届かない」食料品の価格…。
「もう、ここでは生活できない」
 誰もがそう感じるなか、とりわけ厳しい状況にあるのが避難民キャンプの人々だった。
「配布された食料なんて、とっくになくなったわ。今日の食事はこれだけ」
 母親が、野草の葉をむしって煮込んでいる。子どもは草についた種をちぎって食べていた。

南スーダン、野生の豆を食べる子ども←野生の豆を食べる子ども。写真撮影:今井高樹さん。

 ジュバ市内からナイル川を渡った対岸のグンボ地区。避難民キャンプでは、7月の戦闘で郊外の自宅を追われた281世帯が生活していた。食料が配布されたのは最初の1ヶ月だけ。配布の中心を担うはずの国連ですら、戦闘の最中に食料庫を略奪され、物資の欠乏に直面していたのだ。
 当初は生活用品を支援する予定だったが、急きょ半月分の食料支援に切り替えた。
 配布の当日、安堵の表情を浮かべる避難民のなかから、こんな声が聞こえてきた。
「キャンプでの暮らしは大変だけど、ジュバにいる私たちはまだマシだわ」
 どういうことか、一瞬、意味が飲み込めなかった。
「私の故郷では、子どもたちがニワトリのように首を切られ、殺されているの」
 彼女の故郷は、ウガンダ国境に近い中央エアトリア州の村。7月以降、州内に戦争が拡散し、軍や民兵集団による村々の焼き討ち、住民の殺りく、レイプが繰り返されていたのだ。
 そうした村々からの避難民が、ここジュバにも来ているという情報を耳にした。郊外へ数キロ、ナイル河畔の教会を訪れると、ロボノク郡(ジュバの南80キロ)から逃れてきた4人の母親と子どもたちが敷地の片隅に身を寄せていた。
「ある日、知らない男たち村にやってきて、突然、銃を撃ち始めたんです。目の前で子どもたちが倒れて…
 赤ん坊を抱えた母親が、惨劇の一部を話してくれた。死体は家に投げ込まれ、次々に火が放たれたという。畑仕事に出ていた夫たちの行方は分からない。
 歩き続けてここにたどり着いてから1ヶ月、教会からの差し入れ以外には食料がない。蚊帳が足りず子どもはマラリアに罹患していた。身体を洗う石鹸もない。
 すぐに支援を届けた。1ヶ月分の食料のほか、蚊帳や石鹸、そして衣料品。服を手にすると、子どもたちは大急ぎで着替え始めた。母親たちは赤ん坊に着せてから、自分の服を選んでいる。着替え終わって、はじめて皆が笑顔を見せた。

南スーダン、服の配布に喜ぶ←服の配布に喜ぶ人たち。この服を着て教会のお祈りに出かけたという。写真撮影:今井高樹さん。

ーーここまでーー

 マスコミは、昨年、稲田防衛大臣がジュバを視察したときに同行取材しているのですが、せっかくジュバに行ったのなら、避難民への取材をすべきでした。
 戦争の犠牲者がまさしくそこにいたのです。
 でも、マスコミに頼れない以上は、現場を見た数少ないNPO職員などの情報を、私たち市民がインターネットという道具で拡散するしかありませんね。

←「積極的平和主義は紛争地になにをもたらすか?!」(合同出版) JVCのメンバーたちが、紛争地での経験を深く語る本。「丸腰だからこそ、安全が保たれた」との自信には学ぶべきものがある。今井さんも、スーダンでの紛争に巻き込まれた時も、なぜ無事に生還できたのかを詳細に書いている。必見。

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2017/02/20 16:38 戦争 TB(0) コメント(0)
知らなかった。福島で始まっていた福島の人たちのための「水」の活動

 1月中旬に息子がインフルエンザに罹患。タミフル服用のため、医者からの「異常行動の可能性が否定できないので、絶対に目を離さないで」との指示に従い、1週間、息子の近くに。でも、それ以来、私自身の体調が悪化。熱はないけれど、今も体が日中だるく、集中力が持続できません。そういうことで、ブログを書く余裕もありませんでした。

 さてーー。
1月21日。ある企業(パン製造業)の取材で福島県郡山市に行きました。
 といっても、その企業は本拠地は栃木県。月に一度実施している「被災地」での応援活動で郡山市に赴いたのです。会社からもちこんだ小麦粉やフライヤー、テントなどを設置して、揚げたてのパンやドーナツを被災者に配布するという活動ですが、その活動のための軒先を貸してくれたのが、特定NPO法人「FUKUSHIMAいのちの水」でした。

 初めは揚げたてのパンやドーナツの配布などを取材していたのですが、「いのちの水」の施設(サンタハウスと呼ばれる)のなかでは、大きなポリ袋(50リットルくらい)に500円で詰め放題のフリーマーケットも行われていたり、外の倉庫では、次々と地元の住民の車がやってきては、段ボール数箱の水ペットボトル、お菓子やレトルトカレーなどを受け取っていました。

次々と配布をする

さすがに気になり、外の倉庫をのぞかせてもらうと、毎月火曜日と土曜日に地元民に配布を行っているそうです。
 この日の配布物質は以下の通りです。

配布物資←下の©KASHIDA HIDEKIに隠れているのは「しょうゆ」です。

 主役は圧倒的に水。地元のお母さんたちは家族のための「安全な水」を求めてここにやってきます。

 「いのちの水」の活動をごく簡単に紹介すると、以下の経緯をたどっています。

★2011年3月11日の東北大震災の3日後の14日、東京の「災害支援援助隊アガペーCGN」の福島県支部として、支援活動を開始。衣類、食品、水などを、仙台、いわき、南相馬、飯館、福島、郡山へ配布していた。
★2011年5月に入ると、福島県と他県との災害の質の違いに気付き、独自に、放射能災害に焦点を絞っての支援を開始。生活に欠かすことのできない「水」だけに集中する。つまりミネラルウォーターの配布が始まる。ここに「FUKUSHIMAいのちの水」が設立された。
★当初は、行政に寄付する形を考えたが、そもそも行政は水道水の安全宣言をしているため、それを否定するようなミネラルウォーターを受け取ることが難しく、さらに行政が配れば、かえって社会不安を増す可能性が考えられたことで、自分たちのボランテア行為として、幼稚園、保育園に大量の配布を行う。
★母親達の反響は予想以上に大きく、今も継続した配給を求められている。

「任意の寄付」(おおむね月500円)をした住民に配布する物資はいずれも企業からの寄付。賞味期限や消費期限が切れる前の商品が大量に倉庫には保管されています。企業にすれば、消費期限が来ると、処理費を払って産廃にするよりは、こういった活動に関わることで、その処理費を払うこともなく、かつ、企業としてのCSR(企業の社会的責任)もまっとうできるだけに、「いのちの水」とはWIN-WINの関係が成立するわけです。

いのちの水の倉庫

 「いのちの水」で配布業務を担うのは全員がボランティア。
 代表の坪井永人さんから簡単な説明を受けましたが、留意すべきお言葉をいただきました。

坪井代表←坪井代表。「私はサンタになる!」と決め、一年中、配布時にはこの格好で活動を展開している。

「福島ではほとんどすべてのボランティア団体が3年で引き揚げた。これは福島に限った話ではなく、NPOは、住民に自主性をもたせるのにかかる3年をめどに引き上げる。しかし、福島では放射能という解決に何十年かかるか分からない問題に直面している。国は県民の健康検査をするが『治療はしない』。つまり、福島では『被災者』という名前はずっと残るのです。私たちは、それを逆手に取りました。『被災者支援だから』との名目をたてることでこの活動を維持しているのです。隣の茨城や栃木ではその名目を立てられないから、同じような行動はできないでしょうね。
 福島県内では他県に移住せずに残って生活している家族も多い。今、そういった家族では、お母さんたちは放射能問題を口に出せません。言ってしまったら、離婚やコミュニティからはじき出されることでしょう。今、福島のお母さんと子どもたちは歴史的な不条理に取り残されているのです。子どもの健康を心配に思いながらも、お母さんたちはその心配を口にすることすら許されず、疲れてしまったのです」

 しかし、

「せめて、私たちは寄り添おう。この人たちを見捨てなかったという歴史を作っていこう。と決めました。いつの日か、今の子どもたちが『私たちの父母は私たちを決して見捨てなかった』と言ってくれるだけの歴史を作る。それが私たちの仕事です」

 この思いから2年ほど前、坪井さんは「私はサンタになる!」と決め、永続的にこの無償配布活動を続ける予定。

 あくまでもパン配布の取材のかたわらでの立ち聞き程度の情報収集だったので、あまり詳しいことは書けませんが、恥ずかしながら、私は「いのちの水」の存在を知りませんでした。
 しかし、いずれは、ゆっくりと取材をしたい。そう思わせてくれるだけの質の高い活動を展開していたNPOでした。

●母親たちの声

「いのちの水」のHPに掲載されている福島のお母さんたちの声を一部紹介します。

★いつもお世話になりありがとうございます。
震災後、不安だけしかない日々に光が差したように”いのちの水”さんのことを知りました。
今はお水や食物、場所など心配事を口にする気にしている人はほとんどいなく、違う不安で過ごすこともあります。
仲間を求めていくことや、自分の気持ちに正直に生きていきたいと思うことが増えました。
いのちの水さんの場所は私にとってオアシスです。いつも感謝しています。
(13歳、11歳、4歳の母)

★白河からはじめて来ました。
震災後ずぅーっとお水を買い続け、食品にも気をくばり、買うこともだんだんままならず思い切って以前からFBで見ていたいのちの水さんにtelで詳細を聞きまして、県南のものでも利用できると知り感動してしまいました。本当に助かりました。
これで、また安全なお水で過ごせます。頼ってしまい申し訳ありませんが心からお礼申し上げます。
(7歳、4歳の母)


●驚きの放射線値

 坪井さんが「ちょっと来て」と施設の近くのある場所へ。そこで放射線測定器をかざすと、おー、今もそうなのかとの驚きの値が。
 ここでその数値を書くのは、諸事情で控えますが、いわゆる自然界での値とはケタが2つ違うとだけ書いておきます。
 知っている人は知っている。
 しかし、その不安を口に出せないという現地ゆえの理不尽さ。そこで育つ子どもたち。
 だからこそ、せめて「水」を。
 「いのちの水」を応援します。

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2017/02/06 08:29 福島原発 TB(0) コメント(1)
●まさかの無担保だったJR東海への3兆円融資

 昨年(2016年)10月と11月、衆議院と参議院の国土交通委員会で、独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」にJR東海への融資機能をもたせるための法改正についての審議が行われ、それぞれ即日に可決。果たして、「機構法」は改正され、早くもその11月に5000億円、この1月に5000億円、3月に5000億円と計1兆5000億円が融資されます。

 私にはどうしても知りたいことがありました。
 それは、同機構は政府系特殊法人である財投機関の一つです。
 財投機関とは、すなわち、財政投融資での融資の対象となる組織のことです。
 つまり、財投機関である限りは、財務省が「財投債」の発行で集めた資金を受けて事業に活かし、事業の利益から利子をつけて、財務省経由で、財投債を購入した銀行などに返済がなされるのです。
 
 財政投融資について整理したブログはこちらをご覧ください。

 私が判らなかったのは、財投機関にはもともと「日本政策投資銀行」という政府系金融機関があります。
 財投債で得た資金を、財務省が同銀行に回し、同銀行は、日本のなかで必要な事業に融資をするわけです。当初、新聞報道で財投機関を通じてJR東海に融資をする・・・といった記事を見たとき、私はてっきり、同銀行がJR東海に融資をするのかなと思いました。

 しかし、同銀行の前身の「日本開発銀行」に勤務していた橋山禮治郎氏(「必要か、リニア新幹線」などの著者)によると、同銀行は民間銀行との協調融資が原則。つまり、民間銀行が首を縦に振らねば同銀行も融資できない。そして、金融機関ならば当然ですが、担保を必要とする。おそらくJR東海には東海道新幹線を除いては、合計で3兆円に相当する担保物件はない。しかも、同銀行はかつて兆単位の融資をしたことはない。だから、同銀行からはどうしてもJR東海には融資はできないでしょう…ということでした。

 では、今回、融資機能をもつことになった同機構はいかなる担保で融資に踏み切ったのか。

 私はこれを、参議院の国土交通委員会委員である山添拓議員(共産党)に尋ねてみました。
 すると、1月13日に山添議員が国土交通省に確認したところ、「無担保で貸している」とのことでした。
 国交省は「JR東海からの償還が怪しくなった際に担保を検討する」との見解を示したようで、つまり、施設などを抑えるとの腹積もりを見せてはいますが、山添議員は「通常ではありえない」と驚いています。

 なお、お金を貸す以上は当然審査を経なければなりませんが、機構の内部審査なので守秘義務があるため非公開となるようです。

 3兆円もの巨額に「担保なし」と「30年据置」。なぜこれほどの好条件で超巨額の融資が可能なのか。
 また財政投融資の場合は当然ですが、利子は安い。年利0.6%です。
 何かの力が動いているとしか思えません。

●推測は書くべきではないが

  一昨年から今年にかけて、JR東海は各地で工事契約を交わしていますが、本格着工にはまだ程遠い状態です。
 先日もJR東海の柘植社長が「2027年開業は厳しい」と発言しましたが、では、なぜ今「機構」から3兆円もの融資を受けるのか?
 以下、以前、ネット記事で見たり、鉄道に詳しいジャーナリストから教えられて整理した情報です。

 ★一つには、東京・名古屋に必要な5.5兆円もの金を工面できないこと。
 5.5兆円のうち、2.5兆円は東海道新幹線からの収益を充てることができるかもしれないとはいえ、それでも3兆円足りない。しかし、その3兆円を借りようにも、担保物件が3兆円もないJR東海に金融機関は融資をしようとしなかったのでは。借りたとしても、金利も3%台。
  また、海外の投資家は、数年前にJR東海の社長が「リニアはペイしない」と発言したことと、自己資金だけでは、いずれ5.5兆円以上のカネが必要になる東京・名古屋の建設は無理なのではとの読みからやはり投資に動いていなかった。

 ★一つには、財投機関でも融資は難しかった。
  これは前述のように、日本政策投資銀行のことです。

  そして、どうしてもわからないのは、本格着工なされていないのになぜ今、巨額の融資が必要なのか、ということです。

 本ブログでも伝えていますが、リニア工事で発生する約5700万立米もの建設残土の8割前後の処分先は未定です。
 つまり、トンネルを掘れないということです。
 また、処分先が決まったとしても、そこに至る道路の拡幅や重量制限をクリアできるよう補強工事が必要で、それにも何年もかかる。
 
 なぜ、これほど急いでの3兆円の融資が必要なのか。
 わからない。だが、一つの推測として、各地で工事契約することで「どんどん着工している。もう後戻りできない」との「既成事実」を見せることはできる。これが3兆円を引っ張っる材料になったのではとの説もあります。

 それにしても、この3兆円だけで足りるのか? 足りない場合は財投債を追加するのでしょうか?
 
増補悪夢の超特急
←拙著「悪夢の超特急 リニア中央新幹線」。

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新年早々、訃報です。

 山梨県富士川町小林地区の有泉實さんが12月31日にお亡くなりになりました。享年84。

 小林地区は、リニアが地上走行することで数十件の家屋や農地が立ち退き対象となる土地です。

 しかし、一昨年、JR東海が、事前説明もないままに「中心線測量をさせてほしい」と小林地区に回覧を回したことで、不安に思った住民はその日のうちに自治会館に集まり話し合いをもちました。そこで決まったのは

「戸別交渉をされると補償金をちらつかされ個別撃破されてしまう。だから戸別交渉は拒否して、誰か一人を窓口にして、自治体やJR東海との窓口にしよう」

 ということでした。
 その窓口に決まったのが有泉さんです。

有泉實さん


 以後、町長を伴わない限りはいかなる話し合いにも応じないと主張する有泉さんの姿勢に、JR東海も手続きを進めないでいました。
 有泉さんご自身の家屋も、母屋の一部、そして駐車場と農作業小屋のすべてがリニアのために立ち退き対象とされるため、「慣れ親しんだ自宅を手放し、地域の人たちがバラバラになっていいことがあるのか。ワシはここを動きません」と、一貫してリニア反対の立場を貫いてこられました。

 一昨年に取材したときのことはこちらに書いています。

 私が有泉さんに初めてお会いしたのは2015年5月。
 再会したのは昨年8月です。そのときの有泉さんは、1年前と比べやややつれた印象を受けました。体の動きも重い。
 尋ねてみると、確かに体調が悪いらしく「二日に一度は点滴に行っています」とのことでした。

 それでも、有泉さんが頑張っていることで、JR東海も自治体も土地買収の話を自治会に持ち込めないでいました。

 有泉さんの周囲にいる人たちは当然、その体調を心配していました。
 リニアに関わる市民運動の住民が12月上旬に有泉さん宅を訪ねたとき、その体調の悪さから面会ができなかったようです。

 今後、誰が有泉さんに代わっての窓口になるのかはわかりませんが、まずは、体の弱さがあっても、自らの意志を曲げることのなかった故人に敬意を表すると同時に、そのご冥福をお祈りいたします。

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 ちょっと遅れての報告です。
 11月下旬。神奈川県相模原市緑区で3人の住民に会いました。それぞれが、リニアの地下通過でいろいろと思い悩んでおります。

●一人目。Yさん。「水がなくなる」

 Yさんは、シイタケ栽培農家。
 福島第一原発の爆発事故で、特に大きな農業被害を被った一つがシイタケ栽培農家です。放射性物質が蓄積しやすく、東日本のシイタケは売り上げが激減しています。Yさんのシイタケも例外ではありません。
 とはいえ、Yさんは、シイタケをビニールハウスで育てている。つまり、放射性物質が降りかかることはないのに(実際、測定をしても高い放射線は検出されない)、風評とは怖いもので、売り上げが激減しているようです。4人いたパートタイマーさんにも辞めてもらい、栽培規模も5分の1にまで縮小しています。今はお得意様を相手にビニールハウス前の直売場などで売る、固定客に宅配するなどでしのいでいますが、いったい、いつ以前のように売れるようになるのかまったくわからない状態です。

DSC04358_size.jpg


 こういう「泣きっ面」の状態にやってきた「蜂」がリニア計画です。
 Yさんのビニールハウスの真ん前の市道には、JR東海が実施した中心線測量の赤いビョウが打たれています。つまり、ビニールハウスの真下をリニアが通過するということです。
 ここで、なぜ地下走行のリニアが「蜂」かというと、Yさんは、シイタケ栽培に大量の水を散布するのですが、それがすべて地下水で賄っているため、もしリニアが地下を通ると、その地下水が枯れる可能性があるからです。

DSC04364_size.jpg←手前にある赤いビョウが中心線測量で打ったもの。奥の白い箱のようなものが地下水ポンプ装置。リニアはまさに真下を通る。

 暑い夏には最大で一日10トンの地下水を使い、冬でも3トンは使うシイタケ栽培。その地下水がなくなるのは、すなわち廃業を意味しますが、JR東海からは、もし水が枯れた場合の対処についての具体的な話はまだないようです。

 Yさんは、リニアに賛成するとか反対するとかの立場にはありません。もっといえば、水さえ確保してくれるなら、地下走行するリニアに反対する理由はありません。
 
 ただし、これまでの一連の経過にYさんには強い不満があります。それは、いったい誰が自分の将来についての窓口なのかがまったくわからないことです。

「これはJR東海の事業ですね。では彼らが対応してくれるのかと思ったら、機構(鉄道建設・運輸施設整備支援機構)の人から挨拶の連絡があり、では機構の人が来るのかと思たら、やってきたのは地質調査の会社の人やボーリング会社の人で説明もなく測量やボーリングが始まるのです」

 一昨年の豪雪でYさんのもつビニールハウスの一つは潰れました。当然立て直しを考えるわけですが、そのタイミングでリニア計画の話がやってきたので、もし新設しても水が出なかったら、新設の意味もなくなるので、Yさんは踏み切れないでいます」

 この点でJR東海に質問をすると、JR東海は「工事には7,8年かかります」と答えただけで、地下水が枯れるかどうかには言及しませんでした。ただし「水は確保します」とだけは回答したようです。
 しかし、Yさんが求めるのは地下水。なぜなら上水道なら塩素を含むため、シイタケ栽培には不適切なのです。もし上水道を使うなら塩素除去装置が必要とのことですが、それへの回答もありません。また、仮に塩素除去装置を使ったとしても、上水道は地下水の2倍は代金がかかります。その補てんもなされるのか。

 いずれにせよ、Yさんは「ほかの土地に行くつもりはサラサラない」と言うように、この土地でシイタケを作り続けるしかありません。
 一つには、ここが愛着のある土地であること。
 一つには、かつて坪20万円はした地価が、原発事故後、ほぼ0円になり、売るに売れないこと。だから、他のシイタケ農家のように「放射線が検出されればよかった。そうすれば補償金がもらえたのに」とぼやくのもわかります…。


●二人目。Aさん。引っ越して来たら、そこは地下をリニアが走る場所

 同じ緑区に住むAさんは、今年5月、分譲の一軒家を購入。
 ところが、引っ越してきて初めて知ったのは、その地下20メートルをリニアが走り、自分たちの駐車場とリビングルーム半分が補償対象になるということでした。
 これはなんだ! 分譲を仲介した不動産業者は一言もそんな説明をしていなかったのです。

 また、平日に働いているAさんは説明を聞こうにもJR東海の事務所に行けないため、説明を求め、JR東海に電話。

「すると、電話に出たTという職員の態度がよくないので、言いました。『ウチに来て説明して』と。考えてみれば、私たちがわざわざ出向くことじゃない。来てくれるのが筋です」

Aさん宅←リニアルート上にあるAさん宅。駐車場はすべて、リビングの半分ほども補償対象となる。

 そして10月29日、JR東海の職員3人が自宅に来て説明をしてくれました。Aさんがそのときに撮影していたビデオ動画を見せてくれたのですが、この時、JR東海とガシガシ対応に当たったのはAさんの妻です。

 地下40メートル以深なら、事業者には地上の地主との交渉や保証も不要になる「大深度」開発が可能になりますが、地下20メートルであれば、地主との交渉も補償も必要となるため、Aさんご夫妻の依頼を無下にできなかったのかもしれません。、

 まず、JR東海がどういう説明をしたかというと、大雑把には以下のようになっています。

★家屋調査
 工事前に調査をして、工事後にひび割れや傾きなどが確認されれば、補償の対応とする。
★水枯れ
 地下の水枯れは起こらないと考えております。そういう工法でやります。リニア中間駅(JR橋本駅の隣に予定)でも地下水には10センチの変動が出るだけと予想しています。
★自然破壊
 極力ないようにいたします。
★地価の下落
 地下は社会的情勢で変わります。少なくとも弊社では(因果関係があれば)補償金は払います。

 そしてご夫妻はJR東海と以下の会話に入ります。

A「私たちがここを移転したくないと言えばどうするのですか?」
JR東海「まずはご理解が第一と考えております。来年中には測量説明の機会を設けます」
A「土曜、日曜、祝日も工事事務所は空けておくべき。平日の昼間はみな働いているので、事務所に行けないのです」
JR「貴重なご意見として社内に持ち帰る。(中略)まずは事業を進めるため、測量をさせていただきたい」
A「ということは、測量をさせなければ、計画は中止になるということですね。そうかあ、測量させなければいいんだ」
JR「…」
A「リニア計画で私たちに具体的なメリットってあるんでしょうか?」
JR「…」
A「デメリットしかないんじゃないですか? それで理解はできません。あなたが逆の立場なら嫌ですよね?」

 この会話のほとんどはAさんの妻によるもので、その発言には白黒はっきりさせようとの強い意志が見えます。

 とはいえ、今、Aさんご夫妻が困っているのが、不動産の瑕疵の保証期間は不動産購入後から1年間であることです。
 つまり、引っ越すなら来年の5月がタイムリミット。
 とはいえ、そもそも、地下をリニアが通ることを不動産業者が説明しなかったことが、不動産の売買で必要な「重要事項説明」を怠ったかと問えるかです。これも、はっきりさせたいところで、リニア裁判の弁護団の一人、和泉弁護士も「今後、3,4人の弁護士でチームを作って、宅建業法や民法上の瑕疵担保責任を調べてみたい」とのことでした。

juuyo-setumei001.jpg←同じ相模原市のある不動産業者の広告に載っていた販売物件の図。地下をリニア走行することが説明されている。
 
●三人目。Oさん。測量はさせません。 

 Aさんのご近所に住んでいるOさんはもうここに20年も住んでいる人です。
 Oさんは2年前、JR東海が開催した事業説明会に参加したところ、その内容がほとんど理解できず、質問に対しても具体的な回答がないことに、未だにリニア計画を認めることができません。
 Oさんの場合も、リニアはまさしく自宅の真下を走ります。
 Oさんの主張は「測量させません。まだ、騒音、振動、電磁波など具体的な予想や対策を何も説明されていないのに、この計画を受け入れるわけにはいきません。そして、私が今さらよそで暮らす理由はどこにもありませんから」


●連絡会のアンケート

 「リニア新幹線を考える相模原連絡会」は数カ月前にリニアが通る地域にアンケート用紙を配布し、JR東海の対応についての質問を投げています。

相模原連絡会アンケート1 相模原連絡会アンケート2



 このアンケート結果は、現在、連絡会で整理中なので、ここで書くことはありませんが、あるマンションではマンションとしてJR東海を呼んで説明をしてほしいとの要望を出していること。実現していないようですが、マンション全体の問題としてとらえているのであれば、注視したいところです。

 JR東海は、昨年から今年にかけて、あちこちでリニア事業の起工式はしていますが、まだまだ本格着工には時間がかかるような気がします。 

←拙著「悪夢の超特急 リニア中央新幹線」。

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リニア取材のカンパのお願い
 リニア中央新幹線の取材範囲は、東京都から愛知県までと広範囲で、多大な取材経費を要することから、数十組もいる会うべき人たち・組織の多くに会えないでいます。また、リニアに関する記事を書こうにも、ほとんどの雑誌はJR東海が広告主であるため、記事を掲載できず、取材するほどに資金力が落ちる状態が続いています。今後は、再び単行本の発行を目指しますが、私のリニア中央新幹線に関する取材へのご寄付をお願いできないでしょうか?  カンパをしてくださった方には ★ブログに記事を掲載する際のお知らせ。 ★雑誌に記事を載せる場合の、掲載誌送付。 ★単行本を出した際の、一冊謹呈。  など、せめてもの特典を用意いたします。  なお、いただいたカンパは以下の用途に限定します。 ★取材地までの往復交通費。 ★取材地での宿泊費。 ★リニア中央新幹線に係る資料代。  食費は自己負担としますが、使用明細は公開します。  ご協力いただける方は以下の口座への入金をお願いいたします。  みずほ銀行・虎ノ門支店・普通・1502881 カシダヒデキ  ご入金に際し、ご住所や連絡先などを教えていただけたら助かります。どうぞよろしくお願いいたします。
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必要か、リニア新幹線
リニア中央新幹線の問題点を『環境性』『技術性』『採算性』の3点から理論的、実証的に解説した一冊。リニア計画の入門書。
リニア新幹線 巨大プロジェクトの「真実」
リニア中央新幹線を巡る問題を語らせては、その理論に一部のすきも見せない橋山禮治郎氏の第2弾。このままでは,リニア計画とJR東海という会社は共倒れになることを、感情ではなく、豊富なデータを駆使して予測している。必読の書。
自爆営業
国会で問題にされても一向に改まらない郵便局の自爆営業。年賀状1万枚、かもめーる700枚、ふるさと小包便30個等々のノルマはほぼ達成不可能だから、ほとんどの職員が自腹で買い取る。昇進をちらつかせるパワハラや機能しない労組。いったい何がどうなっているのか?他業種の自腹買取も描いている。
アキモトのパンの缶詰12缶セット
スペースシャトルの宇宙食にもなった。保存期間は3年。しっとりおいしい奇跡の缶詰。24缶セットもある。
共通番号の危険な使われ方
今年10月に全国民に通知され、来年1月から運用が始まるマイナンバーという名の国民背番号制度。その危険性を日本一解かり易く解説した書。著者の一人の白石孝さんは全国での講演と国会議員へのアドバイスと飛び回っている。
マグネシウム文明論
日本にも100%自給できるエネルギー源がある。海に溶けているマグネシウムだ。海水からローテクでマグネシウムを取り出し、リチウムイオン電池の10倍ももつマグネシウム電池を使えば、スマホは一か月もつし、電気自動車も1000キロ走る。公害を起こさないリサイクルシステムも矢部氏は考えている。脱原発派は必見だ。